日本における「効率的なエンゲージメント」:サンプル・エンゲージメント・レター

仮に私が40社以上の日本企業株式に長期投資する機関投資家の議決権行使責任者を務めていたとしたら使用するであろうエンゲージメント・レター(日本語・英語)のサンプルを作成しました。その場合、保有銘柄が多いので年4回以上も直接面談するような時間はとれないので、効率的な対話方法を使わなければなりません。多くの機関投資家に共通する状況だと思います。

効率的エンゲージメントのためには、企業に対する提案を詳細な文書にして、できる限り迅速に提出する必要があると考えています。さもなければ、主要株主だったとしてもその提案内容が取締役会に正確且つ詳細に伝わることはありません。何しろ、詳細(又は全て)はIR部長で止まってしまう恐れがあるからです。また、内容によってはガバナンス・プラクティスとして日本ではまだ新しいものがあり、面談による口頭のコミュニケーションで完全に伝えるのはとても難しいという点もあります。

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優れた企業業績と相関性が高いのは?(調査サマリー)

公益社団法人会社役員育成機構(以下、BDTI)と株式会社メトリカル(以下、メトリカル)は、このほど日本の好業績企業のパフォーマンスとガバナンスストラクチャー/プラクティス及び企業の実際の行動がどのように相関しているかに関する研究を行い、第一次分析結果をBDTI主催の3月16及びゴールドマン・サックス証券主催の4月4日のセミナーにて報告を行った。当共同研究はまだ途中経過ではあるが、今後の分析に繋がる興味深い有用な指針がもたらされた。

BDTIとメトリカルでは、コーポレートガバナンスは優れた戦略・最適な資本配分及びその他の価値を生み出すための企業行動がなければ、それが有効に機能していないのではないかと考える。したがって、分析においては取締役会の運営・基本方針などのボードプラクティスと主要なアクションと価値の創造のリンケージと相関を見出すことを主眼とした。

生命保険協会:「株式価値向上に向けた取り組みについて」調査結果

生命保険協会は3月21日、企業の株式価値向上に向けたアンケート調査結果を公表しました。上場企業572社、機関投資家93社が回答しました。

「当協会では、企業と株主が建設的な対話を行い、双方の課題意識を共有化することが、中長期的な株式価値向上に向けた企業の取り組みを促すものと考えております。当調査結果を踏まえ、今年度は、コーポレート・ガバナンス、持続的成長に向けた経営戦略、対話の3つの観点から、企業に対し以下の11項目、投資家に対し以下の3項目を要望いたします。当報告書が、中長期的な株式価値向上を促し、ひいては株式市場全体の活性化につながることを期待しております。

パナソニックによるパナホームの買収 「会社非公開化」取引において少数株主は脆弱である

パナソニックによるパナホームの買収

「会社非公開化」取引において少数株主は脆弱である

Seth Fischer / セス・フィッシャー

Oasis Management Company Ltd. /

オアシス・マネージメント・カンパニー リミテッド

当社は日本の上場企業の幅広いポートフォリオに投資するファンドを勧めている。私は、日本のコーポレート・ガバナンスをグローバルスタンダード並みに向上させるという安倍政権の取り組みに励まされた。しかし、私も投資をしている係争中の住宅販売会社パナホームの支配株主である電子工業大手パナソニッックによる買収を見ると、日本にはまだ非公開化取引の不均整なリスクに対応する安全装置が確立されていないことがわかる。

米国および欧州のコーポレート・ガバナンス原則では、「会社非公開化」取引(すなわち、支配株主または現経営陣が上場企業の株式をすべて買い取ること)は特に慎重に扱われている。会社非公開化は当該会社の株主にとって異常に高いリスクを課すため、特別な配慮を要するものとされている。取得側には、大きな相反があるだけでなく、非継続株主に不利となるように会社の価値や価格を操作するのに絶好の立場にあるからだ。

パナホームの株主が米国であれば受けられる保護と、パナホームの株主が実際に受けている待遇を比較してみたい。