「アセットオーナープリンシプル」をきっかけに、本格的な企業年金改革を

応援しますが、「アセットオーナープリンシプル」は弱いので少しがっかりしています。「SCの受け入れ表明をしてください」というお願い一つは主な趣旨です。しかし、その要求でさえ、弱いです: 「スチュワードシップ責任を果たすに当たっては、自らの規模や能力等を踏まえつつ、日本版スチュワードシップ・コードの受入れ表明をした上でその趣旨に則った対応を行うことを検討すべきである。」少なくとも年金の場合、より強い文言がほしかったです。(私が2016年から提案しているように。以下、ご参照ください。)

ましてや、プリンシプルには拘束性がないのに、SCをなどを受け入れをする必要がないのに、アセットオーナーはファンド・マネジャーの適切な議決権行使を監視することが、受託者責任に含まれる責務の一つであることについては言及も明確化もされていない。つまり、米国のERISAにおける「エイボン・レター・ルール(1988年)」は、まだ日本には上陸していないのである。

「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム 」に追加すべきもの

ニコラス ベネシュ
公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)代表理事
(以下の内容は個人としての意見です。)

(次期内閣総理大臣候補 – 順不同)
内閣官房長官林芳正氏、外務大臣上川陽子氏、経済産業大臣齋藤健氏、デジタル大臣河野太郎氏、経済安全保障担当大臣高市早苗氏、幹事長茂木敏充氏、自由民主党衆議院議員石破茂氏、自由民主党衆議院議員小泉進次郎氏、自由民主党衆議院議員小林鷹之氏、自由民主党衆議院議員野田聖子氏、自由民主党衆議院議員加藤勝信氏

CC: 内閣総理大臣岸田文雄氏、自由民主党政務調査会長代理柴山昌彦氏、自由民主党厚生労働大臣政務官塩崎彰久氏、自由民主党幹事長代理木原誠二氏、自由民主党中西健治氏

日本のコーポレートガバナンス・コード(CGC)と投資家のスチュワードシップは車の「両輪」のように機能しなければならない。かねてからそう提唱していた[1]私が、2014年にCGC制定を自民党に提案する機会を得て、最も重要なことだと主張したのは「ガバナンス体制とその実質を確認できる情報開示を促す」ことだった。

『真に独立し、かつ資質を有する独立取締役が過半数を占める取締役会の方がガバナンスと監督が効果的に機能する可能性が高い』。このことは2014年当時から、世界中の多くの国で認められていたことだった。各社の情報開示とスチュワードシップが機能するようにさえなれば、先進国たる日本もその後5年程度で自ずと同様のスタンスをとるだろうと当時の私は考えていた。

しかしながら、10年経った今も、この二つの課題について真剣な議論が行われていない。

投資家が日本の株式市場に注目している今だからこそ、私は、この核心的な問題に向き合い、以下のようなステップを踏んで変革のスピードを上げるべきだと考える。

METIは「企業情報開示のあり方に関する懇談会」を開催します

METIは、青山学院大学 名誉教授北川哲雄 氏が座長に務める「企業情報開示のあり方に関する懇談会」を開催します。大変タイムリー且つ重要なテーマである「企業価値の向上に資する情報開示を行っていくためには、どのような開示体系に基づき、どのような情報開示を行うことが望ましいのか」について議論を行うのが目的であります。

ファミマ事件から、特別委員会の社外取締役の役割

ファミリーマート株式公開買付にかかる株式買取価格決定申立事件
東京地裁決定2023年3月23日

この事件は、親会社である伊藤忠が子会社ファミマを完全子会社とするため、まず公開買付し、その後株式併合により少数株主をスクイーズアウトするスキームをとったところ、スクイーズアウトの株主総会議案に反対したオアシスを含む少数株主らから、ファミマに対し公正な価格での買取が要求され、協議が整わず、双方から裁判所に対し、価格決定の申立てがなされた事件である。

東京地裁の決定文は長文であるが、裁判所の判断の枠組み、一般に公正と認められる手続、公正な価格の算定を記載する3箇所に分けることができる。そして、一般に公正と認められる手続の中では、特に特別委員会が役割を果たしたか、が真っ先に取り上げられている。社外取締役が特別委員会の委員となった場合、何に注意すべきか、参考となる点を多く含むので、ここでは、この箇所に限って、キーポイントを紹介する。

