役員研修・ガバナンス関連のブログ - 2ページ目 (161ページ中) - 取締役、役員、投資家など、誰でも投稿できる!

社外取教訓#4:会社を潰すよりヒドいこと

今回は、日本の中堅企業であればどこで起きてもおかしくないようなことを取り上げます。貴方はある会社の社外取締役になりました。社長(C氏)は創業者の息子です。 彼は職人肌のエンジニアで、高齢になった創業者である父の後を継いで社長になりました。彼は本当に親切で優しく、素敵な人でしたが、経営者としてはまだ経験不足で、技術革新の時代に将来を決するような、リーダーシップを発揮できる性格も持ち合わせていません。会社のためを考えると、彼には退任してもらって、外部から経験豊富で決断力のある人を探してくる必要があることは明らかでした。

社外取締役である貴方に課せられた仕事は、穏便に、物腰柔らかくCEOを説得し、退任させることです。例えばですが、レストランの個室で彼と食事をし、最初の2時間ほどは、会社が直面しているあらゆる戦略的課題について話し合います。その後で「この状況で会社を引っ張っていく自信がありますか?」と尋ねます。Cさんはとても素直な良い方ですので、「いいえ、自信はありません。」と答えるでしょう。貴方は「それなら、貴方は社長にふさわしい人ではありません」と答えます。彼は反論しません。父親が望んだから社長になったのであり、経営について何かプランをもって、社長になりたくて社長になったのではない、ということがよく伝わってきます。彼が本当にやりたいのは、より良い製品を作るための技術的なディテールの探求に戻ることなのです。

社外取教訓#3:こんなにも早く会社が倒産するのか(!)

アルプス社は、売上高の増加に伴い、増加する運転資金を銀行からの借り入れで賄っていました。しかし、どこの銀行も小さな会社の「メインバンク」にはなりたがらないのです。そこで、1年ごとに2億円以上ずつ貸してくれる銀行を増やしていき、6、7行にもなっていたかと思います。これらの融資はすべて短期で、毎年ロールオーバーする必要がありました。

すべての銀行が毎年ローンをロールオーバーし、必要な際に新しい銀行を見つけることができれば、取締役会にとってはすべてがうまくいくように思えました。

しかし、書籍ビジネスの現実として、地図などの出版社は、特に2000年代前半は、書籍卸業者に本を完全に「売る」ことはしていませんでした。出版社は、一種の委託販売制度を使っていました。このシステムにおいて、アルプス社は、卸売業者や書店に本を渡す際に売上を計上し、過去の経験から見積もって売れずに返品されそうな本の割合を使って引当金を同時に計上していました。

売れ残った本が本屋などから返品されるまで、つまり「期待どおり売れていない」という情報がわかるまで、長い時間がかかりました。そして、実際に返品された本の割合(「返品率」)が増えると、その額が積立金よりも多くなってしまい、その超過分のほど売上を減らさなければならなくなりました。

このような状況に役員会は怯え、突然私に「ヤフーにまだ会社を買いたいかどうか聞いてくれ」と頼んできました。もちろんヤフーは、この先どうなるかは容易に予想できたので、「今の時点では買う気はない」と答えました。そして或る銀行に融資のロールオーバーを拒否されました。アルプス社は、代わりの融資先を見つけることができませんでした。

社外取教訓#2:社外取締役として初めて経験したこと

なぜ、社内外取締役の育成が日本の将来にとって重要だと思うのか。それは、私が日本では取締役会がうまく機能しないときに、舞台裏で何が起こっているのか、どんな損失や痛みが生じているのか、たくさん見てきたからです。私は、英語で言うところの「傷跡」がたくさんあります。 本当に興味深いのは、ガバナンスが不十分な原因には多くの共通点があることです。 会社の規模や業種は関係ないようです。トルストイの言葉の真逆で、「成功する日本の取締役会はすべて違うように成功するが、失敗する取締役会はすべて同じように失敗する」ように感じます。だとしたら、ガバナンスの失敗を避けるのはそんなに難しくないように思います。

私が日本で初めて社外取締役を経験したのは2000年、当時率いていたM&Aアドバイザリーブティック、株式会社JTPが地図データをマーケティング等を使うソフトを売っていた米国のMapInfo社に対して、名古屋のアルプス社による25%の増資および戦略的提携の締結について助言したことに始まります。 アルプス社は、当時国内第3位の地図出版社で、未上場企業でしたが、将来的にIPOをする予定でした。MapInfo社には日本人従業員もいなかったので、私はMapInfo社だけでなく、他の株主の利害も守るために、MapInfo社にアルプス社の社外取締役に指名されました。

ボードダイバーシティと職場におけるDE&Iの混同

 

男女共同参画推進本部は、2023年6月13日「女性版骨太の方針2023」中、以下を記載した。
https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/sokushin.html
企業における女性登用を加速化するため・・・プライム市場上場企業に係る数値目標を設定し、女性役員比率の引上げを図る。このため2023年中に、取引所の規則に以下の規定を設けるための取組を進める。
-2025年を目途に、女性役員を1名以上選任するよう努める。
-2030年までに、女性役員の比率を30%以上とすることを目指す。
-上記の目標を達成するための行動計画の策定を推奨する。

