Brexitという、測定不能に大きいリスク

国民投票直後の混乱期に比べると、最近、この話題の登場場面は減ったように思えます。しかし、もちろん、このリスクがなくなったわけでも、小さくなったわけでもありません。あまりに不確実要素がありすぎて、企業は大きさを測ることも対処方針を定めることもできないでいるように思えます。

日本政府は、日系企業からの要望を取りまとめ、英国に対し、配慮を求めるメッセージを伝えました。要望は、次のような事項で負担が増大することを回避・軽減することです。

  • EUから部品を英国に輸入し、完成品をEUに輸出する製造業では、部品と完成品の両方に関税が課されること。
  • 簡易通関手続を取れる認定事業者(AEO)を、英国・EU間は相互承認してきた。相互承認制度が失われれば、煩雑な通関手続を行わねばならない。
  • FTA特恵関税を受ける要件に原産地規則がある。工業製品の部品は、生産工程が分業化し、英国がその一部に組み込まれている。英国がEUから離脱すれば、原産地規制が満たせなくなる。
  • 英国籍、EU各国籍の労働者をVISAなしに移動させることができなくなる。
  • 英国で取得した金融単一免許が維持できなくなることにより、EU内に新現地法人を設立し免許を再取得する必要がある。EU内に法人があっても、英国法人の機能を移管する必要がある。
  • EU内で操業すべく英国で取得した種々ライセンスが、英国の離脱に伴い、執行する。
  • グループ企業間の配当・利子・ロイヤルティ支払には源泉税免除が適用されてきたが、これが失われる。
  • 個人データの移転は、これまで域内として比較的自由に行えた。取引・業務の緊密さからEU・英国間の個人データ移転の必要性は高い。これが域外移転となるため、厳しい規制がかかる。EUでは2018年から、さらに厳しいGDPRが適用開始となるため、ことはより深刻である。
  • すでにEUで登録済みの意匠・商標をもう一度英国で登録する必要がある。
  • 医薬品や通信端末の規格について認証を受けるための手続が重複化する。

日本政府は、不確実性こそが経済活動にとってリスクであり、交渉時期・過程の透明性・予測可能性を求めました。これに応えるかのように、メイ首相は、2017年3月末までに離脱を正式通告し交渉を開始すると表明しました。交渉期限は原則2年間ですから、2019年3月末に英国はEUを離脱することになります。その後の関係につき、完全離脱する、実質的にはEUにとどまる、意見の対立があるようです。

いずれにせよ、企業は「Hope best, prepare worst.」の精神で、途方もなく大きい、現実化してしまったリスクを管理する必要があります。2016年11月現在、残された期間は2年4ヶ月です。各企業は、早急に、離脱の影響を洗い出し、必要な対策をイメージし、準備のための時間やリソースを特定する必要があるでしょう。

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