公益社団法人会社役員育成機構平野英治氏(「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」元経営委員長)を理事として迎える

2021年7月1日付で平野英治氏が公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)の理事に就任いたしました。

平野氏は、2021年3月まで、世界最大の国民年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の初代経営委員長を務めました。GPIFは、約178兆円を運用する世界最大の国民年金基金です。GPIF経営委員長時代に、投資先企業とGPIFの双方において、ESGの重要な柱の一つであるコーポレート・ガバナンスの重要性を強調しました。平野氏は、変化の加速、世界的な感染症大流行、企業の持続可能性に対する世界的な認識の高まりの中で、GPIFの経営委員会を率いて巨大なポートフォリオの運用を監督しました。

平野氏の経歴は、経済学、国際金融市場、投資、公共政策、コーポレート・ガバナンスなど多岐に亘っており、ハーバード大学で経済学の修士号を取得しています。GPIF、日本銀行理事、その他民間企業などにおける平野氏の豊富な経験は、BDTIにおいて存分に生かされます。現在は、メットライフ生命保険株式会社の取締役副会長、株式会社NTTデータおよび株式会社リケンの社外取締役を務めています。また、経済同友会の幹事、日本ユネスコ国内委員会の委員も務めています。

BDTIの代表理事であるニコラス・ベネシュは、平野氏のBDTI理事就任について、「実践的で高水準の役員研修プログラムを提供することで、取締役会の有効性を向上させるという我々の使命に平野氏が加わって下さったことは大変光栄なことで、非常にうれしく思っています。」と語り、同じく代表理事の大杉謙一(中央大学法科大学院教授)は、「平野氏の幅広い知識と経験は、今後直面する課題に対応できる社内外取締役を育成するBDTIのプログラム企画に大いに役に立ちます。」と語りました。

平野氏は、「サステナブル投資の成功は、取締役会とコーポレート・ガバナンスの質に大きく依存しており、これらを実質的に改善するための最良の方法は、新しい知識、『ベストプラクティス』の共有、そして深堀りする議論であります。役員研修にはこれらの要素すべてが含まれています。従って、役員研修やガバナンス研修は、社会にとって必要不可欠なものなのです。ESGやインパクト投資の手法を導入しているものの、持続可能性にどのようにもっと貢献すればよいのかわからないという運用会社には、この現実を精力的に伝えていく必要があるでしょう。私は、より多くの国内機関投資家がBDTIの活動を支援してくれることを期待しています」と語っています。

女性登用比率の政府目標、「すべて達成」は1割のみ

朝日新聞が全国主要100社を対象にしたアンケートで、政府が掲げる民間企業の役職別の女性比率目標について達成できるかを聞いたところ、「すべての目標を達成できそうだ」は10社にとどまった。女性登用の取り組みは進む一方、幹部候補となる女性が少ないなどの理由を挙げて、目標に届かないとする回答が多かった。

昨年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」の女性の登用・採用に関する成果目標一覧では2025年に係長級が30%、課長級が18%、部長級が12%を女性にする目標が掲げられた。東証1部上場企業の役員については22年に12%。5月24日~6月4日に行った調査で、最も多かったのは「一部は達成できそうだ」で39社。「どの目標も達成は難しい」も26社にのぼった。

 

女性の管理職登用を進める上での課題について複数回答で聞いた質問では、「男性の意識改革が進んでいない」が32社で最も多かった。中でも「男性はリーダー向き」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の存在を指摘する企業が目立った。

無料ウェビナー『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』

「車の両輪」と表されるCGCとSCとが実効的に回るよう、機関投資家は必要に応じてエンゲージメントを行うべきである、というのが、日本のガバナンス改革の大黒柱のひとつです。 イギリスでは2009年に、機関投資家による「協働エンゲージメント」は法執行の対象にならないことが当局によって明確にされ、2010年に制定されたSCでは協働エンゲージメントが積極的に促進され、これまで活発に実施されてきました。

対照的に日本では、SC制定と同年の2014年、金融庁の発表した「日本版SCの策定を踏まえた法的論点に係る考え方の整理」においても「重要提案行為」の意味が明確化に至らず、2017年のSC改訂では「協働エンゲージメント」への言及はなされたものの「有益な場合もあり得る」とするにとどまり、「推奨する」とはされない現実が、協働エンゲージメントの障害となってきたと言えます。その結果日本では協働エンゲージメントは法的リスクを伴うと考える機関投資家が多く、活発化していません。 もともとイギリスのCGCとSCをモデルとしたはずの日本で、どうしてこれほど違う状況が生まれたでしょうか。両国のアプローチはどのように違うのでしょうか。どうすれば日本でも協働エンゲージメントできるのでしょうか。本ウェビナーではイギリス及び日本の法律専門家、並びに日本の名門機関投資家エンゲージメントグループ(IICEF)のリーダーを招いて、これらのトピックをご説明いただきます。

