日本における「効率的なエンゲージメント」:サンプル・エンゲージメント・レター

仮に私が40社以上の日本企業株式に長期投資する機関投資家の議決権行使責任者を務めていたとしたら使用するであろうエンゲージメント・レター(日本語・英語)のサンプルを作成しました。その場合、保有銘柄が多いので年4回以上も直接面談するような時間はとれないので、効率的な対話方法を使わなければなりません。多くの機関投資家に共通する状況だと思います。

効率的エンゲージメントのためには、企業に対する提案を詳細な文書にして、できる限り迅速に提出する必要があると考えています。さもなければ、主要株主だったとしてもその提案内容が取締役会に正確且つ詳細に伝わることはありません。何しろ、詳細(又は全て)はIR部長で止まってしまう恐れがあるからです。また、内容によってはガバナンス・プラクティスとして日本ではまだ新しいものがあり、面談による口頭のコミュニケーションで完全に伝えるのはとても難しいという点もあります。

第14回スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議

2月15日、金融庁のスチュワードシップ・コード及びCGコードのフォローアップ会議が開かれ、①投資家と企業の対話ガイドライン(案)と②投資家と企業の対話ガイドラインの策定に伴うコーポレートガバナンス・コードの改訂に係る論点について話し合われました。

投資家と企業の対話ガイドライン(案)
投資家と企業の対話ガイドラインの策定に伴うコーポレートガバナンス・コードの改訂に係る論点

経産省『統合報告・ESG対話フォーラム』を設置

経産省が立ち上げた「統合報告・ESG対話フォーラム」の第1回会合が12月18日(月)開催されました。当フォーラム設置の主旨について下記のようにリリースで説明されています。

「本フォーラムにおいて企業の統合的開示の好事例の分析を行い、その成果を広く公表することにより、企業のESG(環境、社会、ガバナンス)要素も念頭に置いた中長期的な価値向上に資する開示を促進します。同時に投資家の投資手法を検討し、優れた投資手法の普及・発展を促進します。これらにより企業と投資家の対話が深まることを通じた、日本企業の「稼ぐ力」の更なる向上を目指します。」

金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」第1回会合開催

金融庁は、12月11日、企業情報の開示・提供のあり方に関する検討を目的とするディスクロージャーワーキング・グループの第1回会合を開催しました。

企業開示を巡る課題の例として次のようなテーマが挙げられています:
(以下会合資料より抜粋)

Ⅰ 「財務情報」及び「記述情報」(非財務情報)の充実
財務情報、及び、財務情報をより適切に理解するための企業の中長期的なビジョン・見通し・業績に関する評価 などを説明する記述情報を充実させるべきとの指摘。 (例えば、経営戦略、MD&A、リスク情報、雇用関係の情報など)

Ⅱ 建設的な対話の促進に向けたガバナンス情報の提供
対話の観点から、提供されることが望ましいガバナンス情報を充実させ、また、提供方法も改善すべきとの指摘。 (例えば、政策保有株式や役員報酬の決定方針など)

Ⅲ 提供情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組み
投資判断や建設的な対話に必要な情報の適時の提供と、その信頼性を投資家が判断する際に有用な情報の提 供を一層図るべきとの指摘。 (例えば、会計監査に係る情報、情報開示のタイミングなど)

Ⅳ その他の課題
情報通信技術の進展等を踏まえ、投資家のニーズにあった分かりやすい情報提供を図るべきとの指摘。 (例えば、EDINETの利便性、英文による情報提供など)

ベネシュ代表理事コメントが The Economist 誌に掲載されました。

The Economist誌サイトにて、11月23日付記事『The craze for ethical investment has reached Japan』にてBDTI代表理事ニコラス・ベネシュのコメントが掲載されました。

日本における最近のESG投資の波について、以下のように紹介されました。

「Nick Benes, who heads the Board Director Training Institute of Japan, an educational body, says he is “all for” the enthusiasm for ESG in Japan. But he frets that Japanese companies are focusing on environmental and social aspects at the expense of governance. “That is the real driver of sustainability,” says Mr Benes. “But here it’s a big, bold E and S, and a small, plain G.”」

品質データ偽装事件と経営者の倫理(山口利昭弁護士ブログ)

山口利昭弁護士が同氏ブログにて『品質検査データ偽装事件の発覚経過を機関投資家はどうみるか?』というタイトルで機関投資家の視点について『「組織ぐるみ」でないかぎり、またステイクホルダーに多大な損害が発生しないかぎりは機関投資家の企業評価自体は下がらないとみています。要はこのような不祥事発生への経営陣の関与、不祥事発覚時の経営陣の対応が全てであり、「この社長の言動に表と裏がないか」というところが機関投資家の注目点』とコメントしています。

企業年金連合会、複数の機関投資家との協働エンゲージメント活動開始

企業年金連合会は、11月1日、『スチュワードシップ責任を果たすための方針 』を改訂し、今後の議決権行使結果個別開示と集団的エンゲージメントに関する言及が追記されました。

集団的エンゲージメントに関しては、
「(原則4) 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企 業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
連合会は「アセットオーナー」として、運用受託機関が投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて投資先企業と認識の共有を図るとともに問題の改善 に努めることを求める。連合会は「運用機関」として、上記の低コスト運用のメリットを阻害しない範囲で、外部の専門機関を利用するなどしてコストの低減を図りながら当原則を実施する。また、連合会は、他の機関投資家と協働して投資先企業との建設的な「目的を 持った対話」に取り組む。
として、HPで「一般社団法人機関投資家協働対話フォーラムが主宰する「機関投資家協働対話プログラム」に機関投資家メンバーの一員として参加し、協働エンゲージメント活動を行っています。」としています。

経産省『伊藤レポート2.0』公表

経産省は、10月26日、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)」(通称『伊藤レポート2.0』)を公表しました。2014年に発表した「伊藤レポート」後に生じた動きを総括しつつ、無形資産投資やESG等を巡る論点を深掘りして議論し、今後の政策対応等を検討した成果と位置付け、その内容を以下のように要約しています。

第11 回「スチュワードシップ・コード及び コーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」

金融庁・東京証券取引所共催の第11回「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が、10 月18 日、開催されました。

コーポレート・ガバナンス改革を巡る課題として下記の点が指摘され、これらのテーマを中心に今後議論が進められて来年6月の株主総会シーズンまでに何らかの意見書やガイダンスがまとめられるようです。

(1)投資と内部留保
現預金の形での内部留保が増加
設備・人材・研究開発投資の水準に課題
(2)経営環境の変化に対応した経営判断
経営環境の変化に応じた事業洗濯などの果敢な経営判断が行われていない
経営者の資本コストに対する意識を高めていく必要
(3)CEO・取締役会
CEOの育成・選任に向けた取り組みが不十分
社外取締役の実効的な機能発揮を促して必要
(4)政策保有株式
政策保有株式の縮減が進んでいない
(5)アセットオーナー
企業年金によるスチュワードシップ・コードの受け入れが少ない