メトリカル:コーポレートガバナンス1,800社スコア(2021年2月末)分析

コーポレートガバナンス1,800社スコア(2021年2月末)分析を元にしたコメントをご案内いたします。
今月は個別企業のコーポレートガバナンスに関する詳細レポートをご参考までにご案内いたします。本メールではサマリーページのみをご紹介しますが、全文は本メールのリンクをクリックしてお読みいただけます。ご参考になりましたら幸いです。

(サンプル)コーポレートガバナンス・リサーチ: ディスコ (6146) – 2020年8月13日発行

サマリー:
ディスコのコーポレート・ガバナンスは平均をやや上回っています。ディスコのコーポレートガバナンスは平均をやや上回り*、ROEなどの財務パフォーマンスも平均以上。株主還元策を含め、資本政策が明確に示されています。業績の良さも相まって、株主は喜んで株式を保有すると推測されます。一方で、コーポレート・ガバナンスのリサーチは、将来的に発生するリスクを未然に防ぐことに役立つことが期待されます。このような観点から当社を分析すると、企業のコーポレート・ガバナンスの実践には多くの課題が散見されます。
取締役会のあり方については、取締役会の性別・国別の多様性を高め、できれば社外取締役が過半数を占めるようにすべきです。取締役会は毎年再選されるべきであり、社外取締役は学歴よりもビジネス経験のある人材が望ましいと考えられます。指名・報酬委員会は透明性と客観性を持って運営されるべきです。実際には、委員長は社長が務め、元会長(元CEO顧問、現職)が委員を務めています。
報酬インセンティブについては、経常利益率10%以上を達成した場合の基準ケースでは、固定給と取締役の業績連動報酬の配分が半々となっています。安定した給与を先に支払うスキームや計算式になっています。インセンティブにおいても、ストックオプションは、普通株式とは異なる非対称的な損益プロファイルであることに加え、市場価格と取締役へ付与する1株1円のコストの価格差において利益を提供するスキームにはいくつかの問題があります。

メトリカル:2月の株式相場は月末に急落して終える。 当月1ヶ月間のCG Top20株価はTopixおよびJPX400に対してアンダーパフォーム

2月の株式相場は前月末急落を即座に埋め、日経225株価指数は30年ぶりに3万円台に乗せる好調な滑り出しとなったが、米国債金利の上昇を懸念したテクノロジー株中心に米国株の大幅下落を受けて、月末最終日に急落して終えた。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間では、CGレーティング・スコアTop20株価は1.61%上昇した一方、TopixおよびJPX400は3.17%、2.91%それぞれ上昇した。累積のパフォーマンスでは引き続き下記のチャートの通り大きくアウトパフォーマンス。

メトリカル:指名委員会スコアと株価の関係に変化の兆し

Metricalではこれまでコーポレートガバナンス・プラクティスの改善がいかに企業の価値創造に寄与するかを調査してきました。そのため、コーポレートガバナンスのプラクティスの各クライテリアと価値創造指標の代表としてROE、ROA、株価(トービンのQ)との相関を統計分析してきました。コーポレートガバナンスのプラクティスの重要なクライテリアの一つである指名委員会スコアとトービンのQの間に初めて統計的に正の相関が確認されました。約3年間の分析期間で初めてのことです。

指名委員会は取締役会メンバーの決決定に深く関与し得る機関であることから、取締役会の骨格を決める役割を担う重要なコーポレートガバナンスのプラクティスです。それゆえに現経営陣にとっては取締役の人事権を指名委員会に委ねるのは相当な抵抗があることは容易に推測できます。従って、当プラクティスの改善のスピードは他のプラクティスに比べて、これまで遅れがちでした。Metricalでは指名委員会が透明性と客観性を確保するべきとの観点から、(1)指名委員会(諮問委員会含む)の有無、(2)社外取締役が委員長を務めているか、(3)社外取締役が委員会の過半数を占めているか、に注目してスコアリングしています。

下表はMetricalユニバースの1,737社の指名委員会の設置状況をお示ししています。年々改善の方向に進んでいますが、ユニバースの1,737社のうち69社だけが指名委員会設置会社の立て付けで指名委員会を設けています。しかし、その69社の全社の指名委員会の委員長が社外取締役で、また58社の指名委員会で社外取締役がそのメンバーの過半数を占めています。指名委員会設置会社は圧倒的に少数ですが、その透明性と客観性の確保に努めていることは評価できます。一方で、指名委員会設置会社の立て付けでなく、緩め?の諮問委員会としての指名委員会を設けている会社は1,025社にのぼります。そのうち社外取締役が委員長を務めている会社が550社、社外取締役がそのメンバーの過半数を占めている会社が676社でした。以前に比べると当プラクティスの改善の進捗は進んできましたが、報酬委員会と比べると遅れています。諮問委員会としての指名委員会も設置していない会社は643社でした。

メトリカル:1月の株式相場は月半ばの高値から月末にかけて急落して終える。1ヶ月間のCG Top20株価のパフォーマンスはJPX400に対してアンダーパフォームするもTopixに対してアンダーパフォーム。

1月の株式相場は前月末の好地合を受けて上昇して始まった。その後は好調な決算の期待と世界的な金融緩和継続観測に伴い上昇相場が期待されたが、月末の米国株式相場の乱高下・急落により、急落して終えた。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間では、CGレーティング・スコアTop20株価は0.89%下落した一方、Topixの上昇とJPX400は0.29%、0.49%それぞれ上昇。累積のパフォーマンスでは下記のチャートの通り大きくアウトパフォーマンス。

