【メトリカル】P/B引き上げ要請により成長政策スコアは改善したが、他の項目は途上

メトリカルは、優良上場企業を中心に約1,800社のコーポレートガバナンス評価を毎月提供しています。今年も昨年に引き続き、上場企業のコーポレートガバナンスの取り組みが過去1年間でどれだけ進歩したかを見てみたいと思います。 […]

「アセットオーナープリンシプル」をきっかけに、本格的な企業年金改革を

応援しますが、「アセットオーナープリンシプル」は弱いので少しがっかりしています。「SCの受け入れ表明をしてください」というお願い一つは主な趣旨です。しかし、その要求でさえ、弱いです: 「スチュワードシップ責任を果たすに当たっては、自らの規模や能力等を踏まえつつ、日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明をした上でその趣旨に則った対応を行うことを検討すべきである。」少なくとも年金の場合、より強い文言がほしかったです。(私が2016年から提案しているように。以下、ご参照ください。)

ましてや、プリンシプルには拘束性がないのに、SCをなどを受け入れをする必要がないのに、アセットオーナーはファンド・マネジャーの適切な議決権行使を監視することが、受託者責任に含まれる責務の一つであることについては言及も明確化もされていない。つまり、米国のERISAにおける「エイボン・レター・ルール(1988年)」は、まだ日本には上陸していないのである。

ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル⑧「持続的な成長・企業価値向上に向けた日本企業の課題と機会:マルチ・ステークホルダー・エンゲージメントの視点から」

BDTIが開催する「ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル」の第8回目のテーマはブランズウィック・グループ ディレクター 宇井理人氏をお招きし「持続的な成長・企業価値向上に向けた日本企業の課題と機会:マルチ・ステークホルダー・エンゲージメントの視点から」です。

今日の企業経営では、ビジネスと社会・政治・金融の各領域が複雑に絡み合う下で、自社を取り巻く多様なステークホルダー(顧客、取引先、従業員、投資家、各国政府、メディア、NGOなど)と対話しエンゲージしていく必要があります。本ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブルでは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、日本企業の戦略・組織・文化にどのような課題や機会があるか、海外事例も交えて議論します。ぜひご参加ください。

ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル⑦:「日本企業のダイバーシティ実現のために取締役ができること、すべきこと」

 

BDTIが開催する「ガバナンス・インサイト・ラウンドテーブル」の第7回目のテーマは「日本企業のダイバーシティ実現のために取締役ができること、すべきこと」です。

ウーマンズ リーダーシップ インスティテュート株式会社 代表取締役 川嶋 治子氏より、外資系企業、上場企業のダイバーシティ推進をサポートしてきた経験から、日本企業が陥りがちな失敗パターンとその理由、成果を出している企業の特徴について紹介していただきます。また、自社を変革させるために、取締役は何をすべきなのか、何をすべきではないのか。成功確度を高める組織変革の具体的スキームを提示します。ぜひご参加ください。

ファミマ事件から、特別委員会の社外取締役の役割

ファミリーマート株式公開買付にかかる株式買取価格決定申立事件
東京地裁決定2023年3月23日

この事件は、親会社である伊藤忠が子会社ファミマを完全子会社とするため、まず公開買付し、その後株式併合により少数株主をスクイーズアウトするスキームをとったところ、スクイーズアウトの株主総会議案に反対したオアシスを含む少数株主らから、ファミマに対し公正な価格での買取が要求され、協議が整わず、双方から裁判所に対し、価格決定の申立てがなされた事件である。

東京地裁の決定文は長文であるが、裁判所の判断の枠組み、一般に公正と認められる手続、公正な価格の算定を記載する3箇所に分けることができる。そして、一般に公正と認められる手続の中では、特に特別委員会が役割を果たしたか、が真っ先に取り上げられている。社外取締役が特別委員会の委員となった場合、何に注意すべきか、参考となる点を多く含むので、ここでは、この箇所に限って、キーポイントを紹介する。

東京地裁決定はファミマの特別委員会に非常に厳しく、その役割を十分に果たしたものとは評価することができない、とした。ただし、決定について双方とも抗告中であり、東京高裁において地裁とは異なる判断がなされる可能性はある。

