メトリカル:CG Top20株価パフォーマンス(2023年4月)

先月の金融システム不安から落ち着きを取り戻して堅調な米国株式相場を受けて、月末にかけて上値を追う展開。
CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して2ヶ月連続で大幅なアウトパフォーマンス。
米シリコンバレー銀行の経営破綻を発端とする金融システム不安から米国株式が徐々に落ち着きを取り戻したことから、米国株高を好感して株式相場は月末にかけて上昇した。月末最終日は日銀の金融政策決定会合で、金融緩和が維持されたことから株価は大幅上昇した。
4月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ2.71%および2.58%上昇した。CG Top20株価は3.06%の上昇と両インデックスに対して2ヶ月連続の大幅なアウトパフォーマンス。
2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスとマーケット・インデックスに比べても低いボラティリティを継続しています。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

新しい寄付者のご報告:外国のガバナンス教育団体、及び個人の方8人

昨日、私の誕生日に合わせて、BDTIへの寄付のお願いを下記の通りしました。その結果 1)Swiss Institute of Directorsから1件、2)カリフォルニアのアメリカ人から1件、グアム在住のカナダ人から1件、3)日本在住の外国人から4件の寄付の約束、4)日本人の方から2件の寄付をいただきました。また、多くの「いいね!」と「お誕生日おめでとう」メッセージをいただき感謝いたします。応援してくださった寄付者の方々、ありがとうございました!

2023年4月16日、私ニコラス・ベネシュは67歳を迎えます。そこでぜひお願いがあります。私が代表理事として13年間、日本で2,700人以上の方へ役員研修(e-ラーニングを通してはもっと多くの方)に提供してきた益法人会社役員育成機構(BDTI)への寄付をご検討いただけないでしょうか。また、これを機に、今後、コーポレート・ガバナンスに関連する論点やメッセージを、最近の出来事や私自身の15年にわたる社外取締役経験に基づき、短く、読みやすく、しかしできれば考えさせられるような投稿を、このブログで連載していこうと考えています。

BDTIの仕事は、情熱と責任を必要とする「mission work (ミッション・ワーク)」であります。これからの投稿は、私がなぜこのような仕事をしているのか、日本や日本企業、投資家が直面する課題、そしてそれをどのように克服できるのかを明らかにするという意味で、興味をもっていただけると思います。これは、15年近く日本企業で取締役を務め、20年以上にわたってコーポレート・ガバナンス改善についてアドボカシーを積極的に行った者の視点を紹介するものになります。

Swiss Institute of Directors、BDTIに60万円の寄付

Re: Donation of the Swiss Institute of Directors
 
2023  From: Hilb, Martin
Sent: Saturday, April 15, 2023

Dear Nicholas

Many thanks for your valuable BDTI’s update report for the FY 2022 and for the great summary of your plans for the current year which is very much appreciated.  We would like to congratulate you and your team for your great achievements!

Per your request please receive a donation from the Swiss Institute of Directors which is also a not for profit organization.  Best wishes and kind regards,

Martin Hilb
President of the Swiss Institute of Directors
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2022    From: Hilb, Martin
Sent: Saturday, April 23, 2022 

Dear Colleague:
Many thanks for your prompt and valuable reply.

BDTI女性のための役員研修奨学金制度2023

第1弾締め切りました!現在受付終了しています。第2弾開始いたしましたら告知いたします。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は、女性のために役員研修コースをサポートする取り組みを今年度も実施します。BDTIの対象役員研修コースのいずれかを申し込んだ優れた資質を持つ女性に対し、スポンサー企業が費用を全額負担します。この支援の目的は、高い資質を持つ女性リーダーが取締役として活躍するために、研修によって必要なスキルを身につけ、女性取締役候補のパイプラインを拡大することで、日本の取締役のジェンダーギャップに積極的に対処することです。BDTIの研修は、コーポレートガバナンスの知識を早めに習得する機会となり、将来の役員人材を確保するうえで、企業にとっても機関投資家にとっても有益です。奨学金制度を通じて、多くの女性が役員研修を受講するきっかけとなることを期待します。

募集要項
【対象】

優秀な女性役員候補を対象とする

【奨学金応募受付期間】
2023年4月3日(月)開始。各コース定員になり次第、募集を締め切ります。奨学金の応募は先着順で審査されますので、お早めに概要の履歴書をお送り下さい。

【対象プログラム】

「ガバナンス塾」
取締役・執行役員が身につけるべき基本的な知識を1日で集中的に学習するプログラムです。コーポレート・ガバナンスの理論と実践、会社法、金商法、財務諸表の読み方、ケーススタディなど、第一線で活躍する講師陣によって講義が行われます。

2022年度活動報告・ 次年度予定

コロナもようやく落ち着き、BDTIの集合研修もzoom形式から従来の対面形式に戻っています。BDTIの支援者が2022年度に女性を対象に奨学金を提供して下さったおかげで2022度のBDTIオープン研修女性参加率は55%でした(2021年度は32%)。BDTIの使命である日本社会にガバナンスの知識を普及させるため、そしてその一環として女性管理職の活躍を推進するため、2023年度も50%という高い水準を維持していきたいと考えております。

経済産業省の調査によると、『役員研修に取り組んでいる 』上場企業はわずか20%です。また、当法人ベネシュ代表理事は、「スチュワードシップ・コードが機能すること」を目的の一つとして、ガバナンス・コードを提唱したのですが、残念ながら、今のところ新しい開示データは十分に分析・活用されていない状態です。BDTIはこれらの課題に引き続き積極的に取り組み、日本経済発展のために貢献して参りたいと思っております。研修の質と幅を広げていくためには、研修の設計や実施費用、講師の登壇代、販管費などの資金が必要となります。2023年度も皆さまの温かいご支援をどうぞお願いいたします。

