メトリカル:ポスト・コロナはファミリー企業に注目

新型コロナウイルス感染拡大による社会生活の変化に伴い、経営を取り巻く環境が大きく変容しています。ポスト・コロナを念頭にこの環境変化に適応することが最大の経営課題となっています。この変化に迅速且つ柔軟に適応するための一つの鍵が経営のリーダーシップであると思われます。相対的に経営スピードが速いとみられるファミリー企業の動きに注目が集まることが予想されます。これまでも弊社リサーチでは、創業家ファミリーが20%以上保有する会社のパフォーマンスが平均よりも相当に高いことを述べてきました。直近のデータをもとにあらためて注目したいと思います。下記の2つのグラフは、ROE(実績)とトービンのQでファミリー企業(創業家ファミリーが20%以上保有する会社)とユニバース1,743社の分布を示しています。ROE(実績)とトービンのQのいずれもユニバース1,743社に比べてファミリー企業の方がより高い数値に分布していることがわかります。ファミリー企業が今後も素早い経営スピードで今回の変化に適応し、より高い収益力を実現することができるのか、株価パフォーマンスにも反映されるのか、今後注目されます。

メトリカル:11月の株式相場はワクチン早期摂取・流動性拡大などの期待から大幅な上昇。CG Top20株価はTopix, JPX400に対してアンダーパフォーム。

11月の株式相場はファイザーが新型コロナウィルスワクチン申請したことから景気回復期待と米国FOMCを受けてさらなる流動性拡大の期待などから大幅に上昇した。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ10.67%および11.72%上昇。CGレーティング・スコアTop20株価は9.16%と両株価指数の上昇には及ばなかったものの大幅上昇で終了した。

メトリカル:10月の株式相場は月末にかけて 大きく下落。CG Top20株価はTopix, JPX400に対してアンダーパフォーム。

前月までの上昇トレンドから、10月の株式相場は欧州や北米でのコロナウィルス感染者数増加を懸念して、月末にかけて値を崩した。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ02.81%および2.75%下落。CGレーティング・スコアTop20株価は5.41%と両株価指数に対して大幅アンダーパフォームした。累計のパフォーマンスでは大きくアウトパフォームを継続(下チャート参照)。

メトリカル:ファミリー企業の株価と投資戦略

前回の記事では、日本特有の「親子上場」に注目しました。当社ユニバース会社を大株主の持ち分によって3つのグループに分類しました:(a) 50%以上の株式を保有する大株主が存在する会社、(b) 20%以上50%未満の株式を保有する大株主が存在する会社、(c)20%以上の株式を保有する株主が存在しない会社。 親会社が所有する上場子会社および関連会社または創業者ファミリー企業は、ROAやROE、トービンのQなどの主要パフォーマンス指標において優れていることをお示しいたしました。この点で、親会社が相対的に収益性の高い上場子会社や関連会社を完全子会社化するなど連結化して、親会社の収益を引き上げることは自然な流れと考えられます。事実このようなケースは増加傾向にあります。 親会社による利益率の高い上場子会社の買収を先取りして、上場子会社(および関連会社)に投資する投資戦略をご案内いたしました。
今回の記事では、逆に株価が安く推移しているファミリー企業に注目しました。株式公開にはいくつかの目的がありますが、資金調達手段の多様化が目的の1つである場合、株価が低いこのような状況ではその目的が達成されません。株式上場を再検討する選択肢もあるのではないかと思われます。経営側から見ると、MBOなどを通じて非上場化することも選択肢の一つです。下表は、ユニバースのファミリー企業の中で持ち分50%以上と20%以上50%未満の2つのグループに分けて、TobinのQが0.8未満の会社をお示ししています。ROAとROEが低い企業にとっては、収益性のパフォーマンスが振るわないことが株価の低い理由と考えて良い場合が多いと思われます。しかし、ROAとROEが高くても株価が低いファミリー企業も散見されます。収益性のパフォーマンスは問題ないが株価は低いままの企業にとって、「非上場化」を検討することも方策の一つになりえます。投資家がエンゲージメントにおいて実際にそのような提案なり行動をするかどうかは別として、そのような視点に着目した投資戦略ということができます。

メトリカル:9月の株式相場は小幅高。CG Top20株価はTopix, JPX400に対して、大きくアウトパフォーム。

前月までの大幅上昇から、9月の株式相場は小幅高で終了。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ0.52%および0.11%上昇。CGレーティング・スコアTop20株価は2.28%と両株価指数に対して大幅アウトパフォームした。累計のパフォーマンスでも大きくアウトパフォームを継続(下チャート参照)。

メトリカル:株主構成とパフォーマンス指標、投資戦略

当社はこれまで、大株主による株主保有形態と収益指標ならびに株価に統計上有意性のある相関があることに着目していました。株主の持ち分によって会社を大きく3つのグループに分類して考えてみます。(a) 50%以上の株式を保有する大株主が存在する会社、(b) 20%以上50%未満の株式を保有する大株主が存在する会社、(c)20%以上の株式を保有する株主が存在しない会社に分けて、当社ユニバースでパフォーマンス収益指標ならびに(過去3年間平均ROE, ROA)およびトービンのQで比較したのが下表です。

