BDTI 2021年度活動報告


 

2021年度はBDTIにとって非常に厳しい年でしたが、実り多い年でもありました。役員研修の頻度が増えただけでなく、BDTIとして挑戦することによりプログラムの種類も広がりました。2021年度を振り返り、活動報告をさせていただきたいと思います。

【研修活動】

BDTIが実施した役員研修の受講者は342名で、その内訳は以下の通りです。
・オープンプログラム(13回実施)122名
・社外取締役の役割に焦点を当てた新コース「社外取塾」32名
・「ガバナンス塾」にダイバーシティマネジメントを含んだコース16名
・企業向けにカスタマイズされた役員研修は169名
・このうち64件は、子会社の幹部が参加した研修でした
・オープンプログラムの役員研修の参加者のうち32%が女性で、日本の取締役会の女性役員比率の平均の4倍以上となります。この数字は、女性のための「研修奨学金」を提供する寛大なスポンサーにより、2022年度には増加すると思われます。

BDTIが開催した7回のウェビナーには608名が参加し、第一線で活躍する専門家が以下のトピックを取り上げました。
・「ポストコロナ時代のリスク管理−法改正を踏まえたD&O保険の見直し」
・「投資家が求めるガバナンスとエンゲージメントとは?」
・『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、なぜ日本では殆どないのか?』
・ 『「ESG経営」をどう「開示」するべきか?』
・ 「実効的対話の本質と形態」
・「会社支配権争いと株主利益の毀損」
・「機関設計の選択と社外取締役の役割」~新設計選択の傾向と検討すべきポイント

ESGに不可欠なガバナンス向上のため支援下さい!

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)が2011年に公益認定を受けた事業は2つです。両方、ESGの注心柱である「G」には不可欠です:

  • 「コーポレート・ガバナンスに関する専門的知識の普及および人材育成を推進する事業」(役員、執行役員、管理職向けの研修)
  • 「コーポレート・ガバナンスに関する調査研究および一般市民啓蒙に資する事業」(主にCG及びCGプラクティスについての情報発信)です。

ESGへの対応が単なる慈善活動としてではなく、事業そのものとして取組むべき経営の重要課題として認識されるようになってから、役員研修受講者も年々増え続け、BDTIの役員研修受講生は2011年の研修開始以来2,400人を超えました。これは、ガバナンスに関する研修の歴史が浅い日本で、BDTIが企業および個人に対して低価格で研修を提供してきたからです。(活動報告はこちらをご覧ください。)

事業継続に不足する資金は主に寄付や事業収入を充てていますが、今後さらに内容の充実を図るには、さらなる寄付金やご支援が必要です。そして今直面している問題は日本の大手機関投資家からの支援がまったくと言っていいほどないことです。この10年間、BDTI が活動を続けられてきたのは外国人投資家のお陰です。それには大変感謝しています。日本人が自国の経済を守るのに他国に頼り続けていいのでしょうかコーポレートガバナンスが強化され、投資環境も良くなっていることを日本の機関投資家も感じていると思います。なぜこんなに良くなっているか考えたことありますか?これも外国人である私が政府にコーポレートガバナンス・コードを提唱してきたからです。

日本経済新聞:「お飾り社外取締役、もう許されず 不正の監督責任厳しく」

本日(2022年2月21日)の日本経済新聞の記事で、友人でもある山口利昭弁護士のコメントを含めて、社外取締役への期待が高まっていることに着目しました。以下の文は正にその通りだと思いました。

「選定方法に課題

企業側の工夫も必要となる。企業統治に詳しい中村直人弁護士は「社外取締役の候補者を選定するプロセスから見直すのが大事だ」と話す。統治体制が最も厳しいとされる指名委員会等設置会社でさえ、社外取締役の候補者をまず経営陣が選び、指名委員会の了承を受ける流れになっている例も多い。経営者の「お友達人事」になってしまう可能性が残るという。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか?2021年 〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。2022年4月の東証の市場区分の再編に伴い、2021年はコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われました。上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みも前に進むことが期待されます。その取り組みの成果によって、どのくらいコーポレートガバナンスが改善されたのかを数値を持って見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月のMetricalによる各評価項目の評価と2021年12月のそれらの推移を示していて、この1年間の上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みがどれくらい改善しているかを見ることができます。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的な評価を示すものです。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることがわかります。コーポレートガバナンス・コードの改訂の影響もあって、上場会社がコーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身についてもう少し詳しく見てみましょう。