ウェビナー『投資家が求めるガバナンスとエンゲージメントとは?』動画

2021年5月25日、無料ウェビナー:『投資家が求めるガバナンスとエンゲージメントとは?』と題したウェビナーを開催いたしました。
コーポレート・ガバナンス強化のための施策として、金融庁がコーポレートガバナンス・コードを策定してから早や6年、2回の改訂が行われました。コードコンプライの割合が非常に高い日本企業ですが、投資家の目には、コーポレート・ガバナンスの改善はどのように映っているのでしょうか。
一部分ではありますがご紹介いたします。
お問い合わせ等ありましたら下記までお願いいたします。
Email: info@bdti.or.jp

IBVの調査「ジェンダー・インクルージョン施策の危機 – 善意は必要だが十分ではない」

IBM Institute for Business Value(IBV)の新たな調査「ジェンダー・インクルージョン施策の危機 – 善意は必要だが十分ではない(英文:Women, leadership, and missed opportunities)」によると、調査対象となった企業の経営層、管理職、プロフェッショナルは、新型コロナウイルスの感染拡大によって女性が職場で直面している課題に関する認識が高まっているにもかかわらず、世界中の企業の70パーセントはいまだにジェンダー・エクイティー(男女間における不平等解消を目指す取り組み)を最優先事項としていないことが判明しました。

「ジェンダー・インクルージョン施策の危機 – 善意は必要だが十分ではない」レポートはこちら。

調査対象の女性のうち、2021年にシニア・バイスプレジデント、バイスプレジデント、ディレクターおよびマネージャーの役職に就いている人は、2019年より少数でした。

IBMのグローバル・マーケット担当シニア・バイスプレジデントで、IBM Women’s Communityのシニア・エグゼクティブ・スポンサーであるブリジット・バン・クラリンゲン(Bridget van Kralingen)は、次のように述べています。「このデータは、女性管理職の多くが、今まさに困難に直面していることを示しています。これらの問題への取り組みをこの数年よりもさらに深化させないと、進展どころかさらに後戻りする危険性すらあります。私たちは、今こそ創造的な解決策を見出し、すべての女性がそのポテンシャルを最大限に発揮できるような、有意義で継続的な変化を起こすために一層努力する必要があります」

今回の調査によれば、2019年と比較して、より多くの組織が、ジェンダー・フリ

日本のコーポレート・ガバナンス改革:道半ばを過ぎて・・

「この6年間、日本ではコーポレート・ガバナンス改革が次々と実施され、企業や国内機関投資家、さらには社会の考え方を大きく変えてきました。しかし、日本はまだ改革と思考の「トンネル」の半分しか進んでいないため、投資家やその他のステークホルダーにとっての価値創造はまだこれからです。本ホワイトペーパーでは、日本のガバナンス「革命」をデータに基づいて検証し、次のようなポイントを挙げています。

・健全ななコーポレート・ガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードという形で、具体的なコーポレート・ガバナンス改革
が日本で行われています。
・政府の政策と並行して、投資家グループやガバナンス推進派の企業リーダーによる支援ー活動により、今後もこのような前向きな
改革が継続されるであろう。
・日本企業は、大変革が起きたことを「理解」しており、大多数の企業が社外取締役を採用し、指名委員会や報酬委員会を設置し、
買収防衛策を縮小しています。
・日本の取締役会は、インセンティブベースの報酬、より高いレベルの多様性、およびリターンと資本効率への注力というグローバ
ルなトレンドを受け入れ始めています。
・また、国内外の機関投資家が積極的に議決権行使を行うようになったことで、株式の持ち合いやその他の「敵対的保有」が解消さ
れつつあり、市場は全体的に魅力的になっています。
・M&A(合併・買収)やアクティビズムが増加し、資本効率の向上、あるいは経営者の意識改革が進んでいます。
・以上のような多くの変化の結果、日本のROA(総資産利益率)の値は全体的に高い傾向にあります。

このように大きな進歩を遂げている一方で、株主は経営陣や取締役会と緊密に協力して、ガバナンスと価値向上のグローバルスタンダードに追いついていくことが求められています。このような建設的なエンゲージメントやアクティビズムが続けば、新たな期待に適応した企業には、投資や成長のための魅力的な機会が数多く生まれるでしょう。

パブリックコメントから見るコーポレートガバナンス・コード改定案

2021年4月7日に金融庁よりコーポレートガバナンス・コード改定案が公表され、パブリックコメントの受付が開始された。今回の改定案では「独立社外取締役」と「サステナビリティ」が重要テーマになっている。