メトリカル:ポスト・コロナはファミリー企業に注目

新型コロナウイルス感染拡大による社会生活の変化に伴い、経営を取り巻く環境が大きく変容しています。ポスト・コロナを念頭にこの環境変化に適応することが最大の経営課題となっています。この変化に迅速且つ柔軟に適応するための一つの鍵が経営のリーダーシップであると思われます。相対的に経営スピードが速いとみられるファミリー企業の動きに注目が集まることが予想されます。これまでも弊社リサーチでは、創業家ファミリーが20%以上保有する会社のパフォーマンスが平均よりも相当に高いことを述べてきました。直近のデータをもとにあらためて注目したいと思います。下記の2つのグラフは、ROE(実績)とトービンのQでファミリー企業(創業家ファミリーが20%以上保有する会社)とユニバース1,743社の分布を示しています。ROE(実績)とトービンのQのいずれもユニバース1,743社に比べてファミリー企業の方がより高い数値に分布していることがわかります。ファミリー企業が今後も素早い経営スピードで今回の変化に適応し、より高い収益力を実現することができるのか、株価パフォーマンスにも反映されるのか、今後注目されます。

メトリカル:11月の株式相場はワクチン早期摂取・流動性拡大などの期待から大幅な上昇。CG Top20株価はTopix, JPX400に対してアンダーパフォーム。

11月の株式相場はファイザーが新型コロナウィルスワクチン申請したことから景気回復期待と米国FOMCを受けてさらなる流動性拡大の期待などから大幅に上昇した。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ10.67%および11.72%上昇。CGレーティング・スコアTop20株価は9.16%と両株価指数の上昇には及ばなかったものの大幅上昇で終了した。

メトリカル:10月の株式相場は月末にかけて 大きく下落。CG Top20株価はTopix, JPX400に対してアンダーパフォーム。

前月までの上昇トレンドから、10月の株式相場は欧州や北米でのコロナウィルス感染者数増加を懸念して、月末にかけて値を崩した。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ02.81%および2.75%下落。CGレーティング・スコアTop20株価は5.41%と両株価指数に対して大幅アンダーパフォームした。累計のパフォーマンスでは大きくアウトパフォームを継続(下チャート参照)。

メトリカル:ファミリー企業の株価と投資戦略

前回の記事では、日本特有の「親子上場」に注目しました。当社ユニバース会社を大株主の持ち分によって3つのグループに分類しました:(a) 50%以上の株式を保有する大株主が存在する会社、(b) 20%以上50%未満の株式を保有する大株主が存在する会社、(c)20%以上の株式を保有する株主が存在しない会社。 親会社が所有する上場子会社および関連会社または創業者ファミリー企業は、ROAやROE、トービンのQなどの主要パフォーマンス指標において優れていることをお示しいたしました。この点で、親会社が相対的に収益性の高い上場子会社や関連会社を完全子会社化するなど連結化して、親会社の収益を引き上げることは自然な流れと考えられます。事実このようなケースは増加傾向にあります。 親会社による利益率の高い上場子会社の買収を先取りして、上場子会社(および関連会社)に投資する投資戦略をご案内いたしました。
今回の記事では、逆に株価が安く推移しているファミリー企業に注目しました。株式公開にはいくつかの目的がありますが、資金調達手段の多様化が目的の1つである場合、株価が低いこのような状況ではその目的が達成されません。株式上場を再検討する選択肢もあるのではないかと思われます。経営側から見ると、MBOなどを通じて非上場化することも選択肢の一つです。下表は、ユニバースのファミリー企業の中で持ち分50%以上と20%以上50%未満の2つのグループに分けて、TobinのQが0.8未満の会社をお示ししています。ROAとROEが低い企業にとっては、収益性のパフォーマンスが振るわないことが株価の低い理由と考えて良い場合が多いと思われます。しかし、ROAとROEが高くても株価が低いファミリー企業も散見されます。収益性のパフォーマンスは問題ないが株価は低いままの企業にとって、「非上場化」を検討することも方策の一つになりえます。投資家がエンゲージメントにおいて実際にそのような提案なり行動をするかどうかは別として、そのような視点に着目した投資戦略ということができます。

メトリカル:9月の株式相場は小幅高。CG Top20株価はTopix, JPX400に対して、大きくアウトパフォーム。

前月までの大幅上昇から、9月の株式相場は小幅高で終了。Topix, JPX400の両株価指数は当1ヶ月間ではそれぞれ0.52%および0.11%上昇。CGレーティング・スコアTop20株価は2.28%と両株価指数に対して大幅アウトパフォームした。累計のパフォーマンスでも大きくアウトパフォームを継続(下チャート参照)。

メトリカル:株主構成とパフォーマンス指標、投資戦略

当社はこれまで、大株主による株主保有形態と収益指標ならびに株価に統計上有意性のある相関があることに着目していました。株主の持ち分によって会社を大きく3つのグループに分類して考えてみます。(a) 50%以上の株式を保有する大株主が存在する会社、(b) 20%以上50%未満の株式を保有する大株主が存在する会社、(c)20%以上の株式を保有する株主が存在しない会社に分けて、当社ユニバースでパフォーマンス収益指標ならびに(過去3年間平均ROE, ROA)およびトービンのQで比較したのが下表です。


これを見ると、大株主が存在する会社のグループ(a)および(b) の大株主が存在しない会社のグループ(c)に比べて、ROA, ROE, Tobin’s Qのいずれにおいてもかなり高いことがわかります。この理由にはいくつかの仮説が考えられるでしょう。大株主の存在がリーダーシップを発揮しやすく迅速な経営判断が行われる、経営目標が株主目線に近くなる、多様な事業を抱えたコングロマリット企業が少なく得意事業に集中している、等々が考えられます。コーポレートガバナンスの観点で考えると、大株主以外の一般少数株主の声が経営に反映されづらいことから、大株主の存在は必ずしも良い面ばかりではありませんが、利益率と株価においては大株主の存在がプラスに作用しています。