投資家と上場会社との対話が対話にならないわけ

森本 紀行:ヤフージャパンニュース「投資家と上場会社との対話が対話にならないわけ」

https://news.yahoo.co.jp/byline/morimotonoriyuki/20210916-00258076

対話ではなく単なる質疑応答

「金融庁のガイドラインを一読して、対話という言葉を想起するのは、かなり難しいことです。これは、責任ある投資家として、その責任を果たすために、上場企業の経営者に問い質すべきことを列挙したものであって、上場会社の経営者や取締役には、その質問に誠意をもって答えることが期待されているのだとすれば、対話というよりも、質疑応答のガイドラインです。

しかも、質問は、基本的に、「何々となっているか」という形式になっていて、それは「何々すべきである」という「コーポレートガバナンス・コード」の原則に対応しているのですから、実質的には、質問を通じて、原則の実施状況を確認する主旨になっています。これでは、責任ある投資家の責任とは、上場会社を監視し、持続的成長へ向けて努力するように監督する責任と解するほかありません。

それにもかかわらず、敢えて投資家と上場会社との対話と呼ばれるのは、おそらくは、両者間の対等性を強調するためです。なぜなら、投資家による上場会社の監視監督という表現は、投資家の地位の優越を明瞭に示していますが、株式の上場制度の本来の原理原則からすれば、上場会社と投資家とは、開示制度による情報の対称性を介して、対等の地位にあることが前提になっているからです。

対等なもの同士の対話とするためには、両コードにおいて、責任ある投資家に対しては、投資先企業の選択基準と売却基準、投資先企業との対話に関する基本姿勢などについて、行動原則の策定、および原則が確実に履行されるための仕組み作りを要求し、上場会社に対しては、投資家が原則通りに行動していることについて、監視監督することを要求すべきです。

しかし、実際には、そうなっていないのですから、投資家と上場会社の対話とはいっても、対話という用語は文飾であって、実態は、投資家による質疑と、上場会社による応答です。」

 

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2021 年 ICGN エクセレンス・イン・コーポレートガバナンス・プログラム

お薦めなプログラムです。登録する際、BDTIのベネシュ代表理事の紹介で申し込んでいる旨を記載してください。併せてinfo@bdti.or.jp に申し込んだ旨お知らせ下さい。よろしくお願いいたします。( BDTIはスポンサーです。)

東京証券取引所(TSE)は最近、日本の上場企業による英語の開示を強化するため、海外の機関投資家に開示に関する調査への参加を呼びかけました。 調査の結果、英語による開示の要望が強く、80%の回答者が決算報告の英語での開示が必要であると回答し、74%がIR資料についても同様と回答しています。

東証は2022年4月に新しい市場構造への移行を計画しており、改訂されたコーポレートガバナンス・コードには、新しいプライム市場の上場企業は「開示文書で必要な情報を英語で開示、提供する必要がある」という原則が含まれているため、これらの結果はかなりタイムリーです。

プライム市場に上場する企業は、グローバル投資家との建設的な対話を通じて、中長期的な企業価値を向上させることが期待されています。調査では、多くの海外機関投資家が、英語の開示が不十分であることが上場企業との対話や投資決定に影響を与えていると指摘しました。英語の開示がさらに進展することで、建設的な対話が強化され、日本企業への投資が拡大することが期待されます。

東証をパートナーとしてお迎えし、ICGN”ICGN’s Excellence in Corporate Governance Programme“を開催します。このコースでは、グローバルに分散投資するポートフォリオを有する機関投資家が、企業のコーポレートガバナンスの実践と長期的な価値を生み出すためのアプローチをどのように分析するかについて認識を深めます。 カリキュラムは、日本のコーポレートガバナンス・コードの最近の改訂と JPX、特に新しいプライム市場に上場する企業に期待される基準に焦点を当てます。

女性管理職の数値目標が達成されない日本の現状


日本の生産年齢人口は今後減少の一途を辿り、近い将来、企業は人材不足に直面し、人材の奪い合いが起こることが予想できます。そのため日本の企業では、女性にいかに活躍してもらえるかが人材確保における1つのポイントになります。

しかしながら世界経済フォーラムの2021年「The Global Gender Gap Report 2021」によると、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数では日本は156か国中120位でした。活躍しづらい社会で、働きたいという意思を持つことは難しく、働くことを諦めてしまう女性が多くなってしまっているのが現状です。女性が活躍できる環境を創っていくことが、企業における今後の人材確保のために必要になります。

