日産自動車のコーポレート・ガバナンス報告書

(2018年12月25日提出。1-2頁の抜粋)

「当社のコーポレート・ガバナンスの状況は以下のとおりです。

コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方及び資本構成、企業属性その他の基本情報1.基本的な考え方コーポレート・ガバナンスの充実は、当社の経営の最重要課題のひとつである。当社のコーポレート・ガバナンスにおける最も重要なポイントは、
経営陣の責任の明確化であり、当社は、株主及び投資家に向けて明確な経営目標や経営方針を公表し、その達成状況や実績をできるだけ早く
また高い透明性をもって開示している。これによって経営陣の責任を明確にし、コーポレート・ガバナンスの充実を図っている。【コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しない理由】

試算:日産が支払うことになる損害賠償額はいくらか

ゴーン氏の刑事事件が進行している。刑事事件だけではことは終わらない。日産が投資家から民事事件を提起されるのは、時間の問題である。ゴーン氏の報酬過少記載に起因して、日産からはかなりの資産が流出すると見込まれる。資産流出の一番大きな部分を占めるのは、投資家が提起する損害賠償請求訴訟であろう。一体いくらの資産流出となるのか、計算を試みた。投資家からの請求に利用される条文の中心となるのは、金融商品取引法21条の2第2項である。この条文は、立証責任を被告に転換し、公表日の前1ヶ月間の株価平均と、公表日の後1ヶ月間の株価平均を計算し、その差分を損害であると推定する。

「ライブドア事件とは何だったのか」(ニコラス・ベネシュ)

日本経済新聞オンライン版に、10月1日、「ライブドア事件とは何だったのか」というコラムが掲載されました。スキャンダル後の独立社外取締役として、金商法訴訟に対する防衛戦略の担当役員を務めた私としては、「事件は何だったか」についてコメントしたい見解が多々あります。

1)虚偽記載は確かにあったが、特捜部の劇場型捜査はやりすぎだった。家宅捜査を始めた時点では何を探しているか分からなかった。(普通なら、捜査開始前にNHKを呼んでいる場合ではなかった。)

2)他の不正事件事例と比較し、捜査のやり方および個人が受けた処罰には不公平さの印象(事実)が残った。

3)結果、日本の若者の起業家精神、新しいことへの挑戦する野心、「おじさん」が支配する社会・システムに対する信頼に冷や水を浴びせた。LDは上手に経営され、整合性がある「戦略」を持つ企業ではなかったが、若者にとっては「我々も会社を作って、面白いことができる!」象徴的な存在だった。

4)事件は、TSEに自社コンピューターのキャパシティー増設を加速させた。(事件当時、LDの発行済み株式総数は全上場企業の株式総数の何と30%以上だった。(!!))

また、

5)私が当時主張したように、即座に上場廃止されず猶予期間をもたせるための「特設注意市場」が設けられた。(これは明らかにLD事件の反省にたって、東証にて2007年11月に設立された制度。)

6)金商法の新しい条文であった21条の2の初めての適用として日本の金商法解釈にとって歴史的に重要な判例がでた事件だった。同条文は民間原告による(民事)訴訟が大幅に楽になっただけではなく、被告企業に立証責任を転嫁する(米国に存在しない)とても厳しい法律である。したがって、当時、私は訴訟の防衛・反証を「因果関係」で争うために多数の経済学者、アナリスト、内外の法学者など(10社?)を集めてありとあらゆる手段をとった。事件は、数年前の法改正で厳しさが緩和され、strict liabilityから「過失責任」にかわる原因の一つだった。

この経験を踏まえて、

7)私は役員研修に特化する「公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)」を設立した。

私は堀江さんに会った事はないが、同氏が事件後に少なくとも日本では「回復」して活躍されている事実は若者にとって失敗から立ち直るチャンスはあるという事例として、最終的にはプラスの面もあったのではないかという気がしています。
–ニコラス・ベネシュ

2018.03.20 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『企業不祥事から学ぶガバナンス強化策』


コーポレートガバナンス・コード施行から3年目を迎え、いわゆる攻めのガバナンスとしての企業統治改革が進められつつある中、守りのガバナンスという側面では、大手メーカーによる製品データ改ざんなど、企業不祥事が依然として後を絶ちません。

企業価値を増大させながらビジネス(利益)もコンプライアンス(倫理)も同時に追求するというコンプライアンス経営が求められる中、企業価値の向上と毀損防止に向けて企業は何をすべきか、その答えは一体どこにあるのでしょうか。

本セミナーでは、企業法務を研究するGBL研究所の理事で、2014年1月~2017年12月に上場企業により公開された調査報告書を基にこれまでに145件の企業不祥事を分析した渡辺樹一氏をお迎えします。

企業風土の鍛え方

企業不祥事が取りざたされる度、再発防止策に上げられるのが「企業風土の改善」です。しかし、具体的にどうするのか、多くの人が頭を悩ませていると思います。私もその一人であったところ、民間企業で法務部長経験の長い友人から、NACD Blue Ribbon Commission Report “Culture as a Corporate Asset”を紹介されました。特に、次のリコメンデーションです。

Recommendation #5
Directors should assess whether the chief legal officer / general counsel and other officers in key risk-management, compliance, and internal-control roles are well positioned within management and in relationship to the board to support an appropriate culture.
https://www.nacdonline.org/Store/ProductDetail.cfm?ItemNumber=48252

一部の会社のことですが、ビジネス事業部よりも法務部門は少し格下、コストセンターだし余り大きな顔はできない、ということもあるようです。しかし、このレポートでは、取締役会が、法務部の予算、スタッフ、情報アクセスについて関心を持つべきだとしています。

企業風土の改善で、「法務部」。当然のようにも思え、意外な気もします。いずれにしろ、法務部の予算、スタッフなど、とても具体的で直接的な答えに、思わず嬉しくなりました。しかし、いくら位かけると良いのでしょうか?

