ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル①:「人的資本が企業業績に影響するメカニズムとは?」

 

BDTIが開催する「ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル」の第1回目のテーマは「人的資本が企業業績に影響するメカニズムとは?」です。

非財務情報のホットトピックとして人的資本があげられるが、なぜ重要なのか、企業業績にどのように影響を与えるのかをまず理解することが大事です。お話いただく日清食品ホールディングス 社外取締役の中川 有紀子氏の博士論文のテーマもD&Iや人的資本がどのように組織能力向上、企業業績向上に寄与するかのメカニズムを研究してきた実務家です。このメカニズムを知ることで、今、何をやるべきなのかが理解できるようになってきます。 ぜひご参加ください。

ファミマ事件から、特別委員会の社外取締役の役割

ファミリーマート株式公開買付にかかる株式買取価格決定申立事件
東京地裁決定2023年3月23日

この事件は、親会社である伊藤忠が子会社ファミマを完全子会社とするため、まず公開買付し、その後株式併合により少数株主をスクイーズアウトするスキームをとったところ、スクイーズアウトの株主総会議案に反対したオアシスを含む少数株主らから、ファミマに対し公正な価格での買取が要求され、協議が整わず、双方から裁判所に対し、価格決定の申立てがなされた事件である。

東京地裁の決定文は長文であるが、裁判所の判断の枠組み、一般に公正と認められる手続、公正な価格の算定を記載する3箇所に分けることができる。そして、一般に公正と認められる手続の中では、特に特別委員会が役割を果たしたか、が真っ先に取り上げられている。社外取締役が特別委員会の委員となった場合、何に注意すべきか、参考となる点を多く含むので、ここでは、この箇所に限って、キーポイントを紹介する。

東京地裁決定はファミマの特別委員会に非常に厳しく、その役割を十分に果たしたものとは評価することができない、とした。ただし、決定について双方とも抗告中であり、東京高裁において地裁とは異なる判断がなされる可能性はある。

7/20(木) 無料ウェビナー: 改めて考える実効性ある役員研修

 
〜経済産業省が語る!令和4年度委託調査の結果を踏まえた役員研修の再考〜

経済産業省は、コーポレートガバナンス改革の実質化のためには、社外取締役の質の向上が重要であると考え、そのための有効な手段の一つとして社外取締役向けの研修やトレーニングの活用に着目しました。研修やトレーニングの現状及び課題を把握し、社外取締役の研修やトレーニングの活用方法の整理やケーススタディ集の策定を行うため、令和4年度に委託調査として「社外取締役の研修やトレーニングに関する調査」を実施し、多くの企業へのインタビューや社外取締役からのアンケート回答を得て、今般その調査結果を発表しました。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は2009年の創設以来、役員研修を提供し、数多くのセミナーを開催してきました。役員研修の受講者は2,850人以上、セミナー開催は83回にのぼります。その過程でコーポレートガバナンス・コード(CGC)の導入、その後の改訂にも、縁の下から助言をしてきました。今般の委託調査においても、インタビューを受け、役員研修提供者の一つとして、経験や洞察に基づく観点や意見を提供しました。

知られざるCGC改革の歴史:2013年5月、自民党「日本経済再生本部」の「中間提言」

以下は、2013年5月25日の自民党の「日本経済再生本部」の「中間提言」からの抜粋です。「独立社外取締役の確実な導入」および「取締役の教育方針についての開示」は、現在内閣官房副長官木原誠二氏(当時、議員)と私(また、多数の方)の話に沿う内容でした。毎年の経済促進政策(2013年、アベノミクスの初年度は、「成長戦略」になった)を策定するため、通常は中間提言は内閣府に回されますので、このまま回されました。その時点で上記の二つの案も「株式持ち合いの解消」の政策も削除されました。

株主との対話を有効にするために、協同的エンゲージメントの規制緩和が必要

2021年に日本経済新聞に書いたこの記事で、#ESG や効率的な対話に拍車をかけるために、日本の「協同的エンゲージメント」に関するルールの改訂を提案いたしました。その前からもFTなどで書いていました。最近日本政府はこの件に関して動きそうだとうわわを耳にしますが、本当ならいいのですが、またまた蓋を開けると不必要な条件付き「限定的な範囲」にならなければいいなと思っています。

記事の内容の一部から引用します:

板垣 隆夫氏:「財務報告に係る内部統制監査基準等の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブコメ)に対する個人意見の提出

こちらの投稿は2023.1.20 板垣 隆夫氏によるものです。

別紙の通り、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブリック・コメント)に対する個人意見を金融庁に提出しました。
個人のかつかなり過激な意見ですので、意見集約でも全く無視されるかもしれませんが、率直な感想を述べたものです。
岡田譲治元日本監査役協会会長をはじめ内部統制部会のメンバーの半数以上はよく知っている友人・知人なので、あまり厳しい批判はやりたくなかったのですが、ここで何も言わないのはまずいと思い、かなり辛辣なコメントになってしまいました。
なお今回、監査懇話会としてはパブコメ意見の提出は見送りました。

日本における「対話」の理想と現実

私は9年間、日本の上場企業の社外取締役を務めてきたが、一度も株主から面談・対話を求められたことはなく、会社に対し、私じゃなくても株主から社外取締役と対話がしたいと求められたケースを見たことがない。先週、日本で最も有名な企業の役員に聞いたところ、そのような依頼は年に2件程度とのことでしたが、曖昧なお返事でしたので、実際にはもっと少ないのでは、と想像しています。

