2019.11.18 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『企業が今後求められるESG関連情報開示への対応とは? ~ESG開示情報の標準化その他の流れを考える~ 』

資産運用業界の世界的な潮流であり日本でも今やブームともいえるESG投資ですが、データ策定団体も含め市場のプレーヤーが増えると共に開示媒体、開示方法、格付け基準などが多岐にわたり、ESG開示情報を利用する投資家サイドにも情報を提供する企業担当者サイドにも「ESG疲れ」ともいえる混乱が見受けられます。

内閣府令改正が求める役員報酬の開示と企業の対応

2019年1月31日、企業内容等開示内閣府令が改正され、有価証券報告書の様式が変更された。2019年3月期決算にかかる有価証券報告書につき、新様式への対応に追われた企業担当者は、大変なご苦労をされたと聞く。中でも神経を遣ったのは、役員報酬に関する記載ではなかったろうか 。

内閣府令の改正は、2018年6月28日公表の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)報告書を受けてなされたものであったが、同年11月にはカルロスゴーン氏の逮捕があり、かねてより議論になることの多かった役員報酬が、再び世論を騒がせた。そのような中で変更された新様式は、より広範で詳細な情報開示を求める。しかし、多くの企業のトップは開示を好ましくないものと捉える。ゴーン氏の報酬虚偽記載も、この嫌悪感が一因となっている。彼に限らず、報酬額の公表を避けたい気持ちは、人間の感情としては自然なものだろう。

内閣府令の要求とトップの意向、二つの相反するベクトルは、どのような有価証券報告書を生み出しただろうか。2019年6月末に公表された多くの有価証券報告書を分析した報告は、これから発表されるだろうが、本稿ではいくつかを概観して得られた感触をお伝えしたい。

日本の機関投資家も自身のESG処方が必要

日本の役員研修を支援する機関投資家のほとんどが日本の機関投資家ではなく海外の機関投資家というのはいったいどういうことでしょうか?

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は、「公共・公益に資する」非営利団体として設立しました。日本の市場に必要な役員・ガバナンス研修を質が高くかつ低価格で提供し、こうした役員・ガバナンス研修を日本でも広く普及させるために、 日本の機関投資家も 非課税で支援することが出来る組織として設計し、そのために公益認定を申請しました。しかし、その難しいプロセスを経てBDTIが公益の認可を取得して以降8年たちますが、機関投資家からの寄付金の95%は海外の機関投資家あるいはファンド・マネジャーによるもので、日本の機関投資家からの寄付金は5%未満にとどまっています。しかも日本機関投資家上位30社からの寄付は全くありません。

経産省、「SDGs経営/ESG投資研究会報告書」を公表

経産省は、6月28日、「SDGs経営/ESG投資研究会報告書」を公表しました。

【 政策提言の概要】

  1. 国際的なメッセージの発信
    1.1 「SDGs経営ガイド」の策定と発信(G20等の国際会合や多様なイベントでの発信/国内外の関係機関と連携した発信)
    1.2 ”Data Free Flow with Trust (DFFT)”
  2. 長期視点の企業経営の推進
    2.1 イノベーション「協創」に向けた取組(イノベーション経営の推進/新たな産学官連携に向けて/長期のリスクマネー供給の拡大)
    2.2人材投資、健康経営・ダイバーシティ経営の推進
    2.3 「非連続」を生む長期的な研究開発投資の推進
    2.4 戦略的な情報開示(SDGs経営と長期ビジョン/「価値協創ガイダンス」の更なる普及拡大)
  3. 投資家による長期投資の促進
    3.1 「アクティブ・ファンドマネージャー宣言」の浸透・拡大
    3.2 ESG投資のパフォーマンスの検証・整理等
    3.3 長期投資を促す市場構造への見直し
  4. SDGsを通じた新市場の開拓(サポートの可能性を検討/アジア・アフリカ市場の開拓推進施策とも連携)
  5. 国際的なルールメイキング
    5.1 国際的な投資関連動向の調査・分析とインプット
    5.2 「価値協創ガイダンス」フレームワークの国際展開
  6. 科学的・論理的な評価の浸透
    6.1 科学的・論理的な評価の徹底と浸透
    6.2 投資家・評価機関の手法の分析・整理
    6.3 国際標準づくりに向けた対応

メトリカル:決算発表が相次いだ5月、CG Top20株価はややアンダーパフォーマンスで終える、取締役会の議長についての考察

取締役会の議長

今月は取締役会の議長に注目してみたいと思います。
約1,800社の中で取締役会の議長を社外取締役が勤めている会社はわずかに27社しかありません。取締役会の舵取りを社外の取締役(独立取締役でない場合も含む)に託すというのは、どれだけ抵抗があることかみて取れます。下記がその27社です。

ダイバーシティ経営

3月後半、BDTI代表理事ニコラス・ベネシュが外部主催のセミナーで取締役会の多様性についてお話しさせていただく機会が続きました。質疑応答やパネル・ディスカッションでは活発な皆様との意見交換もあり、日本企業における取締役会の構成が大きく見直される機運が感じられました。

GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、国内株式の運用を委託している17機関(パッシブ7機関、アクティブ10機関、以下、運用機関)に対して、改訂版コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえ記載内容が充実していると 思われる「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」の選定を依頼し、延べ41社が選ばれました。

日本をダメにするイエスマン、「忠臣株主」に立ち向かう方法

ニコラス・ベネシュ (翻訳 市川佐知子)

概要: 機関投資家が本気になれば、企業の株式持ち合いを解消することは難しくありません。これを実現する方法として実務的なテクニックを1つご紹介します。

「忠臣株主」問題

最近の改革で改善したとはいえ、企業の株式持ち合いは依然日本市場の大きな問題です。株価連動インセンティブの小さい経営陣や社外取締役は、めまぐるしい市場経済の変化の中で現状維持に甘んじ、ビジネスリスクをとって収益性を追求する戦略を練らず、経営陣のイエスマンである「忠臣株主」は何も言わない、そしてこれらの経営陣や社外取締役は再任を重ねる、という悪循環が続いています。企業のことを真剣に考える株主の諫言は大きくなりつつありますが、忠臣株主のイエスの大コーラスの前に、かき消されてしまいます。