女性活躍推法は女性管理職の数値目標の設定とその達成に向けた行動を求めています。最近は女性役員や女性リーダー育成プログラムも多く目にします。大手派遣会社は70万もする合宿を開催しています。研修の多くは「自己理解」、「コミュニケーション力」や「プレゼンス力」がメインです。もちろん自己認識やコミュニケーション力は大事です。でもそれは会社が行うべきではないですか?歴史的には日本企業は男性社員に対してはこのようなスキルを新入社員の時点から内製プログラムおよびOJT (現場でのトレーニング)によって上手に育てられてきました。

逆に日本企業が下手だったのが、具体的な内容の経営・管理手法についての知識をオフサイト研修によって育成することでした。これは男女を問わず言えることですが、特に育成されなかったのは女性でした。

女性の場合には多くの会社自身が長期的なキャリアを視野に育成をしてこなかったため、管理職・幹部・役員候補となる女性が不足しています。

ウェビナー『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』動画

2021年8月2日、『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』と題したウェビナーを開催いたしました。

「車の両輪」と表されるCGCとSCとが実効的に回るよう、機関投資家は必要に応じてエンゲージメントを行うべきである、というのが、日本のガバナンス改革の大黒柱のひとつです。

日本では協働エンゲージメントは法的リスクを伴うと考える機関投資家が多く、活発化していません。 もともとイギリスのCGCとSCをモデルとしたはずの日本で、どうしてこれほど違う状況が生まれたでしょうか。両国のアプローチはどのように違うのでしょうか。どうすれば日本でも協働エンゲージメントできるのでしょうか。本ウェビナーではイギリス及び日本の法律専門家、並びに日本の名門機関投資家エンゲージメントグループ(IICEF)のリーダーを招いて、これらのトピックをご説明いただきました。

日経新聞:英当局「取締役の4割以上を女性に」上場企業に要求へ

『英国の金融当局である金融行為監督機構(FCA)は28日、上場企業の経営にさらなる多様性確保を促す新たな指針案を公表した。取締役の40%以上を女性としたり、少なくとも1人は白人以外としたりすることを求める。企業統治におけるダイバーシティー(人材の多様性)充実を上場ルールとして強力に推進する。

10月中旬まで産業界や市場関係者の意見を募り、年内に制定する。ロンドン証券取引所の主要市場へ上場するすべての企業に、2022年1月以降に始まる会計年度から適用をめざす。

新指針案はジェンダーや人種などの面で多様な取締役会づくりを求める。まずメンバーの最低40%を女性(自認する人も含む)としなければならない。会長、最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、上級独立取締役のうち少なくとも1人は女性とする要件も課す。

取締役のうち1人以上は「非白人のエスニック・マイノリティー(人種的少数派)」にすることも求めるとした。

いずれも強制はしないが、従わないなら未達の理由を対外的に説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の運用とする。ロンドン証取のプレミアムとスタンダード市場の全上場企業を対象にする。取締役会と経営層の多様ぶりが外部から分かるよう、関連する人数構成の情報を年次報告書で開示することも求める。

日本生産性本部: 「日本企業は他国と比べて人材に投資しない!」警鐘を鳴らす

日本生産性本部発表の「日本企業の人材育成投資の実態と今後の方向性~人材育成に関する日米企業ヒアリング調査およびアンケート調査報告:生産性レポートVol.17」をご紹介します。

内閣府による経済財政報告2018年度版では、人材育成の重要性を指摘するとともに、社員教育や社会人の「学び直し」などによる人的資本投資が1%増加すると、労働生産性が0.6%上昇すると試算しています。しかし、日本の人材育成はかつてほど行われなくなってきており、日本の人材投資は2000年代に入って減少傾向にあります。

また、人材育成投資額を対GDP比でみると、日本は主要国の中でも極めて低い水準にとどまっています。

公益社団法人会社役員育成機構平野英治氏(「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」元経営委員長)を理事として迎える

2021年7月1日付で平野英治氏が公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)の理事に就任いたしました。

平野氏は、2021年3月まで、世界最大の国民年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の初代経営委員長を務めました。GPIFは、約178兆円を運用する世界最大の国民年金基金です。GPIF経営委員長時代に、投資先企業とGPIFの双方において、ESGの重要な柱の一つであるコーポレート・ガバナンスの重要性を強調しました。平野氏は、変化の加速、世界的な感染症大流行、企業の持続可能性に対する世界的な認識の高まりの中で、GPIFの経営委員会を率いて巨大なポートフォリオの運用を監督しました。

