クラスアクション ドイツの場合

BDTIのアドバイザーであるハラルド・バウム教授から、ドイツのクラスアクション法とも言える法律の解りやすい解説が以下に投稿されました。過日、日米のクラスアクション制度をテーマにセミナーが開催されましたが、バウム教授の寄稿によって3カ国の制度を比較することを可能になりました。ドイツの制度は、フォルクスワーゲン株を購入した世界中の投資家が、窒素酸化物排出データ捏造により損失を被ったとして次々と訴訟を起こし、2016年一躍有名になりました。その訴訟の複雑な多層構造は日本の消費者裁判手続特例法をしのぎ、モデルとなる事件を設定して、共通する争点について高裁が判断を下すという、とてもユニークなものです。

 ドイツにおける証券詐欺モデル事件法

 -US版クラスアクションに替わる新制度?-

    ハラルド・バウム *

I.   モデル事件法の概要
II. モデル事件法の基本的な手続
III. 短所
IV.  欧州的視点

2001年、ドイツテレコム投資家約2500人が弁護士約700人を使って会社を提訴した。ファンド運営の失敗で暴落した株価により損害を被った個人投資家が、虚偽記載の責任者を相手取ったこの事件は、裁判所の処理能力を明らかに超えていた。

これを受けて2005年、立法府は「証券詐欺モデル事件法」と呼ばれる特別法を制定した。最初は2012年までの時限立法とされ、その後の延長で2020年までの期限がついている。

セミナー「クラスアクション元年-企業の備え」レポート

2017年1月23日、クラスアクションに関するセミナーが開催されました。日本版クラスアクション法とも言うべき新しい訴訟手続法と、元祖クラスアクション、アメリカの制度とを比較し、両方のリスクにさらされる企業がとるべき備えを考えるという意欲的なテーマでした。消費者庁で立法に携わった弁護士、アメリカでカルテル後長年続く私訴に関わったローヤー、アメリカで巨額クラスアクションを経験した日系企業の法務部長という経験豊富な面々が集まり、仮想事例をもとに、具体的・実務的なディスカッションがなされました。また、証券訴訟に詳しいBDTIの代表理事からは、誰もが眉をひそめるクラスアクションの「良い面」も紹介され、参加者の驚きを誘っていました。日本の制度はアメリカのそれとはかなり異なります。しかし、企業がグローバル展開するとき、各国内のことだけを考えて事件処理はできません。この国でとった戦略があの国にどのようなインパクトをもたらすか、多角的に検討する必要があります。各企業でどのような備えを講じるべきか、示唆に富むセミナーでありました。

Cyber3 Conference Tokyo 2016 サマリー

日本経済新聞社主催、日本政府、世界経済フォーラム(WEF)、Cyber3 Committee等協力により、2016年11月18日(金)、19日(土)に開催されたCyber3 Conference Tokyo 2016のサマリーが公表されました。

同イベントでは、ビジネスや社会の在り方そのものを根底から揺るがすIoT・ビッグデータ・人工知能といったテクノロジーをビジネス面で実用化することが日本の成長にとって喫緊の課題である一方、改革を推し進めるためにはサイバーセキュリティ等の対策が不可欠となってきています。しかし、未だに日本企業では幹部がセキュリティ対策に積極的ではないことが大きなリスクとなりつつある現状に警鐘が鳴らされました。サマリー・ダウンロードはこちらから。

同カンファレンスでは、ニコラス・ベネシュBDTI代表理事が19日のセッションで講演してい

【実践 危機管理セミナーのご案内】- 情報サイト炎上など最近の事例をもとに考える企業の危機管理(1月20日)

企業によるネットを通じた情報発信が増加する中、サイト上の誤情報やビジネス倫理の問題から炎上し、マスメディアでの大きな報道につながるケースが増えています。炎上の原因としては、ビジネス倫理の問題や危機発生後の対応の問題などさまざまな側面があります。株式会社コスモ・ピーアールでは、ネットの炎上事件から考える企業の危機管理をテーマに、「実践 危機管理セミナー」を2016年1月30日(月)に催します。皆様の理解の助けとなるよう、問題・課題を整理し、対策を考えます。

多くの皆様のご参加を歓迎いたします。ご参加を予定される方は下記お申込用紙のご記入の上、2017123日(月)までにメールまたはFAXにて、ご返信下さいますようお願いいたします。

お申込用紙のダウンロードはこちらから↓

「投資家への手紙」 ~ 投資家との「建設的対話」に臨んだ企業の所感

世の中には、もらって嬉しいかは別にして、投資家が株式発行企業に宛てた「投資家からの手紙」というものがある。今や、投資家と企業とは、建設的に対話する関係である。そうであるなら、企業が投資家に対し「投資家への手紙」を差し出し […]

