Metricalではこれまでコーポレートガバナンス・プラクティスの改善がいかに企業の価値創造に寄与するかを調査してきました。そのため、コーポレートガバナンスのプラクティスの各クライテリアと価値創造指標の代表としてROE、ROA、株価(トービンのQ)との相関を統計分析してきました。コーポレートガバナンスのプラクティスの重要なクライテリアの一つである指名委員会スコアとトービンのQの間に初めて統計的に正の相関が確認されました。約3年間の分析期間で初めてのことです。
指名委員会は取締役会メンバーの決決定に深く関与し得る機関であることから、取締役会の骨格を決める役割を担う重要なコーポレートガバナンスのプラクティスです。それゆえに現経営陣にとっては取締役の人事権を指名委員会に委ねるのは相当な抵抗があることは容易に推測できます。従って、当プラクティスの改善のスピードは他のプラクティスに比べて、これまで遅れがちでした。Metricalでは指名委員会が透明性と客観性を確保するべきとの観点から、(1)指名委員会(諮問委員会含む)の有無、(2)社外取締役が委員長を務めているか、(3)社外取締役が委員会の過半数を占めているか、に注目してスコアリングしています。
下表はMetricalユニバースの1,737社の指名委員会の設置状況をお示ししています。年々改善の方向に進んでいますが、ユニバースの1,737社のうち69社だけが指名委員会設置会社の立て付けで指名委員会を設けています。しかし、その69社の全社の指名委員会の委員長が社外取締役で、また58社の指名委員会で社外取締役がそのメンバーの過半数を占めています。指名委員会設置会社は圧倒的に少数ですが、その透明性と客観性の確保に努めていることは評価できます。一方で、指名委員会設置会社の立て付けでなく、緩め?の諮問委員会としての指名委員会を設けている会社は1,025社にのぼります。そのうち社外取締役が委員長を務めている会社が550社、社外取締役がそのメンバーの過半数を占めている会社が676社でした。以前に比べると当プラクティスの改善の進捗は進んできましたが、報酬委員会と比べると遅れています。諮問委員会としての指名委員会も設置していない会社は643社でした。