2023年3月までの活動報告および2023年度の活動予定のご報告をいたします。 「活動報告および2023年度の活動予定」の詳細はこちらからご覧いただけます。

2022年度の活動報告

メトリカル:CG Top20株価パフォーマンス(2023年2月)

2月の株式相場は米国金利の上昇を受けた円安を好感した買いと企業業績の息切れの間で一進一退の動きが続いた。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対してアンダーパフォーマンス。

米国インフレ長期化の懸念から米金利が上昇したことから円安ドル高が進行し、米ドルベースでみた日本株の割安感から買われる場面が見られた。一方で、1月末から始まった決算発表が力強さを欠いた内容だったことから、2月の株式相場は上値が重く、狭いレンジでの推移が続いた。
2月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ0.93%および0.96%上昇した。CG Top20株価は0.75%の上昇と両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか? 2022年(1)〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。今年も昨年に続きこの1年間でどれくらい上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みが進展したか見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月、2021年12月および2022年12月の過去3か年におけるMetricalユニバース約1,700社の各評価項目の推移を示しています。Metricalは評価項目をボードプラクティスとキー・アクションに分けて分析しています。今回はボードプラクティス編です。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的なコーポレートガバナンスの評価を示すものです。2022年12月のスコア分布は紫色の棒で示されています。の分布は2020年12月、2021年12月、2022年12月と年を追うごとに棒の分布が右方向(スコアの高い方)に移動していることがわかります。2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂と2022年の東証の市場再編を受けて、上場会社がそれらに対応するために、コーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身について評価項目ごとに見てみましょう。

メトリカル:CG 株価パフォーマンス CG Top20 vs. Topix, JPX400(2022年12月末)

12月の株式相場は日銀が金融政策決定会合で金利操作の運用修正を発表したことをきっかけに大幅下落して終了。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して2ヶ月続けてのアンダーパフォーマンス。

12月の株式相場は米国FOMCの金融政策を見守る動きから、月半ばまで方向感を掴めない相場展開。12月20日の日銀が金融政策決定会合で長期金利の変動幅を従来の0.25%から0.5%に拡大したことが伝わると、その日の後場から株式相場は大幅安。その後も反発気配がないまま取引を終えた。金利上昇を好感した銀行株が急上昇する一方で、成長株を中心に下落する株式が目立った。
12月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ-4.79%および-4.87%下落した。CG Top20株価は-5.59%の下落と両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:海外投資家が必要な書類と会社が英訳する書類にミスマッチがある

東証が2022年8月3日に月末に2022年7月末現在で英文開示実施状況調査を開示しましたので、ご報告したいと思います。

開示資料の冒頭で、東証は次のように述べています。「この度、2022年4月の新市場区分への移行後の状況を明らかにするため、2022年7月時点の調査を行い、調査結果をとりまとめましたので、お知らせいたします。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場であるプライム市場上場会社においては、英文開示実施率が92.1%(2021年12月末時点85.8%)に達し、新市場区分への移行を機に上場会社における英文開示の取組に一定の進展が見られました。他方で、昨年実施した海外投資家アンケートにおいて7割超が英文開示を必要とした適時開示資料(決算短信除く)や有価証券報告書であっても、プライム市場上場会社の英文開示実施率が半数未満に留まる状況も見られます。新市場区分への移行以後に適用されているコーポレートガバナンス・コードでは、「特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである」(補充原則3-1②後段)としており、英文開示の範囲の拡大・内容の充実、開示タイミングの差異の解消に向けて、更なる進展が期待されます。」

上記の東証の調査結果まとめのステートメントに述べられている通り、プライム市場の上場会社の多くは何某かの資料を英訳しています。英文開示をする会社が増えたことは一定の評価ができます。しかし、まだ緒についたばかりというのが事実で、東証も後段で述べている通り、有価証券報告書のような重要な開示資料の英文開示をする会社はとても少ない状況です。有価証券報告書は来年度からは従来の四半期の提出から年次の提出に変更される代わりに、サステナビリティ項目が記載事項に含まれる計画であることから、その重要性が一層増しています。以下にて、東証の調査結果を見てみましょう。

英文開示を実施状況の概要
英文開示を実施している上場会社の割合は全市場では56.0%(前年末比+3.2ポイント)、プライム市場では92.1%(同+6.3ポイント)です。プライム市場以外の上場会社で英文開示を実施している会社は多くありません。昨年改定されたコーポレートガバナンス・コードは補充原則3-1②において、「プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべき」と規定しています。しかし、必要とされる情報として具体的にどの書類を英文で開示するのか示していません。コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-2④で「招集通知の英訳を進めるべき」と唯一言及されたのが、招集通知でした。プライム市場の上場会社で招集通知の英訳を実施した会社の割合は76.1%(前年末比+11.9ポイント)と高まりました。英訳の実施率が高かったのが、決算短信の77.1%(同+9.3ポイント)、IR説明会資料の61.1%(同+3.5ポイント)でした。一方で、英訳を実施した会社が少なかった資料は、適時開示(決算短信除く)、コーポレートガバナンス報告書、株主総会招集通知(事業報告)、有価証券報告書で、実施率はそれぞれ38.7%(前年末比+2.3ポイント)、24.5%、(同+2.3ポイント)、22.7%(同+2.1ポイント)、13.3%(同+0.8ポイント)でした。有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書などの重要な資料は大部分の会社で英訳されていないことがわかります。