CGコードでは、『会社は、株主総会以外の場においても、株主との建設的な対話を行うべきである。株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役または監査役が面談に臨むことを基本とすべきである。・・・そして、株主との建設的な対話を促進するための方針には、少なくとも以下のものが含まれるべきである:i)株主との対話全般について、建設的な対話が実現するように目配りを行う経営陣または取締役の指定、、、』

などと書かれていますが、このような方針がない企業が多いのではないでしょうか。

エンゲージメントの重要性が叫ばれ、機関投資家が投資先企業とどれだけ一生懸命に対話をしているかを主張するのとは対照的に、私自身の経験や他の方からの話との違いが印象的です。私の経験はたまたまなのでしょうか?他の企業や機関投資家の経験はどうなのでしょうか?大手機関投資家を対象に実際にどれくらい社外取締役と対話しているのか、データを取った方はいますか?最後に、もし私の経験が偶然ではなく、単純な効率性の問題だとすれば、日本における協同的エンゲージメントの(開示ルールによる)負担を軽減することの重要性が浮き彫りになっているのではないでしょうか。 どうでしょうか?

 

新しい資本主義について岸田総理大臣に送った書簡(ニコラス ベネシュ)

 

 

(英語で書かれたオリジナル手紙の仮訳)

2022 年 9 月 2 日

ニコラス エドワード ベネシュ
(個人的な立場で。以下ご参照。)
東京都世田谷区
benesjp22@gmail.com
(この手紙のPDFコピーがご入用の場合は、メールでご連絡ください。)

〒100‑0014
東京都千代田区
首相官邸永田町2丁目3‑1
内閣総理大臣 岸田 文雄 様

cc:
内閣官房副長官 木原 誠二 様
自民党選挙対策委員会副委員長 柴山 昌彦 様

 

岸田様

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

日本の最高指導者として「新しい資本主義」を掲げる貴殿に敬意を表し、この国の経済、社会、金融市場にとってコーポレートガバナンスのさらなる向上が、いかにポジティブなゲームチェンジャーとなり得るかについて、具体的な考えを共有するために手紙を差し上げる失礼をお許しください。

最近、NPT(核兵器不拡散条約)会議での印象的なスピーチを拝聴し、総理の流暢な英語に感動・感心いたしました。従って、私はこの手紙のオリジナルを英語で書かせて頂いております。オバマ大統領の広島訪問を米国政府に提案した本人として、岸田様の熱意あふれるコメントに大変嬉しく思いました。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は日本の大手機関投資家に対して意見交換と協力を依頼します

7月27日に公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は、日本の大手機関投資家の役員にこちらの手紙を送りました。役員・ガバナンス研修、エンゲージメント手法のレベルアップ、データを通じて日本の取締役会を活性化するための意見交換と協力を依頼しています。BDTIへの寄付者やデータの購入元である多くの海外機関投資家との対話は充実していますが、日本の大手機関投資家との対話は非常に少ないのが現状です。私たちは、過去11年間で2,500人に役員研修を提供しました。また、当法人の理事会メンバーが長年にわたって社外取締役として学んだことの多くを日本の機関投資家に伝えることができます。何しろほとんどのファンドマネージャーは取締役会に参加したことがないので…. ちなみに昨年もこのような手紙を出しましたが、全く反応がありませんでした。今年はどのような結果になったのか、どのような企業が回答してくれたのか(もしあったとしたら)、今後お知らせします。=============================

2022年7月吉日

〇〇株式会社
代表取締役社長
〇〇 ×× 様

拝啓 貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)代表理事、ニコラス・ベネシュでございます。BDTIは2009年設立以来、日本のコーポレートガバナンス向上を目指し、役員研修や上場企業のコーポレートガバナンスの実態に関するデータの提供・分析を行っております。

本日は、取締役会の質を向上させるためにお力添えをお願いしたく、またそれは貴社の利益源泉である日本の株式市場を良くすることに繋がり、私たちが目指しているものは共通しているのではないかと考え、ご連絡申し上げました。

三ツ星事件後もポイズン・ピル法理は解明されていない

スティーブン・ギブンズ

三ツ星事件の判決後も、ポイズン・ピル法理は解明されていない多数の点

7月下旬、最高裁は、株式会社三ツ星(東証1部5820)が、中国とつながりのある投資家グループから20%以上の株式を市場でひそかに取得されたため、急遽設定した有事導入型ポイズン・ピルを無効とした大阪地裁と大阪高裁の判決を維持し、日本の不安定で移り気なポイズン・ピル法理を、ある程度解明した重要判例となっている。

昨年の東京機械製作所事件に関する一考察

三ツ星事件は、2021年11月の東京機械製作所(TKS)(東証6335)事件と多くの点で事実関係が似ている。両事件とも、中国と関係のある投資家が、事前警告型ポイズン・ピルを整えていない無名の小さな対象企業の株式を静かに大量取得した。

TKS事件では、それまでの裁判例がポイズン・ピルの有効性の必要条件としていた、株主による「意思確認」が都合悪く邪魔になった。中国系企業であるアジア開発キャピタル株式会社(ADC)は、TKS株の40%をすでに取得していたため、自らの議決権行使によって、有事導入型ポイズン・ピルを阻止できる立場にあった。

日本の裁判所は、TKSの救済に乗り出した。ADCがポイズン・ピル導入に関しての「利害関係」者であるとして、「意思確認」のための株主総会から除外することを認め、新しい「majority of the minority」(少数株主の多数決)の法理を認めた。TKS判決は、新法理の法的根拠や適用要件について詳述することなく、その射程距離や影響の度合いは不分明なままであった。