ウェビナー「会社支配権争いと株主利益の毀損」動画公開

2022年1月17日、「会社支配権争いと株主利益の毀損」―これまでの歴史、今突きつけられた問題、今後の行方―と題したウェビナーを開催いたしました。

ここへ来て買収防衛策の廃止傾向は鈍化し、逆に再導入する企業も出てきています。そして実際に、買収者と買収対象企業の現経営陣とが支配権を巡って攻防を続け、新聞紙上を賑わす事件も散見されます。特に、東証1部上場の新聞輪転機メーカーの事件では、買収者を排除した株主総会決議によるポイズンピルの発動が、裁判所によって認容される事態となりました。

ポイズンピルについては、敵対的買収を困難にさせることで、買収の脅威を通じた経営の規律の向上を弱める点や、経営者の保身を図るための手段として用いられかねないという点などが一般的に問題視されるわけですが、この事件ではポイズンピル発動の判断に際して買収者の議決権行使が否定されており、株主平等の原則との関係で新たな問題が加わっています。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか?2021年 〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。2022年4月の東証の市場区分の再編に伴い、2021年はコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われました。上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みも前に進むことが期待されます。その取り組みの成果によって、どのくらいコーポレートガバナンスが改善されたのかを数値を持って見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月のMetricalによる各評価項目の評価と2021年12月のそれらの推移を示していて、この1年間の上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みがどれくらい改善しているかを見ることができます。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的な評価を示すものです。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることがわかります。コーポレートガバナンス・コードの改訂の影響もあって、上場会社がコーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身についてもう少し詳しく見てみましょう。

Introducing the enjoi Wolfpack, a DEI Leadership Program for Corporate Men

(日本語訳は英語に続きます)

DEI Business Strategy is not a “Nice to Have”

Are you a forward-looking man in corporate Japan with an interest in learning how to shift your organization towards healthier, more equitable, and more innovative dynamics? 

Building diversity-positive workplaces is no longer a “nice to have.” It is now an IMPERATIVE just for baseline business continuity. Diverse talent mobilization strategy can no longer be delegated to the HR function where it is often under-resourced and disconnected from holistic innovation and business strategy.

Research by the Economist Intelligence Unit shows that just 38% of Japanese companies report that C-level executives have responsibility for the formulation of talent-management strategy, compared to 65% in the global results. If CEOs in Japan want to stem financial losses from talent attrition, building a gender-equal and diversity-positive workplace is the foundation.

That’s why we have developed the enjoi Wolfpack program.

This new, one-of-a-kind, six-month executive education program from enjoi Japan K.K. runs biweekly as virtual meetings on Monday evenings, 8:00-9:30 pm JST beginning February 28, 2022. There are three different packages available at three price levels: Wolfpack Explorer, Wolfpack Leader, and Wolfpack Mastermind.

There is only a limited number of spots still available in this confidential DEI leadership program! Applications close as soon as seats sell out. Final application deadline is February 15, 2022.

Visit www.en-joi.com/wolfpack to request pricing details and apply now!
We also welcome inquiries at wolfpack@en-joi.com.

メトリカル:買収防衛策③ 買収防衛策を持っている会社のアンダーパフォーマンスの背景にあるものは何か?

前回の記事「メトリカル:買収防衛策② 株価パフォーマンスは?(BDTIデータを利用したMetrical分析)」では、現在でも買収防衛策を有している会社は上場会社全体で271社あり、当該271社の多くは株式時価総額が相対的に小さく、また、当該グループの5年間の株価パフォーマンスは各株価指数と比較してアンダーパフォームしていることが確認されました。

さて、今回はその前の記事「買収防衛策③」で立てた仮説の検証を試みたいと思います。買収防衛策条項を今も持っている会社の多くは株式時価総額が小さく、株式時価総額の成長が緩慢なペースである背景に何かあるのではないか。買収防衛策を保有していることを投資家に事前警告することによって、投資家が投資対象から外すこと以外に、当該会社の株価パフォーマンスが劣っていることには何かが関連していないか考えてみたいと思います。以前の記事では、会社の成長性の方針が明確でない、そのような成長方針を投資家に伝えきれていない、IRなどの機能を使いきれていないなどが複合的に関連しているのではないかと仮説を立てました。

そもそも事前警告型の買収防衛策があると投資家が投資を躊躇うために、当該会社の株価が低くなると言いこともできますが、東証の開示資料「White Paper on Corporate Governance2021」の次の考え方が参考になります。「買収防衛策を導入していない会社の中でその理由を説明している会社をみると、企業価値を高めることが最良の買収防衛策であると考え、現状では買収防衛策の導入を予定していないとの説明が大半である」との買収防衛策を保有していない会社の回答からも、上述の仮説と共通するところがあります。買収防衛策を保有している会社は企業価値を高めるための取り組みが十分でない一方で、買収防衛策を保有していない会社はその取り組みを実践する傾向があると推測することができます。

メトリカル:買収防衛策② 株価パフォーマンスは?(BDTIデータを利用したMetrical分析)

ポレートガバナンス・プラクティスを分析しました。その分析結果では、2014年以降で買収防衛策を株主総会の議案に提案したことが確認された会社421社のうち、現在は買収防衛策を採用していない会社のパフォーマンス指標としてのROE、ROA、P/B、コーポレートガバナンス・プラクティス指標としての独立取締役比率と女性取締役比率において、優れた数値を示していました。

今回は、当該データからもう少し分析を進めてみましたので、ご紹介したいと思います。BDTI様のデータにおいて、2014年以降で買収防衛策を株主総会の議案に提案したことが確認された会社は443社で、そのうち買収防衛策の議案が否決された会社は10社で、可決された会社が433社でした(下表参照)。このことからも分かるように一旦買収防衛策が議案として提案されると大方可決されることになります。可決されるか否決されるかは、会社の株主構成に依存し、主に外国人株主の持株比率に負うところが大きいと考えられています。東証の開示資料「White Paper on Corporate Governance2021」でも「外国人株式所有比率でみると、買収防衛策を導入している比率は30%以上の区分で2.7%と最も低く、前回調査より3.7ポイント減少している。また、20%以上30%未満の区分では9.2%と、前回調査より11.1ポイントと大きく減少している。筆頭株主の所有比率との関係をみると、筆頭株主の所有比率が低い区分で導入比率が高い傾向がみられるが、所有比率が5%未満の区分では13.8%と、前回調査より9.5ポイントと大きく減少した。」と述べています。

下表の通り、前回の分析でお示ししたように2014年以降で買収防衛策を株主総会の議案に提案したことが確認された会社433社のうち、今も上場している会社が421社あり、その中で買収防衛策を現在では保有していない会社が41%の173社、現在でも買収防衛策を保有している会社は59%の248社です。上述の通り、買収防衛策を現在では保有していない会社のパフォーマンスとコーポレートガバナンス・プラクティスにおいて優れた数値を示しています。さらに、株式時価総額で見ても、買収防衛策を現在では保有していない会社と現在でも買収防衛策を保有している会社の間には大きな差があることもわかります。