東京地裁決定はファミマの特別委員会に非常に厳しく、その役割を十分に果たしたものとは評価することができない、とした。ただし、決定について双方とも抗告中であり、東京高裁において地裁とは異なる判断がなされる可能性はある。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか? 2022年(1)〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。今年も昨年に続きこの1年間でどれくらい上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みが進展したか見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月、2021年12月および2022年12月の過去3か年におけるMetricalユニバース約1,700社の各評価項目の推移を示しています。Metricalは評価項目をボードプラクティスとキー・アクションに分けて分析しています。今回はボードプラクティス編です。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的なコーポレートガバナンスの評価を示すものです。2022年12月のスコア分布は紫色の棒で示されています。の分布は2020年12月、2021年12月、2022年12月と年を追うごとに棒の分布が右方向(スコアの高い方)に移動していることがわかります。2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂と2022年の東証の市場再編を受けて、上場会社がそれらに対応するために、コーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身について評価項目ごとに見てみましょう。

メトリカル:創業者ファミリー企業と他の会社との経営戦略の違いの背景にあるのは持株

10月14日の日経新聞に「「逆張り創業者ファミリー企業株」の磁力:危機下も攻め、コーポレートガバナンスが課題」との記事が掲載されていました。当該記事の論点について、考えてみたいと思います。

10月14日の日経新聞の記事の概略は次のように報じています。
危機下でもひるまず「逆張り戦略」に動いた創業者ファミリー企業が投資家を引き付けている。経営の意思決定が速く、COVID-19パンデミックで出店拡大などを進めた企業は業績回復の爆発力も大きく、株式市場で異彩を放っている。長年の課題だったガバナンスの弱さにもメスが入り、先手を打つ企業にマネーが集まる。

10月14日の東京市場で日経平均株価は大幅反発し、前日比853円高で終えた。昨年末比でみれば6%安。米利上げ継続や景気後退への懸念は強く、神経質な相場環境が続く。そんななかで株価が右肩上がりで推移し、上昇率が2倍以上の株価上昇を達成した銘柄が貸会議室大手のティーケーピーだ。コロナ禍で対面イベントの減った2021年2月期は上場以来初の最終赤字に転落。人件費や地代家賃など固定費を減らしつつ、裏では攻めの手を緩めなかった。割安になった優良物件などの仕入れを積極化した。こうした「逆張り経営戦略」がいま結実している。行動制限の解除で需要が戻り、2022年3~8月期は同期間として3年ぶりに営業黒字を回復。同社の河野貴輝社長は10月13日の決算説明会で「スペースを貸すだけでなく(配信サービスなど)コンテンツも提供して付加価値を高める」と意気込む。

中古車販売のネクステージも果敢にリスクを取った企業の一つだ。コロナ初期には在庫増に苦しんだものの出店はやめなかった。買い取りや整備、車検サービスを一括で提供する大型の「総合店」は2022年8月末で51店舗と、2019年11月末から2.4倍に拡大。優良顧客の取り込みで利益率が向上した。

両社に共通するのは、主要株主が経営者やその一族で構成される創業者ファミリー企業である点だ。危機下でも攻める企業を発掘する投資家が注目している。日興アセットマネジメントの「ジパング・オーナー企業株式ファンド」を運用する北原淳平シニアファンドマネージャーは「創業者ファミリー企業は意思決定の速さと大胆な経営戦略が強み」と指摘。「経営者と株主の視点が一体で、危機下でも利害関係者を納得させやすい」と分析する。

論点1:「創業者ファミリー企業は意思決定の速さと大胆な経営戦略が強みで、経営者と株主の視点が一体で、危機下でも利害関係者を納得させやすい」

創業者は元々リスクをとって事業を拡大させて上場会社になった経緯があります。創業者であればリスクテイクが事業拡大のチャンスであることをよく知っています。常識にとらわれない発想と戦略もとても必要な要素であると考えていても不思議はありません。また、創業者およびその家族は自社の株式を相当割合で保有しているため、自身が大株主であることから他の株主と同じ目線で経営しているということができ、他の株主とsame boatで企業価値の最大化という同じ目標を共有しやすい立場にあります。キーは持株にあると思っています。

Why Leaders Must Adapt To Evolving ESG Demands

By Helle Bank Jorgensen, CEO of Competent Boards

Earlier this year, I took part in a fascinating session with the World Economic Forum as part of the New Champion Dialogues 2022 series. Hosted by Olivier Schwab, Managing Director at WEF, I was joined by Anushka Bogdanov, Chair and founder of Risk Insights and Jason Jay, Senior Director at MIT Sloan School of Management. 

The discussion focused on the rapidly changing picture of environmental, social and governance (ESG) requirements for companies as they come under increasing pressure from stock markets to provide transparent, measurable and comparable data on their activities. 

And let’s not forget pressure from employees, suppliers, customers and other societal stakeholders. ESG risks and opportunities are a fast-moving field, with new regulations and expectations coming thick and fast. 

It starts and ends with the board of directors

For companies that want to effectively adapt to these evolving ESG requirements, including climate change, that process must start and end with the board of directors. ESG and climate change are areas where board directors cannot provide oversight if they don’t have the insight.

