KPMGジャパン コーポレートガバナンス センター・オブ・エクセレンスでは、2014年から日本企業の統合報告の内容に関する調査を継続して実施しています。前回の調査から有価証券報告書の記述情報も調査対象に加えており、今回は前回との比較も行っています。
「8つの領域における調査結果の主なポイント」
1. マテリアリティ
マテリアルな課題を特定する企業は年々増加していますが、未だ、多くは統合報告で求められる価値創造に関わる視点から検討された内容にはなっていません。それらを特定した根拠や、特定のプロセスに取締役会が適切に関与している旨についても説明されていないのが実態です。特定の根拠や、そのプロセスにおける取締役会の役割を説明することで、より企業価値との関わりや組織内での議論の深度が伝わりやすくなるでしょう。
2. リスクと機会
統合報告書でリスクや機会を説明する企業は70%と前年から増加し、有価証券報告書では、すべての企業がリスクを説明しています。しかし、列挙した個々のリスクや機会について、顕在化の可能性、影響、対応策などが必ずしも十分には説明されていません。リスクと機会が影響を及ぼす事象に関する具体的な対応を検討し、それに裏打ちされた実効的なリスクマネジメントの導入が前提ではありますが、取組みの実効性を伝えるためには、個々のリスクや機会に関するより踏み込んだ説明が必要でしょう。
3. 戦略と資源配分
長期戦略と中期経営計画を併記する企業が増えています。長期的な価値創造への過程として中期戦略を位置付け、さらには全体から各事業へと繋がる一貫性のある戦略の説明は有用です。これにより、説得力が増し、企業価値の適切な評価に繋がるものと考えます。また、戦略目標をブレイクダウンし、価値創造ドライバーと結び付けて説明している企業はまだ少数にとどまっています。戦略を達成する道筋をより伝わりやすくするためにも、より結合性のある説明が求められてくるでしょう。