7/20(木) 無料ウェビナー: 改めて考える実効性ある役員研修

 
〜経済産業省が語る!令和4年度委託調査の結果を踏まえた役員研修の再考〜

経済産業省は、コーポレートガバナンス改革の実質化のためには、社外取締役の質の向上が重要であると考え、そのための有効な手段の一つとして社外取締役向けの研修やトレーニングの活用に着目しました。研修やトレーニングの現状及び課題を把握し、社外取締役の研修やトレーニングの活用方法の整理やケーススタディ集の策定を行うため、令和4年度に委託調査として「社外取締役の研修やトレーニングに関する調査」を実施し、多くの企業へのインタビューや社外取締役からのアンケート回答を得て、今般その調査結果を発表しました。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は2009年の創設以来、役員研修を提供し、数多くのセミナーを開催してきました。役員研修の受講者は2,850人以上、セミナー開催は83回にのぼります。その過程でコーポレートガバナンス・コード(CGC)の導入、その後の改訂にも、縁の下から助言をしてきました。今般の委託調査においても、インタビューを受け、役員研修提供者の一つとして、経験や洞察に基づく観点や意見を提供しました。

知られざるCGC改革の歴史:2013年5月、自民党「日本経済再生本部」の「中間提言」

以下は、2013年5月25日の自民党の「日本経済再生本部」の「中間提言」からの抜粋です。「独立社外取締役の確実な導入」および「取締役の教育方針についての開示」は、現在内閣官房副長官木原誠二氏(当時、議員)と私(また、多数の方)の話に沿う内容でした。毎年の経済促進政策(2013年、アベノミクスの初年度は、「成長戦略」になった)を策定するため、通常は中間提言は内閣府に回されますので、このまま回されました。その時点で上記の二つの案も「株式持ち合いの解消」の政策も削除されました。

株主との対話を有効にするために、協同的エンゲージメントの規制緩和が必要

2021年に日本経済新聞に書いたこの記事で、#ESG や効率的な対話に拍車をかけるために、日本の「協同的エンゲージメント」に関するルールの改訂を提案いたしました。その前からもFTなどで書いていました。最近日本政府はこの件に関して動きそうだとうわわを耳にしますが、本当ならいいのですが、またまた蓋を開けると不必要な条件付き「限定的な範囲」にならなければいいなと思っています。

記事の内容の一部から引用します:

板垣 隆夫氏:「財務報告に係る内部統制監査基準等の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブコメ)に対する個人意見の提出

こちらの投稿は2023.1.20 板垣 隆夫氏によるものです。

別紙の通り、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブリック・コメント)に対する個人意見を金融庁に提出しました。
個人のかつかなり過激な意見ですので、意見集約でも全く無視されるかもしれませんが、率直な感想を述べたものです。
岡田譲治元日本監査役協会会長をはじめ内部統制部会のメンバーの半数以上はよく知っている友人・知人なので、あまり厳しい批判はやりたくなかったのですが、ここで何も言わないのはまずいと思い、かなり辛辣なコメントになってしまいました。
なお今回、監査懇話会としてはパブコメ意見の提出は見送りました。

日本における「対話」の理想と現実

私は9年間、日本の上場企業の社外取締役を務めてきたが、一度も株主から面談・対話を求められたことはなく、会社に対し、私じゃなくても株主から社外取締役と対話がしたいと求められたケースを見たことがない。先週、日本で最も有名な企業の役員に聞いたところ、そのような依頼は年に2件程度とのことでしたが、曖昧なお返事でしたので、実際にはもっと少ないのでは、と想像しています。

CGコードでは、『会社は、株主総会以外の場においても、株主との建設的な対話を行うべきである。株主との実際の対話(面談)の対応者については、株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、経営陣幹部、社外取締役を含む取締役または監査役が面談に臨むことを基本とすべきである。・・・そして、株主との建設的な対話を促進するための方針には、少なくとも以下のものが含まれるべきである:i)株主との対話全般について、建設的な対話が実現するように目配りを行う経営陣または取締役の指定、、、』

などと書かれていますが、このような方針がない企業が多いのではないでしょうか。

エンゲージメントの重要性が叫ばれ、機関投資家が投資先企業とどれだけ一生懸命に対話をしているかを主張するのとは対照的に、私自身の経験や他の方からの話との違いが印象的です。私の経験はたまたまなのでしょうか?他の企業や機関投資家の経験はどうなのでしょうか?大手機関投資家を対象に実際にどれくらい社外取締役と対話しているのか、データを取った方はいますか?最後に、もし私の経験が偶然ではなく、単純な効率性の問題だとすれば、日本における協同的エンゲージメントの(開示ルールによる)負担を軽減することの重要性が浮き彫りになっているのではないでしょうか。 どうでしょうか?