Unfortunately, today’s boards are not as ready as I believe they should be if we want future-fit organizations.

メトリカル:5月の株式相場はインフレ指標の上昇鈍化を好感した米国株式相場の上昇を受けて月前半の値下がりを取り戻して取引を終えた。CG Top20株価は弱気相場の中でTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対してアンダーパフォーマンス。

月前半は米国金利上昇懸念から弱含んだ米国市場を受けて株式相場は低迷した。月末は米国インフレ指標のピークアウト期待から大きく上昇した米国株式を受けて、月前半の値下がり分を取り戻して取引を終えた。5月1ヶ月間のTopixとJPX400の両株価指数は0.78%および0.82%とそれぞれ反発。一方、CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は-0.19%と、両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。

先見の目:「これからの日本におけるコーポレートガバナンス」(立石信雄(オムロン株式会社代表取締役会長、2001年)

(訳20年前に書かれました。)「…これまで一般に言われてきた日本企業のコーポレートガバナンスの特徴を要約すると、①内部昇進者による取締役会・監査役会の運営、②企業間の株式持合による安定株主化、③メインバンクによる支援体制、といった点があげられる。これらの仕組みは、敵対的な買収を防止し経営の安定化を促進し、企業の長期的な戦略立案を可能にするなど、日本的経営が成功した要因の一つとして評価されてきた。

しかし、取締役や監査役の大部分が内部昇進者で占められ、社長が両者の実質的任免権を持つことにより、取締役会や監査役が利害関係者の集団にとどまってしまい、企業トップ自身が不祥事に深く関わるような場合には、経営に対するチェック機能が働かないという深刻な問題が浮き彫りになってきた。また、株式持合の進行により、互いの経営内容について口を挟まぬ「物言わぬ株主」を増加させ、資本市場からのチェック機能の不全化も招いた。このような経営のチェック機能の弱体化と併せて、株主の権利の軽視や低い投資収益率についての批判もなされるようになった。

九州旅客鉄道株式会社の株主のみなさまへ

ファーツリー・パートナーズ(以下「ファーツリー」といいます。)は、九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」といいます。)の社外取締役として私を選任する株主提案を提出しました。この株主提案の提出は、JR九州の新規株式公開以来、最も長期にその株式を保有するアクティブタイプの最大株主であるファーツリーが、同社に適した新たな取締役候補者を探し出すための対話を同社と重ねてきた末のものです。私は、私のこれまでの専門的な経験と知識が、JR九州の取締役会の現在のニーズに合致しているという信念に基づいて、指名を受けることを承諾しました。特に、私は投資家と企業との対話を重視しており、そのためにアナリストおよび会社役員の両方の経験を役立てることができると考えています。

4月中旬に、私はJR九州の経営陣が何か月もの時間をかけて審査と面談を行った結果、結局は、ファーツリーと検討した全ての候補者を採用しないと決定したことを知り、驚きました。この時に、私はファーツリーから、今年の定時株主総会で提出する株主提案の取締役候補者になるよう依頼されました。日本では、株主提案の候補者が取締役に選任される例はまだ多くありません。それでも、私は株主提案の候補者となることを決心しました。有効なガバナンス及び完全に独立した社外取締役の役割の重要性を強く認識しているからです。ここ数か月でJR九州についてさらに学んだ結果、私は社外取締役として、同社の取締役会に多様性および多角的な視点を提供し、さらにアナリスト、ファンドマネジャー、IR専門職、ガバナンスを担当する会社役員として培った専門性をもってJR九州の取締役会に貢献できると考えるに至りました。私は、JR九州が直面している新型コロナウイルス感染症が引き起こした数々の困難な課題に対処し、同社が本来の力を発揮するためのお役に立てるものと信じています。

また、私は、私がファーツリーから完全に独立していること、ファーツリーに対しても常にそれを伝えていることを公にお伝えしたいと思います。ファーツリーは、外部の人材調査会社を通じて私に連絡をしてきました。それまで私は、ファーツリーの方を誰一人として知りませんでした。私とファーツリーとの間には金銭的な取り決めは一切行われておりません。私がJR九州の取締役として選任された後も、ファーツリーとは独立した関係を保ちます。私はファーツリーの意見を、保有株数に関係なく、他の株主のみなさまからのご意見と同じように扱い、検討します。

私がJR九州の取締役に選任されたなら、広い視野を保ち、偏見を持たないようにいたします。全ての取締役会の付議事項について、公開および非公開の情報を収集して自分自身の意見を持った上で、他の取締役と協議し、経営陣および株主のみなさまのご意見を考慮して、慎重に判断いたします。全てのステークホルダーにとってベストになるような決定を、十分な情報を踏まえて行えるよう尽力いたします。