2017.07.03 会社役員育成機構(BDTI)セミナー:『第三者委員会の設置から企業の信頼回復まで』

不祥事が起き第三者委員会が調査報告書を提出すると、そこで提案される再発防止策には、決まったように取締役会による監督強化と企業風土の改善が挙げられています。これは何も日本企業に限ったことではありません。

これら再発防止策は不祥事の防止・発見に本当に役立つのでしょうか。また、再発防止策は具体的にどのように展開され、取締役会のあり方はどう変わるのでしょうか。さらには、これらを他山の石として、不祥事を未然に防ぐ内部統制の構築することはできないでしょうか。

本セミナーでは、第三者委員会報告書格付け委員会で委員を務める久保利英明氏をお迎えし、数多くの再発防止策を調査したからこそ見えてくる、実効的な内部統制のポイントをお話頂きます。

また、米国で数多くの不祥事調査を担当した Shearman & Sterling 法律事務所のパートナーであるケネス・レブラン氏を迎えし、両国の経験を基に調査・再発防止策の日米における相違・類似点などについてご解説頂きます。

パネルディスカッションでは、同志社大学法科大学院教授のコリン・ジョーンズ氏や、当機構代表理事ニコラス・ベネシュを交え、当機構理事市川佐知子をモデレータとして、再発防止策の重要ポイント、取締役会の役割について議論します。

金融庁:『「会計監査の在り方に関する懇談会」提言の公表について』

金融庁

「会計監査の在り方に関する懇談会」(座長 脇田良一 名古屋経済大学大学院教授 明治学院大学名誉教授)においては、平成27年10月より、計4回にわたり、会計監査の信頼性を確保するために必要な取組みについて、幅広く議論を行ってきました。本提言は、会計監査の信頼性確保のための取組みについての議論を取りまとめ、公表するものです。
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はじめに

資本市場の信頼性を確保し、成長資金が供給されるようにしていくためには、企業が財務情報を適正に開示することが必要である。また、企業が経営戦略を策定し、持続的な成長・中長期的な企業価値の向上を目指すうえでも、自らの財務状況を的確に把握し、株主・投資家等と共有することが不可欠である。

会計監査の在り方に関する懇談会(第3回)議事要旨 (1月27日)

金融庁

議論の要旨は以下のとおり。

  • 監査法人の機関設計については、パートナーシップ制のもとで強い法的制約が課されていない中、各監査法人において工夫をこらしているところであるが、そのことが外部から見た分かりづらさをもたらしている。監査法人のガバナンス・コード(以下「コード」という)を導入することにより、共通の物差しによる監査法人の比較が可能となり、透明性の向上による監査法人のマネジメントの強化や切磋琢磨につながるのではないか。このため、上場会社の監査を一定数以上行う一定規模の監査法人については、実施している監査業務が多く、利害関係者が多いことも踏まえ、コードを義務付け、日本公認会計士協会(以下「協会」という)の品質管理レビューによってその実効性の確保とガバナンス向上につなげるべきと考える。それ以外の監査法人については、個々の監査業務を直接チェックすることによって監査の信頼性を確保すべき。

毎日新聞:「再生に何が必要?「東芝不正 底なしの闇」著者報告会」

mainichi

「経済プレミアのコンテンツとして初めて出版され、ビジネス書部門でベストセラーになった「東芝 不正会計 底なしの闇」(毎日新聞出版、税込み1080円)。著者の今沢真・経済プレミア編集長兼論説委員の緊急報告会が2月22日、東京都千代田区一ツ橋の毎日ホールで開かれ、180人が参加した。

2016.05.16 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『昨今の会計不正から考える、 役員と会計監査人のあるべきコミュニケーションとは?』

昨今、上場会社での会計不正が大きく報じられています。遡れば、リソー教育、沖電気、オリンパス、大王製紙、ライブドア、アーバンコーポレーショ ン、西武鉄道、カネボウ、山一證券等の事件があり、その度に打開策が必要と叫ばれながら、同じ過ちが繰り返されています。これを正すためには、誰が何をす べきなのでしょうか。

有価証券報告書に虚偽記載があると、取締役、会計参与、監査役もしくは執行役又はこれに準じる者、監査証明を行った監査法人の責任問題が生じます。 有価証券報告書は財務・会計情報が多く、相応の専門知識がないと、記載内容を理解できません。安易に役員等の責任を問うのは、酷にすぎるという意見があり ます。また、財務諸表の作成責任は一義的には会社側にあることを理由に、監査法人の虚偽記載の責任を問うことはできない、という論評もあります。確かに、 虚偽記載を見抜けなかったからといって、結果責任を問うようなことをすべきではありません。しかし、会計不正を防ぐために、役員等や、監査法人が注意する 努力を怠るべきではありませんし、怠った場合には、責任追及がなされてしかるべきです。