「日本経済 緩やかな回復と難問の持続」 ヒュー・パトリック著

「 日本経済は常に難しい問題を突きつける。例えば、失業率が極めて低いにもかかわらず、賃金の上昇率が低いのはなぜか?異例な金融緩和と低金利が継続されているにもかかわらず、消費者物価は上昇せずデフレ懸念が払拭されないのはなぜか?研究開発投資が比較的高水準で実行されているにもかかわらず、国内の投資機会が少ないように思われるのはなぜか?日本人は、どうしてリスク回避的なのか?他の先進国でも見られる現象だが、生産性上昇率が低下した理由は何か?これらの疑問に対して全面的に回答することはできないが、本稿ではその回答への手掛かりを述べてみたい。

Brexitという、測定不能に大きいリスク

国民投票直後の混乱期に比べると、最近、この話題の登場場面は減ったように思えます。しかし、もちろん、このリスクがなくなったわけでも、小さくなったわけでもありません。あまりに不確実要素がありすぎて、企業は大きさを測ることも対処方針を定めることもできないでいるように思えます。

日本政府は、日系企業からの要望を取りまとめ、英国に対し、配慮を求めるメッセージを伝えました。要望は、次のような事項で負担が増大することを回避・軽減することです。

株懇『企業と投資家の建設的な対話に向けて ~対話促進の取組みと今後の課題~』

全国株懇連合会は、10月27日、『企業と投資家の建設的な対話に向けて ~対話促進の取組みと今後の課題~』を発表しました。具体的な内容は、「建設的な対話の取組状況」、「基準日の適切な設定」、「株主提案権制度のあり方」の3つのテーマを取り上げて、実務的な視点から検討を加えたものです。エンゲージメントの現状について実例を交えて解説し、今後取り組むべき課題が挙げられています。

BDTIでは、エンゲージメントをテーマに、11月14日(月)、本年6月に日本経済新聞出版社から『投資される経営 売買される経営』を上梓されたみさき投資株式会社代表取締役社長の中神康議氏と一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授の野間幹晴氏をお招きして、セミナー『~エンゲージメントの前に経営者が知っておきたい~「投資される経営」とは?長期的な企業価値創造のための経営視点とスキルとは?』を開催します。投資家とのエンゲージメントが求められている企業経営者、IRご担当者の皆様のご参加をお待ちしております。

セミナーの詳細とお申し込みはこちらから。

フェア・ディスクロジャー・ルール・タスクフォース開始

2016 年4月18 日、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」が本年4月に公表した報告書に盛り込まれた、「フェア・ディスクロージャー・ルールの導入に向けた検討の実施」がいよいよ本格化し、10月21日金融審議会 市場ワーキング・グループ「フェア・ディスクロージャー・ルール・タスクフォース」(第1回)が開催されました。

株式中心のインベストメントチェーン

東京理科大学総合研究院客員教授
(ゆうちょ銀行市場部門執行役員)
清水時彦

日本企業では長いこと、大企業を中心に、年功制、長期雇用、企業内労働組合という3要素が相互補完的に機能して安定的な経営が行われてきた。経営者は従業員出身の場合も多く、経営効率よりは雇用が重視され、社会もそれを求めた。

その背景には、国民がその資産のほとんどを預金として銀行に預け、銀行はそれを企業に貸し出すというメインバンク制があった。ローンなので回収可能性が銀行経営のメルクマールとなり、担保主義と問題が生じた場合の経営関与がその柱で、対象企業の経営効率には焦点が当たらない。一方で国民たる従業員には長期雇用の下で安定的な賃金が支払われていた。

本来なら経営効率の向上を一番に望む株主も、事業の取引先を中心とした持ち合いが支配的であり、彼らも経営の長期的安定性を選好する。

現実はより複雑であろうが、全体を俯瞰すれば、これまでの日本は、国民→銀行→企業→従業員というデットを軸とした資金循環の下で、効率性よりは安定性を重視するシステムであったと言える。

以上は昨年お亡くなりになった青木昌彦元スタンフォード大学教授による比較制度分析に基づく日本の企業システムのアウトラインである。

これらは、人口増加の下で、日本がエマージング的に経済成長している間は有効であったといえる。企業は独自の技術や技能を長期雇用によって蓄積することが競争優位であった。しかし、90年代後半からは生産年齢事項は減少に転じ、また並行して進行している世界的な情報革命の下で既存の技術やビジネスモデルの陳腐化も早くなっている。最近では、AIやIoT、ディスラプティブといった言葉が紙面を賑わすなど、変化の時代といえる。企業も、長期雇用等による人材の囲み込みよりは、環境変化や技術進歩に応じた優秀な専門人材の獲得の方が重要となる。、、、