メトリカル:コーポレートガバナンス1,800社スコア(2020年7月末)の分析

当社はこれまで、コーポレートガバナンスの向上と株価ならびに収益指標(ROE, ROA)との関係性に着目して分析を進めてまいりました。長期のホライズンの投資家目線でコーポレートガバナンスの行方を見ているのがその理由です。また、今月からは収益指標(ROE, ROA)に関しましても、長期の株主価値の最大化もしくはサステイナブルな収益の向上が株式会社と株主の共通の目標であることから、各社の過去3年間の平均値をベースに分析することといたしました。

株価は株式会社の重要な指標の一つであることは言うまでもありません。以前のコメントでもIRや株主総会開示情報と株価(トービンのQ)、収益指標(ROE, ROA)およびコーポレートガバナンスの総合スコアと相関が高いということを述べました。情報開示は経営の透明性の出発点であり、とても重要です。実際に株価面でも上記情報開示の努力が報われている結果を表しています。当社では、毎年7月のコーポレートガバナンスの総合スコア上位20社をCG Top20として株価指数化して、代表的な株式市場の指数(TOPIX, JPX400)と比較して毎月お示ししています。その20社の構成会社を見直すのが当月でした(コーポレートガバナンスのスコア自体は毎月変動しています)。2018年にユニバースを500社余りから1,800社に拡大したことと、コーポレートガバナンスの改善に取り組む会社の裾野がそれまでの限られた大企業から広がってきたため、その顔ぶれが変わってきました。本年度は6社が昨年度から入れ替わりました。まるっきり新登場の4社は、塩野義製薬、メイテック、ケネディクス、ネットワンシステムズ、NSD。復活組の2社は、カカクコムとオムロンです。

メトリカル:3月決算会社の株主総会

前月に引き続き、株主総会の話題をします。上場会社にとっては例年この時期には6月末で株主総会も一区切りがついているのですが、今年は状況が異なります。新型コロナウイルス感染症拡大が株主総会にも影響を及ぼしています。決算に伴う監査作業等の遅れにより、本年の3月決算会社の招集通知の発送等の業務に影響が出ています。下表の東京証券取引所がまとめたデータ(下表1参照)によると、昨年に比べて招集通知の早期発送(3週間以上前)ならびに早期ウェブ開示(3週間以上前)に対応できた会社の割合が前年比で低下しています。

ちなみに、東京証券取引所へ回答した2,119社の集計によると、本年の招集通知の発送は株主総会開催日の平均18.4日前に行われ、ウェブサイトへの開示は平均22.2日前(取引所HP)および22.5日前(会社HP)に行われる予定と回答されています(下表2参照)。

メトリカル:6月の株式相場は行ってこいの展開で終了。当月のCG Top20株価はTopix, JPX400に対して、大きくアウトパフォーマンス。

2020年6月の株式相場は前月からの経済活動再開を好感した好地合いを引き継ぎ、月前半まで上昇した。世界的に新型コロナウイルス感染者が増加に転じたことから、月半ばからは神経質な展開となり、上下振幅の大きい展開になった。
Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間でそれぞれ-0.12%および-0.01%と小幅に反落。CGレーティング・スコアTop20株価は+0.47%と両株価指数に対して大きくアウトパフォーム。

メトリカル:英文コーポレートガバナンス報告書

新型コロナウイルス感染症拡大の影響でまだ決算を確定できない3月決算会社会社もある中で、6月末の定時株主総会のシーズンが迫っています。近年は株主総会の開催日を月末の集中日から前倒しする会社も増えていますし、英語での株主総会招集通知を案内および開示する会社も多くなってきました。また、会社定款の変更を伴うことになりますが、電磁的投票を許容する会社も増えています。これらは株主・投資家にとってとても良い取り組みです。これら一連の項目に加えて、IRの充実度合いをAGM/IRという評価項目としてメトリカルでは分析しています。ご参考までにAGM/IRファクターとパフォーマンス指標(実績ROE, 実績ROAおよびトービンQ)との相関を下記にお示しします。とりわけトービンQにおいて当ファクターの有意性のある正の相関が注目を引きます。IR情報開示や株主総会へのアクセシビリティが高いなどAGM/IR評価が高い会社ほど市場で株価が高く評価されているということができます。これは上場企業でIRを担当されている方にとって何より救われる結果です。

一方で、東証に提出するコーポレートガバナンス報告書を英文で提出している会社はまだ限定的です。全上場企業(約3,800社)のうち2020年5月現在で265社だけが英文コーポレートガバナンス報告書を提出しています。海外投資家の株式保有および売買高の比率の高さから見れば、英文コーポレートガバナンス報告書を開示する会社がもっと増えても良いと思われます。