日本CFA協会が集約した意見によると、今回の改訂点において取締役の機能強化(プライム市場上場企業に対し社外取締役 1/3 以上、スキルマトリクスの開示など)については賛成意見が多かったが、その一方不十分であるという意見、形式的になるという懸念も見られました。またサステナビリティの課題や、TCFD の開示の追加について圧倒的に多くの回答者が「良いと思う」を選択したが、一部やはり“不十分”という意見が見られ、特に日本以外からの回答では不十分であるという意見は半数近くに達した。本改訂の修正・追加部分は概ね市場関係者に好評価とはいえるものの、これで十分であるのか、プライム市場上場企業だけで良いのかについては、引き続き議論が必要である。

以下、日本 CFA 協会「コーポレートガバナンスコード、改定案へのコメント」より抜粋。

「ポストコロナ時代のリスク管理−法改正を踏まえたD&O保険の見直し」動画

2021年4月16日、「ポストコロナ時代のリスク管理−法改正を踏まえたD&O保険の見直し」と題したウェビナーを開催いたしました。

新型コロナウィルスの蔓延で保険事故が増え、企業のリスクマップも大きく変化しました。リスクに備えるため、適切な保険の付保が今まで以上に重要になっています。さらに、会社法令の改正により、D&O保険の購入や役員との補償契約締結について、取締役会での議論、事業報告での開示を適切なものとするよう、十分配慮する必要が出てきました。

特に、D&O保険の重要性は、株主代表訴訟において巨額の損害賠償を命じる裁判例が散見され、金融庁等から課せられる課徴金も高額のものが目立つ昨今、企業の大きな関心事となっています。「攻めの経営」にはリスクヘッジが必要であり、取締役の果断な意思決定を萎縮させないための仕組みは、成長を目指す企業にとって不可欠です。

しかし、D&O保険について、上限額や免責事項が合理的なものであるか、取締役会で討議する日本企業は、これまで決して多くなかったのではないでしょうか。それは保険商品の構造特徴、業界のリスク、他社とのベンチマークなど基礎知識が不十分であったからかもしれません。今後、事業報告による開示も見据えて、取締役はいかなる合理性の尺度を持って討議・決議をすれば良いのか、専門家からの解説、経験者からのアドバイスを伺う機会を用意しました。D&O保険の購入担当者様はもちろんのこと、ガバナンス委員会や取締役会事務局の方にも、さらにはD&O保険の中身を知らない、という取締役にこそ、見ていただきたいウェビナーです。

ウェビナー『公正なM&A – ベストプラクティスは実践されているか』動画

2021年3月26日、「公正なM&A – ベストプラクティスは実践されているか」と題したウェビナーを開催いたしました。

支配株主による従属会社の買収には、構造的な利益相反、情報の非対称性といった問題が存在し、一般株主の利益を確保するため、ガバナンス上の手続的工夫を履践する必要性が認識されています。

指針を作成した研究会委員である研究者、クロスボーダーM&Aを専門とする弁護士を講師としてお招きし、長年フィナンシャルアドバイザーをしてきたBDTI代表理事ベネシュを交えてパネルディスカッションを行いました。日本、グローバル、取引当事者、アドバイザー、投資家など、様々な視点を取り入れ、公正なM&Aについて考えたい大勢の方にご参加いただきありがとうございました。

「女性社内役員調査」~ 研修の必要性

2020年3月期決算の上場企業(2240社)の役員数は2万5273人で、そのうち女性役員は1530人で前年から258人増えたことが、東京商工リサーチの調査で発表された。役員総数に占める女性の比率は6・0%と前年比1・1ポイント上昇。3%台だった17年以降、女性の登用が少しずつ着実に進んでいる状況を裏付けた。

意思決定に女性の視点を取り込みたいと考える企業も増えてきた。女性をリーダーとして育成し昇格させている企業がこれから増えてくることを期待したい。

日本経済新聞社と企業統治助言会社プロネッド(東京・港)が共同で実施した「女性社内役員調査」によると、生え抜きの女性役員はこの2年で1.6倍に増えた。多様性のロールモデルになり始めた彼女たちは昇進をどう捉え、登用に何が壁となると考えているのか。女性社内役員を対象にした意識調査から本音を拾った。

調査は今年1月初旬~3月初旬、東京証券取引所1部上場の売上高5000億円以上の主要企業320社を対象に実施。企業向けの質問票と同時に、社内役員(取締役、執行役、執行役員、監査役)の女性にも個別にアンケートを送り、86人から回答を得た。

調査から見えたのは、経験や実績に裏打ちされた自信だ。成長に役立った経験は「管理職への昇格」が最も多く、28%を占めた。「他部門への異動」(25%)、「新規事業立ち上げ」(14%)が続いた。プロネッドの酒井功社長は「責任と権限のあるポストに就くことの重みを本人たちは実感している。会社も男性と同じように女性に機会を与えることが重要」と指摘する。

役員に就けた理由は「経験」が30%で最多。2番目に「実績」(23%)、3番目に「女性だから」(16%)が挙がった。一部の企業では今も女性に専門的仕事を任せたり、同一部署に長くとどめたりする人事を行う例が少なくない。幅広い経験を若い頃から積ませることが重要になる。