スチュワードシップ研究会、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案への意見書

一般社団法人スチュワードシップ研究会は、金融庁の「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案について、12月5日、意見書を提出し、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において企業が経営方針・経営戦略等を定めている場合の記載内容「当該経営方針・経営戦略」としている箇所に「資本政策の基本方針」の追記を要望しました。以下詳細。。。

株式中心のインベストメントチェーン

東京理科大学総合研究院客員教授
(ゆうちょ銀行市場部門執行役員)
清水時彦

日本企業では長いこと、大企業を中心に、年功制、長期雇用、企業内労働組合という3要素が相互補完的に機能して安定的な経営が行われてきた。経営者は従業員出身の場合も多く、経営効率よりは雇用が重視され、社会もそれを求めた。

その背景には、国民がその資産のほとんどを預金として銀行に預け、銀行はそれを企業に貸し出すというメインバンク制があった。ローンなので回収可能性が銀行経営のメルクマールとなり、担保主義と問題が生じた場合の経営関与がその柱で、対象企業の経営効率には焦点が当たらない。一方で国民たる従業員には長期雇用の下で安定的な賃金が支払われていた。

本来なら経営効率の向上を一番に望む株主も、事業の取引先を中心とした持ち合いが支配的であり、彼らも経営の長期的安定性を選好する。

現実はより複雑であろうが、全体を俯瞰すれば、これまでの日本は、国民→銀行→企業→従業員というデットを軸とした資金循環の下で、効率性よりは安定性を重視するシステムであったと言える。

以上は昨年お亡くなりになった青木昌彦元スタンフォード大学教授による比較制度分析に基づく日本の企業システムのアウトラインである。

これらは、人口増加の下で、日本がエマージング的に経済成長している間は有効であったといえる。企業は独自の技術や技能を長期雇用によって蓄積することが競争優位であった。しかし、90年代後半からは生産年齢事項は減少に転じ、また並行して進行している世界的な情報革命の下で既存の技術やビジネスモデルの陳腐化も早くなっている。最近では、AIやIoT、ディスラプティブといった言葉が紙面を賑わすなど、変化の時代といえる。企業も、長期雇用等による人材の囲み込みよりは、環境変化や技術進歩に応じた優秀な専門人材の獲得の方が重要となる。、、、

日本政策投資銀行『有価証券報告書における定性情報の分析と活用―リスクの多様化にともなう望ましい対話のあり方―』

「リスク情報と企業価値の関連性が強まる一方で、リスクの多様化によってステークホルダーとのコミュニケーションを図るための開示のあり方がいっそう難しくなってきている。[…]つまり「事業等のリスク」の信頼性をあげるために具体的、数字的な裏づけを求め過ぎることは、社会的なリスクを含めリスクが多様化していることから難しい場面が増加する。さらには個別リスクの対応に追われ、本当に重要なリスクの開示をためらうことで、かえって投資家に重要なリスクが伝わらず、企業のレジリエンスが十分に把握できなくなる危険性をはらんでいる。」

http://www.dbj.jp/ricf/pdf/research/DBJ_EconomicsToday_37_01.pdf

GPIF:「機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果の公表」

GPIF

「・・・・・アンケート結果の概要

■機関投資家のスチュワードシップ活動に対する意見・要望
○回答企業の約6割が日本版スチュワードシップ・コード導入後の機関投資家の変化を認め、経営戦略、ESGに関する質問が増えたことを肯定的に捉えている。
○一方で、好ましくない変化として、実績作りのための形式的・画一的な質問が増えたことや経営者との面談を強要するケースが増えたことなどを挙げた企業も多い。
○企業を取り巻く環境などを無視した一方的な提案もある。
○機関投資家の変化として、好ましい変化、好ましくない変化ともに資本政策・資本効率に関する質問が増えたことを挙げた企業が多く、評価が分かれた。
○企業側は、資本政策や資本効率に関しては、投資家ならではの示唆を期待している。
○投資家の短期志向(ショート・ターミズム)に対する懸念から、中長期的な視点に立った対話や投資を求める声が目立つ。

日経ビジネス:「磯山友幸の『政策ウラ読み』日本企業に必要なのは『年金ガバナンス』」

「安倍晋三内閣は成長戦略の柱として、日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)強化を掲げている。企業に「稼ぐ力」を取り戻させることで、経済成長を促そうという考えだ。2014年以降、企業のあるべき姿を示す「コーポレートガバナンス・コード」と、株主である機関投資家の行動指針である「スチュワードシップ・コード」を相次いで導入、これを「車の両輪」として規律を働かせる意向だ。
一方で、東芝の巨額会計不正などガバナンスのあり方が問われる問題も発覚している。ACCJ(在日米国商工会議所)で成長戦略タスクフォース委員長を務め、自民党に両コードの導入などを働きかけてきたニコラス・ベネシュ・会社役員育成機構(BDTI)代表理事は、年金基金などにガバナンスをきかせることが重要だと語る。 ・・・・」

スチュワードシップ研究会: 「日本企業におけるコーポレートガバナンスの問題と「空気」 -「空気」の支配からの脱却-」

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20年の長きにわたって低迷を続けている日本経済の回復は、日本企業の復活なくして達成できない。しかし、日本企業は、新興国企業の追い上げによって、競争力を失ってきている。こうした日本企業の抱える問題は多いが、その最大のものは、コーポレートガバナンスの問題である。本稿では「空気」という概念を用いて、コーポレートガバナンスの問題を考察した。創業経営者企業を除き、多くの日本企業の取締役会は、経営者のリーダーシップではなく、「空気」によって支配されていると考えられる。「空気」は、長い期間をかけて、企業内で共有された価値観や、従業員のコンセンサスによって醸成される。「空気」は、変化を嫌い、事業再編などといった大胆な改革を妨害する。経営者が、もし、こうした改革を本気で着手しようとすれば、企業内に充満した「空気」が、経営者さえも追放してしまう。現在の日本企業の低迷は、経営者が、事業の再編等、本当に自社の企業価値を向上させる戦略を、「空気」の呪縛によって、実行できないことにある。

スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第5回)議事録

金融庁

こちらは平成28年1月20日(水)に開催されたフォローアップ会議の議事録です。この会議の資料はこのフォーラムの最後にてダウンロードできます。

「【池尾座長】
定刻過ぎましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議、第5回会合を開催させていただきたいと思います。

皆様には、ご多忙中のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第4回)議事録

金融庁

こちらは平成27年12月22日(火)に開催されたフォローアップ会議の議事録です。この会議の資料はこのフォーラムの最後にてダウンロードできます。

「【池尾座長】
それでは、定刻まであと一、二分あるかと思いますが、ご出席予定の方は全員もうおそろいになりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議第4回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、ご多忙中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。