磯山氏ブログ『「モノ言う株主」に変身する機関投資家 注目される「議案賛否の個別開示」』

経済ジャーナリスト磯山友幸氏のブログで今年の株主総会における議決権行使の動向について、「生命保険会社など機関投資家が「スチュワードシップ」活動を一段と強化し、株式を保有する企業の議決権行使について、保険契約者の利益を第一に考える姿勢を鮮明にしていた」と分析しています。

大きな変化が2点あげられています。
① 予想以上に会社側議案への反対票が目立った。
② 議決権行使内容の賛否を個別開示する意向を固める機関投資家が出てきた。

Bloomberg 『守りのセコム、年金運用はアクティブで攻める-ガバナンス重視』

Bloomberg佐野七緒記者と竹生悠子記者は、事業会社(金融機関除く)の年金基金で唯一、機関投資家の行動原則「スチュワードシップ・コード」を受け入れている国内警備業界トップのセコムの年金基金についてレポートしています。BDTIが以前より課題として指摘している年金ガバナンスを取り上げ、ベネシュ代表理事のコメントも掲載されました。

GPIFのスチュワードシップ活動原則、議決権行使原則は「各国のコーポレートガバナンス・コード」について言及

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、6月1日に公表した「スチュワードシップ活動原則」「議決権行使原則」に下記のように各国のコーポレートガバナンス・コードに関する言及があることは注目に値します。

スチュワードシップ活動原則
○運用受託機関は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書、統合報告書等に記載の非 財務情報も十分に活用しエンゲージメントを行うこと。
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コード又はそれに準ずるものの各原 則において、企業が「実施しない理由」を説明している項目について、企業の考えを十分 にヒアリングすること。

議決権行使原則
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コードが企業に対して求めている事 項を踏まえて適切に議決権行使すること。同様のコード又はそれに準ずるものが無い場合 には各運用受託機関が投資先企業に求める水準に従って適切に議決権行使すること。

パナソニックによるパナホーム完全子会社化の対価はなぜ上がったのか?

外国法事務弁護士・米NY州弁護士 スティーブン・ギブンズ(Stephen Givens)

パナソニック・パナホームの完全子会社化取引
従来の買値が言われた通り正しければ、なぜその後20%引き上げたのか?

パナソニックは昨年12月、東京証券取引所1部に株式を上場する住宅事業子会社パナホーム(大阪府豊中市)を株式交換で完全子会社にすると発表した。ところが、今年4月、この株式交換の契約を解約し、代わりに、市場で株式を公開買い付け(TOB)することで完全子会社にすると発表した。これら発表が実現した場合にパナホームの一般株主が受け取る代金はそれぞれ大きく食い違っているが、それに関するパナソニックの説明はおよそ信用できない。これは、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の遅れを示している。

パナソニックは昨年12月の発表の後、「上場子会社」住宅メーカーのパナホームを完全子会社化するための株式交換提案の妥当性を繰り返し主張してきた。それらパナソニックの説明が本当に正しければ、4月になっての提案変更は必要なかったはずだ。しかし、パナソニックは提案を変更した。それまでパナホームが一般株主に説明した対価の計算と数値のどの部分がなぜ変わったのかを明確に説明することなく、パナソニックは対価を突然およそ20%(180億円相当)引き上げた。パナホームの株主にとっては、昨年暮れの提案より、ましな提案だと言えるが、パナソニックの株主にとってはどうだろうか。

パナソニックの株主は、当然のことながら「なぜ我々の財布から出る180億円分の値上げが本当に必要なのか?」についての説明を求めるだろうが、パナソニックの経営陣はその説明責任を十分果たしていない。パナソニック株主としては、パナホームをできるだけ安く100%子会社にしたい、と考えるのは当たり前だ。パナホームの一般株主は、原案より対価が20%も高くなり悪い気はしないだろうが、その反面、原案の説明が正しくなかったことが明白になり、その変更案を信頼するに足るか疑問を感じざるを得ない。その変更案の信頼性の担保がないからだ。

なぜこのような始末になったのか?

GPIF、「スチュワードシップ活動原則」と「議決権行使原則」を公表

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、6月1日、「スチュワードシップ活動原則」「議決権行使原則」を公表しました。国内株式及び外国株式を運用する運用受託機関に対して議決権行使を含むスチュワードシップ活動の遵守を求め、これを適切にモニタリングし、運用受託機関と積極的に対話(エンゲージメント)を実施するとしています。

GPIFがこうした方針を公表したことは、確かに大きな進展と言えます。ただし、以下に引用した内容などを見ると、他の国の公的年金と比較するとまだまだ曖昧でとても短い方針にとどまっています。どちらかと言えば、投資先企業がコンプライしていない時に「その企業の考えを十分にヒアリングすること」に重点を置いているという印象です。議決権行使方針に関しては、これまでと同様GPIFとしての方針はないため、結果的には運用機関任せとなっています。年金ガバナンスの問題にご興味のある皆様はどの様な印象を受けたでしょうか?

経産省『価値協創ガイダンス』公表

経済産業省は、5月29日、『価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス -ESG・非財務情報と無形資産投資-』(価値協創ガイダンス)を公表しました。企業価値向上に向けて、企業経営者と投資家が対話を行い、経営戦略や非財務情報等の開示やそれらを評価する際の手引となるガイダンス(指針)と位置付けています。(説明資料)

ガイダンスの概要:(以下引用)

スチュワードシップ・コードと日本企業年金基金

セコム企業年金基金は、2011年3月30日に『国連責任投資原則(国連PRI)』に署名したのに続き、2014年2月28日には金融庁が策定した「責任ある機関投資家の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)」の受け入れを表明しました。現在に至るまでスチュワードシップ・コードを受け入れている唯一の(非金融系)事業法人系年金基金です。

同基金は、株式運用を委託している運用機関に対して、投資先企業に対するエンゲージメント活動への積極的な取り組みを推奨するとともに、活動の一環として行う議決権行使結果を公表しています。

議決権行使結果 (2016-2017年)
https://www.secom.co.jp/corporate/csr/pdf/201705_voting_rights.pdf

(2015-2016年)https://www.secom.co.jp/corporate/csr/pdf/201606_voting_rights.pdf

(出所:https://www.secom.co.jp/corporate/csr/stewardshipcode.html  )

翻って、他の700ぐらいの大企業の確定給付型の企業年金基金は、「わが社は従業員をとても大事にしている」といいながら、なぜスチュワートシップ・コードを受け入れないのでしょうか?

磯山友幸氏ブログ『東芝よ、日本の監査制度をコケにするのもたいがいにしろ なぜ誰も怒りを表明しないのか』

経済ジャーナリストの磯山友幸氏は、現代ビジネスと自身のブログにて、東芝が5月15日に監査法人からの監査意見を得ないまま2017年3月期の「連結業績概要」を発表した事について、「東芝一社の問題にとどまらず、日本の資本制度の根幹を問うている。』と厳しく指摘しています。