日本生産性本部: 「日本企業は他国と比べて人材に投資しない!」警鐘を鳴らす

日本生産性本部発表の「日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性~人材育成に関する日米企業ヒアリング調査およびアンケート調査報告:生産性レポートVol.17」をご紹介します。

「内閣府による経済財政報告2018年度版では、人材育成の重要性を指摘するとともに、社員教育や社会人の「学び直し」などによる人的資本投資が1%増加すると、労働生産性が0.6%上昇すると試算しています。しかし、日本の人材育成はかつてほど行われなくなってきており、日本の人材投資は2000年代に入って減少傾向にあります。」

また、人材育成投資額を対GDP比でみると、日本は主要国の中でも極めて低い水準にとどまっています。かつては日本企業が多額の投資をしていた人材育成は、費用面でみると後退しつつあることがわかります。

 

企業の人材育成投資(能力開発・組織開発・自己啓発支援)の実態と効果を探るアンケートにより明らかになったのは以下のとおりです。

【考察 1】
企業の能力開発・組織開発・自己啓発支援は、従業員の主観的生産性に「直接」影響を与えない

【考察 2】
従業員の主観的生産性に影響を与えるのは、「プロアクティブ行動」と「創造的思考プロセス」

「より良い仕事のやり方を、頻繁に取り入れようとする」、「会社がより効率的になるよう、新しい方法を導入する」、「問題の本質を理解するために、時間をかけて考える」、「新しいアイディアを創り出すため、多様な情報源を参考にする」など、「通常求められる範囲を超えた思考・行動」である(【参考】を参照)。つまり、日々の業務で必要とされる範囲を超えた「ExtraBehavior」や「Extra Thinking」ができているかどうかが、個人の主観的生産性に大きな影響を及ぼしていると考えられる。

【考察 3】
「プロアクティブ行動」と「創造的思考プロセス」に影響を与えるのは、「①自己効力感」、「②デジタルリテラシー」、「③ジョブ・エンゲージメント」、「④企業理念への共感」の 4 要因

【考察 4】
企業の能力開発・組織開発・自己啓発支援は、従業員の主観的生産性に「間接的」に影響を与える

能力開発・組織開発・自己啓発支援等の人材育成投資は、「プロアクティブ行動」と「創造的思考プロセス」を促進する4要因に影響を与えることによって、「間接的」に従業員の生産性に寄与していることが推測される。「プロアクティブ行動」と「創造的思考プロセス」などの「業務を超えた付加価値を生み出す思考・行動」を喚起するカギは、従業員の価値観や感情・態度など「ソフト面」のケアにあることが推測されます。従業員の生産性向上のためには、スキル・能力などの「ソフト面」の形成に、より重きを置いた人材育成投資の重要性が示唆されます。

【考察 5】
日系・外資系企業の人材育成投資の相違点は、従業員の価値観・態度形成など「ソフト面」への働きかけ

日系・外資系企業で顕著な差が確認されたのは「ダイバーシティ&インクルージョン」、「コーチング」、「キャリアカウンセリング」などスキル・能力以外の部分です。自己の思考・行動特性に気づきを得、将来のキャリアを専門家と検討していくことは社員の価値観や感情・態度形成に大きな影響を与えることが予想されます。外資系企業では階層が上がるほど個人に合わせた能力開発が行われており、個々人の状況・希望に合わせた人材育成プログラムが組まれ、個人と組織の価値観・方向性の擦り合わせが定期的に行われ、本人にとってやりがいのある仕事が積極的かつ優先的に提供されています。

【考察 6】
キャリア形成に対する自律的姿勢は、従業員の感情・態度・行動等に肯定的な差をもたらす

プロティアン・キャリア志向の高いグループの方が。ジョブ・エンゲージメント、職務満足、主観的生産性などの各種変数の平均値が高く、逆にストレスは有意に低いということがわかりました。

【考察 7】
次世代リーダー候補の自覚は、従業員の感情・態度・行動等に肯定的な差をもたらす

次世代リーダー候補の自覚については、通達の有無や実際に候補であるかよりも「本人の自覚」が重要であるといえる。言い方を変えれば、本人が次世代リーダー候補だと自覚するだけで、仕事に対するコミットメントや主観的な生産性に肯定的な影響を及ぼす可能性がある。この結果は今後のタレントマネジメントの考え方や施策にも重要な示唆になるのではないだろうか。マインド面への働き掛けを行い、いかに多くの社員に次世代リーダー候補の自覚を持ってもらうかが、社員の満足感や組織の生産性を左右することにつながるかもしれません。

【考察 8】
コロナ禍における組織的サポートは、従業員の感情・態度・行動に肯定的な差をもたらす

今回の調査からは、日本企業と米国企業を比較した場合、人材育成に関する根本的な違いがあることがわかります。人材育成・人材マネジメント一般に関する考え方の違いが日系の企業にはあり、重大な課題を提起しているということです。

スキル面の育成と共に、マインド面への働き掛けが社員の満足感や生産性向上のカギとなります。今後は、スキル面の育成とマインド面への働き掛けを「両輪で回す」ことが、人材投資の1つのテーマになるのではないでしょうか。そのような状況の中で、「プロティアンキャリア志向」や「次世代リーダー候補の自覚」は、マインド面への働き掛けの対象として有望な領域になることが推測されます。

 

日本生産性本部は生産性レポートVol17「日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性~人材育成に関する日米企業ヒアリング調査およびアンケート調査報告~」はこちら。

 

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