コーポレートガバナンス・コードの改訂に関するパブリックコメント (ニコラス・ベネシュ)

ニコラス ベネシュ(個人として)
平成30年4月27日

1. CGコードの改訂案全般につい
2. 原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)について
3. 原則1-4(政策保有株式)について
4. 原則4-1③、原則4-3②及び原則4-3③(CEOの選解任)について
5. 補充原則4-10①(任意の仕組みの活用)について
6. 原則4-14(取締役・監査役のトレーニング)について
7. CG報告書における機械可読フォーマットの改訂について

1. CGコードの改訂案全般について

フォローアップ会議の今回の検証について、皆様のご努力に感謝します。しかし、今回の改訂の提言までには4年もの時間がかかっています。ご存じのように、ドイツではガバナンスコードの実効性を常に監視する委員会があって、必要に応じて毎年でも改訂すべき点が提案されています。我が国の製造業において培われてきた「良いものを作る」、「絶えず改善する」の精神に則り、少なくとも3年に1回は、必ずCGコードの運用改善に向けてレビューするプロセスが実施されるべきであり、予め今後のタイミングとプロセスを設定しておくべきと思料します。そうしなければ、いつの間にか官僚頼みになってしまいます。具体的には、CGコードの冒頭の部分(「コーポレートガバナンス・コードについて」)で、具体的な次期改訂スケジュールを明記することが望ましいと思料します。

日産最終報告書

日産の最終報告書についても、気になる点をまとめてみました。
https://www.nissan-global.com/PDF/20171117_report01.pdf

今回の問題を、取締役会が防ぐことができたのか、との視点でみると、客観的な経営数字の作り方、情報の流れがポイントであろうと思い、関係箇所を拾い出してつなげてみました。部署や工場が異なる記載部分をツギハギしていますから、あくまでイメージであり、実態はそこまで酷くないということもあることには注意したいと思います。

神戸製鋼事件を考える(続き4)

不祥事防止・発見に社外取締役は役立つのか、どう貢献できるか、大変難しい問題です。これを神戸製鋼最終報告書はどう考えているのか、記載から分かることを整理しておきたいと思います。

前提事実ですが、神戸製鋼は2016年に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行しました。2017年当時、全取締役は16名、うち5名が独立社外取締役でした。

不祥事防止のための取締役の関わり方

来たる3月20日に行われるセミナー「企業不祥事から学ぶガバナンス強化策」の講師である渡辺樹一先生は、Business Lawyersでご論稿を連載中です。その第2回では、対談形式のコラムを私も担当いたしました。

企業価値向上と毀損防止に向けて企業は何をすべきか
第2回 製造不祥事から学ぶ教訓、問題の本質と対応策の提言(後編)
https://business.bengo4.com/category1/article302

2018.03.20 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『企業不祥事から学ぶガバナンス強化策』


コーポレートガバナンス・コード施行から3年目を迎え、いわゆる攻めのガバナンスとしての企業統治改革が進められつつある中、守りのガバナンスという側面では、大手メーカーによる製品データ改ざんなど、企業不祥事が依然として後を絶ちません。

企業価値を増大させながらビジネス(利益)もコンプライアンス(倫理)も同時に追求するというコンプライアンス経営が求められる中、企業価値の向上と毀損防止に向けて企業は何をすべきか、その答えは一体どこにあるのでしょうか。

本セミナーでは、企業法務を研究するGBL研究所の理事で、2014年1月~2017年12月に上場企業により公開された調査報告書を基にこれまでに145件の企業不祥事を分析した渡辺樹一氏をお迎えします。

神戸製鋼事件を考える(続き2)

神戸製鋼がこれからどのような訴訟を経験することになるのか、未だ分かりません。なので少し脇道にそれますが、ここでは一般的に、不祥事と訴訟の関係について、ある点を考えてみたいと思います。

訴訟はコーポレートガバナンスの重要なツールです、とシンガポール大学の教授から聞きました。最初驚いたのですが、改めて考えるとそれも当然だと納得しました。責任を問われない環境、自律だけが頼みの環境ではガバナンスにも限界があるという意味だと思います。証券訴訟提起を積極的に進めているGPIFは、この考え方を実践しているようです。
http://www.gpif.go.jp/public/activity/shouken_soshou_ichiran.html