Introducing the enjoi Wolfpack, a DEI Leadership Program for Corporate Men

(日本語訳は英語に続きます)

DEI Business Strategy is not a “Nice to Have”

Are you a forward-looking man in corporate Japan with an interest in learning how to shift your organization towards healthier, more equitable, and more innovative dynamics? 

Building diversity-positive workplaces is no longer a “nice to have.” It is now an IMPERATIVE just for baseline business continuity. Diverse talent mobilization strategy can no longer be delegated to the HR function where it is often under-resourced and disconnected from holistic innovation and business strategy.

Research by the Economist Intelligence Unit shows that just 38% of Japanese companies report that C-level executives have responsibility for the formulation of talent-management strategy, compared to 65% in the global results. If CEOs in Japan want to stem financial losses from talent attrition, building a gender-equal and diversity-positive workplace is the foundation.

That’s why we have developed the enjoi Wolfpack program.

This new, one-of-a-kind, six-month executive education program from enjoi Japan K.K. runs biweekly as virtual meetings on Monday evenings, 8:00-9:30 pm JST beginning February 28, 2022. There are three different packages available at three price levels: Wolfpack Explorer, Wolfpack Leader, and Wolfpack Mastermind.

There is only a limited number of spots still available in this confidential DEI leadership program! Applications close as soon as seats sell out. Final application deadline is February 15, 2022.

Visit www.en-joi.com/wolfpack to request pricing details and apply now!
We also welcome inquiries at wolfpack@en-joi.com.

メトリカル:どのような企業が買収防衛策を導入しているか(BDTIデータを利用したMetrical分析)

下表の通り、全東証一部上場企業の中で買収防衛策条項を採用していない会社は90%を超えています。Metricalのユニバース(東証一部上場会社を中心に上場会社全体よりも少し時価総額が大きい会社で構成されている)でも約90%の会社が買収防衛策条項を採用していません。

今や買収防衛策を保持していない会社が主流になっている中で、買収防衛策を採用している会社と採用していない会社のパフォーマンスとコーポレートガバナンス・プラクティスの状況を調べてみました。下表がそれらを示したものです。ご覧の通り、買収防衛策を採用していない会社のパフォーマンスが過去3年間平均のROE(actual)、ROA(actual)およびトービンのQにおいても優れていることがわかります。コーポレートガバナンス・プラクティスにおいては、独立取締役比率以外の女性取締役比率とMetricalスコアにおいて優れていることがわかりました。

3/10「機関設計の選択と社外取締役の役割 」~新設計選択の傾向と検討すべきポイント~

プライム市場への申請と合わせて機関設計の変更を計画する企業が増えています。上場企業には、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社の3つの選択肢があるわけですが、それを変更する理由・背景にはどのようなものがあるのでしょうか。そして機関設計の変更には多かれ少なかれ社外取締役の役割の変更も付随するものですが、どの程度の変更を取り込むべきでしょうか。社外取締役議長や筆頭社外取締役制度の採用には、メリットが見えない、運用の方法が純粋にわからないという声も聞かれます。

本ウェビナーではまずBDTIの代表理事である大杉謙一から、複数の上場会社をヒアリングして得られた、機関設計選択の理由・背景、機関設計変更の事情などを一般化してご報告し、変更を計画する企業の皆様にヒントを提供してもらいます。また、経営者・社外取締役として豊富な経験を持つ藤田純孝氏から、実効的な取締役会・委員会の運営、社外取締役議長と執行部との連携、他の社外取締役との関係などをお話しいただきます。

パネルディスカッションでは、お二人の講師に加えてニコラス・ベネシュも参加し、CGCにより導入が広まったスキルマトリクス、欧米で広く取り入れられる筆頭社外取締役等、コーポレートガバナンスの様々なツールや、企業を取り巻く環境が求める取締役会のモデルや構成員について、多角的に議論を展開します。

