メトリカル:ボードダイバーシティの最初の一歩(ジェンダー・ダイバーシティ)

かねてより、当社は女性取締役数を「いかに会社が変わろうとするのか」を測るうえでボードプラクティスの重要なファクターの一つと位置付けています。BDTIの調査(2021年3月26日現在、3,622社)によれば、2016年の全体の1.4%からは格段に改善はされてはいますが、上場企業の女性取締役の取締役会に占める比率は全体の6%に留まっています(下のグラフ参照)。

Metricalの東証一部上場企業を中心とするユニバース企業の調査でも、女性取締役がいかに少ないかがよくわかります(下のグラフ参照)。2021年4月末現在、ユニバースの1,729の上場企業のうち643社(ユニバース企業全体に占める比率は37.2%)には女性取締役が存在していません。676社(同比率は39.1%)が1名の女性取締役を採用し、2名以上の女性取締役を採用している会社は410社(同比率は23.7%)にとどまっています。

この度、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(SSGA)は議決権行使およびエンゲージメントのガイドライン-日本が注目されています。そのガイドラインの中で、「TOPIX500指数の構成企業については、少なくとも1名の女性取締役が取締役会メンバーに在籍することを期待する。この期待水準を満たしていない場合、指名委員会議長か、企業に指名委員会が無い場合は必要に応じて取締役会リーダーに反対票を投じる。」と公表しています。前述のMetricalの調査でもユニバースの1,729の上場企業のうち1,086社(62.8%)の取締役会には女性取締役が1名以上採用されているので、実際にTOPIX500指数の構成企業の大企業で本件に関して反対票が投じられるのは20%に満たないのではないかと推測しています。数々の調査において、ダイバーシティは取締役会の質を高めることに寄与し、企業活動の生産性を高め、価値創造に寄与すると報告されていますし、Metricalの価値創造の財務指標でも過去には実績ROEおよび実績ROAと統計的有意性のある正の相関が確認されたことがあります。よって、当社はもちろんSSGAの議決権行使およびエンゲージメントのガイドラインを支持します。一方で、この度のコーポレートガバナンス・コードの改訂で、女性取締役の採用に関する要件が盛り込まれなかったことをとても残念に思います。

毎年世界経済フォーラム(WEF)が国別に男女格差を数値化したジェンダーギャップ指数を発表しますが、本年3月に発表された「ジェンダーギャップ指数2021」で、日本は調査対象となった世界156カ国の120位(前年は121位)という順位でした。今年も経済と政治の分野のスコアが著しく低く、経済は117位(前年は115位)、政治は147位(前年は144位)で、教育92位(前年は91位)、医療は65位(前年は40位)でした。経済の分野に関して言えば、同調査は役員・管理職の女性が少ないこと(14.7%)、雇用者のうちパートタイムで働く人が、男性は男性労働者の22.2%であるのに対し、女性は50.8%がパート労働者であること、女性の収入は男性の収入の43.7%低いことが原因であると指摘しています。このように日本はジェンダーダイバーシティが進んでいない国としてよく知られています。とりわけCOVID-19パンデミック以降は、非正規労働や飲食業・アパレル業・観光業などコロナ影響が直撃する業態で働く割合の多い女性が雇用を失うなど経済的な試練に立たされ、女性の自殺者の割合が増加するなど、ジェンダーによる労働環境の歪みが社会問題化しています。ジェンダーダイバーシティはボードダイバーシティの最初の一歩と言えます。変化の速い世界の中で、いつまでもダイバーシティの低迷を許す時間の余裕はなく、組織や社会のトップから変えていかないといけないのではないかと思われます。その意味では取締役会の質の改善に寄与するダイバーシティの役割はとても大きいことは明らかです。

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