GPIFの証券訴訟リストの中に、フォルクスワーゲン (VW) があります。窒素酸化物の排出量を誤魔化すようなソフトウェアを搭載していたというのが、VWの行った不正です。多くのカーオーナーがVWを相手取って提訴していますが、カーオーナーでもないGPIFがなぜ?と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。

神戸製鋼事件を考える(続き)

神戸製鋼は2017年11月10日、経産省にある文書を提出し、公表も行っています。タイトルは「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197967_15541.html

第三者委員会の調査は現在進行中で、本書は中間報告書のような位置付けです。報道によれば、この中間報告書は不十分であると批判が寄せられているとのことです。ここでは内容を整理し、気になるポイントをピックアップしてみたいと思います。

まず起きた事をもう一度確認しておくと、「改ざん」と「ねつ造」です。改ざんは「過去の経験等を踏まえ影響がないと判断する等して」検査結果を書き換えること、ねつ造は「例えば、製品の2箇所を測定すべきところ、1箇所のみ測定し、もう1箇所については、測定せずに想定される規格範囲内の数値を記載」することです。

神戸製鋼事件を考える

神戸製鋼の事件は、日本企業が誇りにしてきた品質管理、社外役員の役割、内部統制の不備、過去の不祥事から得た教訓の活かし方、来るべき訴訟など検討すべきポイントが満載です。しかし、現場で何が起きていたのか、誰がどこまで知っていたのか等は、第三者委員会による調査結果を待つ必要があります。今のうちに、分かっていることを整理しておきたいと思います。

2017年10月8日、神戸製鋼による最初のリリースでは、データ改ざんはアルミ・銅製品にとどまっていました。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197805_15541.html

ところが、その後進んだ社内調査は、驚きの展開を見せました。まず、社内調査の過程で妨害行為があったとのことです。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197904_15541.html

データ改ざんが確認された製品は鉄粉や鋼線にも広がり、販売先は525社に登っています。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1198006_15541.html

ある特定の製品や工場に限った改ざんではないですし、期間も長期間にわたるようです。10月8日の記者会見で副社長が10年以上前から改ざんがあったと認めています。ある新聞報道によれば、40年以上前からだとする従業員もいるようです。このため「組織ぐるみ」を指摘する人も出はじめています。「組織ぐるみ」には明確な定義はなく、トップ経営陣が知っていたかどうかで「組織ぐるみ」を判断する見方があるようです。しかし、不正行為が企業の業務プロセスの中に定着していたなら、経営陣の期待や思込みとは別に、「組織ぐるみ」は成立するような気もします。

10年間改ざんをしなければならないような企業が置かれた状況とは、どのようなものだったのでしょうか。神戸製鋼のROEの推移は、次の通りです。

2017.07.03 会社役員育成機構(BDTI)セミナー:『第三者委員会の設置から企業の信頼回復まで』

不祥事が起き第三者委員会が調査報告書を提出すると、そこで提案される再発防止策には、決まったように取締役会による監督強化と企業風土の改善が挙げられています。これは何も日本企業に限ったことではありません。

これら再発防止策は不祥事の防止・発見に本当に役立つのでしょうか。また、再発防止策は具体的にどのように展開され、取締役会のあり方はどう変わるのでしょうか。さらには、これらを他山の石として、不祥事を未然に防ぐ内部統制の構築することはできないでしょうか。

本セミナーでは、第三者委員会報告書格付け委員会で委員を務める久保利英明氏をお迎えし、数多くの再発防止策を調査したからこそ見えてくる、実効的な内部統制のポイントをお話頂きます。

また、米国で数多くの不祥事調査を担当した Shearman & Sterling 法律事務所のパートナーであるケネス・レブラン氏を迎えし、両国の経験を基に調査・再発防止策の日米における相違・類似点などについてご解説頂きます。

パネルディスカッションでは、同志社大学法科大学院教授のコリン・ジョーンズ氏や、当機構代表理事ニコラス・ベネシュを交え、当機構理事市川佐知子をモデレータとして、再発防止策の重要ポイント、取締役会の役割について議論します。