ニコラス・ベネシュ:「コーポレート・ガバナンスと企業パフォーマンス ~社外取締役としての証券アナリストの可能性~ 」

2019年12月11日に日本証券アナリスト協会にて弊機構代表理事のニコラス・ベネシュが表題の講演を行いました。以下に講演要旨を掲載致します。

当日の資料(全文)はこちら:「コーポレート・ガバナンスと企業パフォーマンス」 (以下の画像は一部のみです。)

目次

  1. サマリーとBDTIの紹介
      ~なぜガバナンス情報分析および役員研修が重要か
  2. コーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの関係
  3. 投資家に対するアドバイスおよび、今後の研究の展望とAppendix
  4. 独立社外取締役としての証券アナリスト
    質疑応答

今日話す2つの主なテーマは、1つ目はコーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの関係、2つ目に、社外取締役としての証券アナリストの可能性である。

サマリーとして、ガバナンス改善の効果はあり、これからも期待できるとしているが(資料3頁)、道半ばである。機関投資家は意思表示しているが、エンゲージメントにおいて、まだまだ具体的な期待値・要望を書面で詳しく書いてない。しかしながら、少しずつ向上しているので、政策保有株の壁の崩壊もいずれ3~4年以内に起きると思える。役員研修や近代的な人事制度・慣行の方針や政策については、各社がレベルアップする必要がある。超過パフォーマンスと相関関係のありそうな有意な要因は徐々に見えてきた。例えば、当法人の今までの分析では、独立社外取締役が50%以上であることや、人事諮問委員会の存在、大株主の存在などはその有意な要因であると示されている。また、会社が約30年以下で若くなればなるほど、平均値のパフォーマンスが上がることが見つかっている。皆、そうではないかと思っていたと思うが、政策保有株が少ないほど、だいたいパフォーマンスが良いことを後述する。今日の1つのメインテーマ、因果関係がどの方向へ行っているかについて話をする。

その前に、会社役員育成機構(BDTI)について紹介する(資料5頁)。日本証券アナリスト協会と同様に、内閣府の立ち合い調査を受けている公益法人だ。ちょうど10年前に設立し、1年半後に公益認定を受けた。受けた1つの目的は、単純に日本政府に、歴史上初めて、取締役の研修をすることが社会にとって良いことであることを正式に認めてもらいたかったからである。それまで日本政府は、金融庁も経済産業省もどこも、役員研修は良いことだと間接的にも促したことは一度もなかった。周知のとおり公益認定を受けるプロセスは大変であり、数回この申請を取り下げた方がいいかもしれないと言われたが、あえて我々は取り下げず、理解ある官僚のおかげで最終的に認定を受けた。

日本証券アナリスト協会講演:コーポレート・ガバナンスと企業パフォーマンスの因果関係分析

2019年12月11日に弊機構代表理事のニコラス・ベネシュが日本証券アナリスト協会で講演を行いました。

サマリーとBDTIの紹介
  ~なぜガバナンス情報分析および役員研修が重要
コーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの関係・因果関係
投資家に対するアドバイスおよび、今後の研究の展望とAppendix
独立社外取締役としての証券アナリスト

スピーチの一部:「今日話す2つの主なテーマは、1つ目はコーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの関係、2つ目に、社外取締役としての証券アナリストの可能性だ。サマリーとして、ガバナンス改善の効果はあり、これからも期待できるとしているが(資料3頁)、道半ばである。機関投資家は意思表示しているが、エンゲージメントにおいて、まだまだ十分に具体的な期待値・要望を書面で詳しく書いていない。質量ともに有効性として不十分と思っている。ただ、だんだんと向上しているので、政策保有株の壁と言っているものの崩壊もいずれ3~4年以内に起きると思える。役員研修や近代的な人事制度・慣行の方針や政策については、各社がレベルアップする必要がある。超過パフォーマンスと相関関係のありそうな有意な要因は徐々に見えてきた。例えば、当法人の今までの分析では、独立社外取締役が50%以上であることや、人事諮問委員会の存在、大株主の存在などはその有意な要因でありそうと示されている。また、会社が若いほど、だいたい30年以下で若くなればなるほど、平均値のパフォーマンスが上がることが見つかっている。皆、そうではないかと思っていたと思うが、政策保有株が少ないほど、だいたいパフォーマンスが良いことを後述する。今日の1つのメインテーマ、因果関係がどの方向へ行っているかについて話をする。…」