“How We Saved Our Planet”, by Nicholas Benes

In this article and video published in Ethical Boardroom, I urge a much deeper discourse about #ESG and the structure of profit-seeking corporations – one that considers ways to install the right incentive drivers. As summarized in the video, in my article aliens from another planet (the Vilcans) visit Earth and advise us to think much harder about key questions that we are not fully grappling with – such as: 1) who is best able to assess ESG factors that affect sustainability? 2) does our system provide enough incentives for them to think 20 years ahead, but act now? Does it do that throughout the entire investment chain? 3) why does ownership need to be non-transparent much of the time? Is that healthy?  5) what are the implications of giving FULL limited liability to corporations? 6) does it make sense that those who bought no stock, bear a large part of externalized risk? etc. etc.

The article then describes exactly how the Vilcans reconfigured their equity markets to address these and a host of other issues that (in my view) current #ESG initiatives and debates are not effectively coping with.

メトリカル:11月の株式相場は下落。CG Top20株価はインデックスに対しアンダーパフォーマンス。

11月の株式相場は新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」への警戒感が強まり、月末にかけて大きく下落し、2ヶ月連続の下落。11月1ヶ月間のTopixとJPX400の両株価指数は-3.60%、-3.44%とそれぞれ下落した。CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は-4.56%と両インデックスに対して大きくアンダーパフォーマンス。

1月17日、無料ウェビナー「会社支配権争いと株主利益の毀損」―これまでの歴史、今突きつけられた問題、今後の行方―

敵対的買収への防衛策として経営陣が発動するポイズンピルが世間の耳目を集めたのは、ライブドアが日本放送株を買い集めて裁判事件化した2005年のことでした。その後ポイズンピルは日本企業の多くで導入され、2008年のピーク時には導入企業が500社超となりました。しかし、経営者の保身につながるとの批判、株主総会における反対票の増加を受け、廃止する企業が増え、現在の導入企業は270社程度となっています。(※)下記参考資料あり。

ところが、ここへ来て買収防衛策の廃止傾向は鈍化し、逆に再導入する企業も出てきています。そして実際に、買収者と買収対象企業の現経営陣とが支配権を巡って攻防を続け、新聞紙上を賑わす事件も散見されます。特に、東証1部上場の新聞輪転機メーカーの事件では、買収者を排除した株主総会決議によるポイズンピルの発動が、裁判所によって認容される事態となりました。

ポイズンピルについては、敵対的買収を困難にさせることで、買収の脅威を通じた経営の規律の向上を弱める点や、経営者の保身を図るための手段として用いられかねないという点などが一般的に問題視されるわけですが、この事件ではポイズンピル発動の判断に際して買収者の議決権行使が否定されており、株主平等の原則との関係で新たな問題が加わっています。

このような流れを踏まえ、日本企業はどのような対応をとるべきでしょうか。ポイズンピルの導入は今が好機でしょうか。また、投資家も日本という市場を再評価する必要があるでしょう。本日は、スティーブン・ギブンズ氏及び田中亘氏、パネルディスカッションでは浜田宰氏が加わり、裁判所による判断の歴史、近時の変節についてお話いただきます。

【開催日時】  2022年1月17日(月)15:30 –18:00

【参加方法】  ZOOMビデオ会議形式(実名を伏せたい方は表示名を匿名などへ変更して下さい。オーディオはオフにして下さい。)

【参加費】   無料

【定員】     100名

【タイムテーブル】15:20 ログイン・スタンバイ
         15:30- 15:35 (5分) MC市川 佐知子氏挨拶
         15:35- 15:50 (15分) BDTI代表理事ニコラス・ベネシュによるBDTI & ウェビナーのご紹介
         15:50-16:20 (30分)田中亘氏プレゼンテーション
         16:20-16:50 (30分) スティーブン・ギブンズ氏プレゼンテーション
         16:50-17:00 (10分) 休憩
         17:00-18:00 (60分) パネルディスカッション/Q&A
         18:00 終了