【メトリカル】個人の株式保有が増加傾向。個人の役割に注目が高まる

2023年7月6日付で東証が「2022年度株式分布状況調査の調査結果について」を公表しました。本資料の概要を下記にお示し、論点を考えてみたいと思います。

【特徴点】

1. 個人株主数は、前年度比521万人増加して6,982万人となった。

2022年度の全国4証券取引所上場会社(調査対象会社数:3,927社)の株主数合計(延べ人数)は、前年度比525万人増加して7,140万人となった。全体の97.8%を占める個人株主数は、前年度比521万人増の6,982万人となり、9年連続で増加することとなった。2022年度の個人株主数の増減要因を見てみると、上場廃止会社の影響で49万人減少する一方、新規上場会社で54万人増加、株式分割実施会社で75万人増加、その他の会社で441万人増加となっており、その結果、今年度の個人株主数は521万人の増加となった。

政治のリーダーシップが期待できない中、高等教育の男女格差の解決がカギ

世界経済フォーラム(WEF)が6月21日に「ジェンダーギャップリポート」を公表しました。ジェンダーギャップ指数における日本のランキングについて、考えてみたいと思います。

ジェンダーギャップ指数における日本のランキングは次のようになっています。
G7では、前年の10位から順位を4つ上げたドイツがトップの6位。以下英国(15位)、カナダ(30位)、フランス(40位)、米国(43位)、イタリア(79位)と続き、100位圏にすら入れなかったのは日本だけで、前年の116位から九つも順位を落とし、過去最低を記録しました。議員や閣僚級ポストに占める女性の比率が低く、政治分野は138位と最下位グループ。労働参加率や賃金の男女格差などを反映し、経済分野も123位だった。教育分野でも、女性の高等教育の就学率の低下で47位にランクダウンしました。

男女平等でなく「男女共同参画」を推進する内閣府男女共同参画局は例年ジェンダーギャップ指数に関する記載をウェブサイトに掲載していますが、ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位を125位/146か国 (2023.6.21発表)は掲載していますが、各分野の順位についてはまだアップデートされていません。

ニデックによる同意なき公開買付、独立社外取締役の仕事

ニデックはTAKISAWAに対するTOBの開始予定を2023年7月13日に公表し、開始公告日を9月14日とした。最近増加中の、同意なきTOBの一事例として、注目されている。
https://www.nidec.com/-/media/www-nidec-com/corporate/news/2023/0713-01/230713-01.pdf?rev=8a29661706974025b71b8c1aa94315e2&sc_lang=ja-JP

TAKISAWAはTOBに対する意見表明を9月13日に行う予定である。
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS03883/ff839bdc/66b0/426c/b7a4/7b1063f68ebc/140120230822545294.pdf

社外取教訓#1:役員研修のBDTIの起源

2023年4月16日、私ニコラス・ベネシュは67歳を迎えました。そこでぜひお願いがあります。私が代表理事として14年間、日本で3,000人以上の方に役員研修(e-ラーニングを通すともっと多く)を提供してきた益法人会社役員育成機構(BDTI)への寄付をご検討いただけないでしょうか。また、これを機に、今後、コーポレート・ガバナンスに関連する論点やメッセージを、最近の出来事や私自身の15年にわたる社外取締役経験(又は友人の経験)に基づき、短く、読みやすく、しかしできれば考えさせられるような投稿を、このブログで連載していこうと考えています。

BDTIの仕事は、情熱と責任を必要とする「mission work (ミッション・ワーク)」であります。これからの投稿は、私がなぜこのような仕事をしているのか、日本や日本企業、投資家が直面する課題、そしてそれをどのように克服できるのかを明らかにするという意味で、興味をもっていただけると思います。これは、15年近く日本企業で取締役を務め、20年以上にわたってコーポレート・ガバナンス改善についてアドボカシーを積極的に行った者の視点を紹介するものになります。

What Should the Legal Department Know about ESG?

A conversation between several lawyers at Tanabe & Partners (T&P) on the topic —

Goi:

In this discussion, I would like to look at ESG international voluntary disclosure standards that legal departments should be aware of. Since hundreds of standards are gradually converging, why don’t we focus on two standards, GRI and ISSB. First, should legal departments keep up with ESG disclosure standards? Some people seem to think that the corporate department, committee or task force charged with sustainability should know about such standards, and that the legal department should leave things up to them. What do you think about this?

Hashimoto:

ESG has become an integral part of corporate strategy and risk management. The legal department is expected to fulfill its role in both promoting strategy and improving risk management, so it cannot afford to be ignorant of the basics of ESG disclosure standards. International disclosure standards are gradually being woven into regulatory disclosure. For starters, Japanese companies are required to include a statement of “sustainability-related views and initiatives” in their Yuho.

When you are asked to review a contract from a legal perspective, what do you rely on? You can only review the contract, if you know the Civil Code, the Companies Act, etc. Legal is asked to review because Legal is able to foresee what will happen if the contract is breached, what will happen if the law is violated, etc. It is difficult to conduct an effective review of ESG disclosure without knowing the system and the concept of ESG disclosure standards.

独立社外取締役が知っておきたい「強圧性」

予期せずに会社が買収の対象となったとき、公開買付にかかる意見表明のため、買収防衛策導入・発動の検討のため等、特別委員会設置の有無にかかわらず、独立社外取締役には重圧がかかる。頭を悩ませるものの一つに「強圧性」とは何か、がある。ここでは「強圧性」が出現する場面がかなり広いこと、強圧性の程度には差があることを、まとめておく。独立社外取締役としては、いざというときに備えて、事前に知っておきたい基礎的なポイントである。

強圧性のある買収には買収防衛策で対抗する必要がある、ないし対抗することが許容される、という考え方がある。しかし「強圧性」とは何か、必ずしも明らかではない。「強圧性がある買収は良くないと言われるが、何が強圧性のある買収なのか、様々な指摘がある」とするのは、経産省で開催された「公正な買収の在り方に関する研究会」第1回2022年11月18日冒頭における事務局説明である。

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