日本証券アナリスト協会の講演資料はこちら:コーポレート・ガバナンスと企業パフォーマンス~社外取締役としての証券アナリストの可能性~

36頁には、 コーポレートガバナンスと企業パフォーマンスの因果関係についての(今までの)分析結果のサマリーがあります。個々のプラクティスについての因果関係の分析の説明は頁23~33にあります。

日本経済団体連合会:「サイバーリスクハンドブック」発表

2019年10月31日に経団連がサイバーリスクハンドブックを発表しました。

原則1
取締役は、サイバーセキュリティを、単なるITの問題としてではなく、全社的なリスク管理の問題として理解し、対処する必要がある。

原則2
取締役は、自社固有の状況と関連付けて、サイバーリスクの法的意味を理解すべきである。

原則3
取締役会は、サイバーセキュリティに関する十分な専門知識を利用できるようにしておくとともに、取締役会の議題としてサイバーリスク管理を定期的に取り挙げ、十分な時間をかけて議論を行うべきである。

BDTI/METRICAL共同研究アップデート:「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」-2019年7月-

BDTIとMETRICALは、「CGプラクティスと価値創造のリンケージ」を共同研究しているが、このほど時価総額約100億円超の約1,800社の上場会社について2019年7月末の分析結果をアップデートした。ちなみに、今回の分析データは2019年3月期決算後の有価証券報告書提出後のデータを用いていることから、3月決算会社のボードプラクティスの変化の多くを含んでいる。

本分析では、CGプラクティスをボードプラクティスとアクションに分けて考えた場合、ボードプラクティス(取締役会の運営体系)とアクション(実際の企業行動)が価値の創造の指標とされるROE,
ROA, トービンのqと有意性のある相関があるかを分析している。

メトリカル:コーポレートガバナンス1,800社スコア(2019年6月末)

政策保有株式
数多くの3月決算の上場企業が6月末までに定時株主総会を経て有価証券報告書を提出した。この中にはとても有用な情報が含まれています。今月は「政策保有株式」を取り上げます。
1,775社の「政策保有株式」の平均値は34,861百万円で、1年前の40,389百万円に比べて13.7%減少した。もちろんこの数字は注意深く取り扱うべきですが、その減少幅はTopixが 2018年3月末の1,716.30から2019年3月末の1,591.64に7.3%減少したよりも大きかった。

板垣隆夫氏レポート:『2019年住友化学(株)株主総会(6月21日)出席報告』

「[1]全般概況

ここ数年、コーポレート・ガバナンス(CG)改革の影響を受けて、日本企業のCGは確実に変化しつつあり、株主との対話の場としての株主総会も変貌してきたのは明らかだと思います。当社の株主総会も、参加者は増加傾向にありましたが、今年は更に大幅に増えて、質問も活発で以前と比べると明確に活性化してきたと言えます。しかし、形だけでなく実質的に本当に企業体質は変わったのか、株主と本当に真摯に向き合う株主総会になっているか、その真価を見定めるためには暫く時間が必要です。

●一昨年から、会場が利便性の高いベルサール東京日本橋に移り、参加者は着実に増えています。昨年10月に単元株式数を1,000株から100株に変更した影響もあったのでしょう、今年は更に大幅に増え、会場はほぼ満員状況でした(2017年700人、2018年800人、本年1100人强)。

メトリカル:「CG Top20株価は比較的小じっかりの相場展開の中でアウトパフォーマンスを拡大」

「 株式相場は1月の大幅下落後の変動の激しかった3ヶ月間とは異なり、4月の相場は変動が少ない比較的しっかりした展開となった。CGレーティング・スコアTop20株価はそのような環境おいて、4月末にかけてTopix, JPX400の両株価指数に対してアウトパフォーマンスを拡大した。 」

レポート全文はこちらよりダウンロードできます。

役員会議のデジタル化に関する5つの誤解

今日、情報技術の進歩は企業経営やコミュニケーション手段においても大きな変化をもたらしている。役員会議においては、紙媒体から徐々にボードポータルに代表される最新技術を搭載したツールやプロセス自動化への移行によって、役員の職務の合理化が進んでいる。

しかしながら、企業においてボードポータルの導入が一体どのようなメリットをもたらしてくれるのか明確に把握出来ず、導入を躊躇している担当者が多いのが現実である。また様々な技術的懸念が検討を進めるにおいて障害となっている事例もよく見受けられる。