平野氏の経歴は、経済学、国際金融市場、投資、公共政策、コーポレート・ガバナンスなど多岐に亘っており、ハーバード大学で経済学の修士号を取得しています。GPIF、日本銀行理事、その他民間企業などにおける平野氏の豊富な経験は、BDTIにおいて存分に生かされます。現在は、メットライフ生命保険株式会社の取締役副会長、株式会社NTTデータおよび株式会社リケンの社外取締役を務めています。また、経済同友会の幹事、日本ユネスコ国内委員会の委員も務めています。

BDTIの代表理事であるニコラス・ベネシュは、平野氏のBDTI理事就任について、「実践的で高水準の役員研修プログラムを提供することで、取締役会の有効性を向上させるという我々の使命に平野氏が加わって下さったことは大変光栄なことで、非常にうれしく思っています。」と語り、同じく代表理事の大杉謙一(中央大学法科大学院教授)は、「平野氏の幅広い知識と経験は、今後直面する課題に対応できる社内外取締役を育成するBDTIのプログラム企画に大いに役に立ちます。」と語りました。

平野氏は、「サステナブル投資の成功は、取締役会とコーポレート・ガバナンスの質に大きく依存しており、これらを実質的に改善するための最良の方法は、新しい知識、『ベストプラクティス』の共有、そして深堀りする議論であります。役員研修にはこれらの要素すべてが含まれています。従って、役員研修やガバナンス研修は、社会にとって必要不可欠なものなのです。ESGやインパクト投資の手法を導入しているものの、持続可能性にどのようにもっと貢献すればよいのかわからないという運用会社には、この現実を精力的に伝えていく必要があるでしょう。私は、より多くの国内機関投資家がBDTIの活動を支援してくれることを期待しています」と語っています。

女性登用比率の政府目標、「すべて達成」は1割のみ

朝日新聞が全国主要100社を対象にしたアンケートで、政府が掲げる民間企業の役職別の女性比率目標について達成できるかを聞いたところ、「すべての目標を達成できそうだ」は10社にとどまった。女性登用の取り組みは進む一方、幹部候補となる女性が少ないなどの理由を挙げて、目標に届かないとする回答が多かった。

昨年12月に閣議決定された「第5次男女共同参画基本計画」の女性の登用・採用に関する成果目標一覧では2025年に係長級が30%、課長級が18%、部長級が12%を女性にする目標が掲げられた。東証1部上場企業の役員については22年に12%。5月24日~6月4日に行った調査で、最も多かったのは「一部は達成できそうだ」で39社。「どの目標も達成は難しい」も26社にのぼった。

 

女性の管理職登用を進める上での課題について複数回答で聞いた質問では、「男性の意識改革が進んでいない」が32社で最も多かった。中でも「男性はリーダー向き」といった無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の存在を指摘する企業が目立った。

無料ウェビナー『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』

「車の両輪」と表されるCGCとSCとが実効的に回るよう、機関投資家は必要に応じてエンゲージメントを行うべきである、というのが、日本のガバナンス改革の大黒柱のひとつです。 イギリスでは2009年に、機関投資家による「協働エンゲージメント」は法執行の対象にならないことが当局によって明確にされ、2010年に制定されたSCでは協働エンゲージメントが積極的に促進され、これまで活発に実施されてきました。

対照的に日本では、SC制定と同年の2014年、金融庁の発表した「日本版SCの策定を踏まえた法的論点に係る考え方の整理」においても「重要提案行為」の意味が明確化に至らず、2017年のSC改訂では「協働エンゲージメント」への言及はなされたものの「有益な場合もあり得る」とするにとどまり、「推奨する」とはされない現実が、協働エンゲージメントの障害となってきたと言えます。その結果日本では協働エンゲージメントは法的リスクを伴うと考える機関投資家が多く、活発化していません。 もともとイギリスのCGCとSCをモデルとしたはずの日本で、どうしてこれほど違う状況が生まれたでしょうか。両国のアプローチはどのように違うのでしょうか。どうすれば日本でも協働エンゲージメントできるのでしょうか。本ウェビナーではイギリス及び日本の法律専門家、並びに日本の名門機関投資家エンゲージメントグループ(IICEF)のリーダーを招いて、これらのトピックをご説明いただきます。