メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか?2021年 〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。2022年4月の東証の市場区分の再編に伴い、2021年はコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われました。上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みも前に進むことが期待されます。その取り組みの成果によって、どのくらいコーポレートガバナンスが改善されたのかを数値を持って見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月のMetricalによる各評価項目の評価と2021年12月のそれらの推移を示していて、この1年間の上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みがどれくらい改善しているかを見ることができます。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的な評価を示すものです。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることがわかります。コーポレートガバナンス・コードの改訂の影響もあって、上場会社がコーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身についてもう少し詳しく見てみましょう。

次のチャートは独立取締役比率です。独立取締役が取締役総数に占める割合はボードプラクティスの主要指標で、これまでの分析で上場会社のパフォーマンス指標とも密接に関連することがわかっています。改訂コーポレートガバナンス・コードはプライム市場に上場する会社には独立取締役比率を1/3以上にすることを求めていますので、2021年は独立取締役比率が上昇することが期待されました。依然として30%台が最も多いですが、2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることことから、本比率が改善したことがわかります。本比率50%以上も前年と比べれば増えましたが、全体としては圧倒的に少ないことがあらためてわかります。これまでの分析でも上場会社のパフォーマンスにもポジティブな影響が確認されていますから、本比率50%以上になってからがが、本当にコーポレートガバナンス・プラクティスに良い効果が現れてくると推測されます。今後も本比率が継続して改善していくかみていく必要があります。

下のチャートは取締役会の議長を誰が務めているかを示すスコアです。独立取締役が議長を取締役が務めている場合にスコア2で評価しています。圧倒的に多数の会社で社内執行取締役が取締役会の議長を務めていることがわかります。2020年12月と比べても2021年12月の分布はほとんど変化していません。本スコアは上の独立取締役比率と並んで重要なボードプラクティスの評価項目と考えられますが、独立取締役比率と異なって本比率はほとんど改善が見られていません。コーポレートガバナンス・コードの改訂に関係なかった項目に関しては、上場会社が取り組みを進めていないとても残念な傾向がわかります。

次のチャートは女性取締役比率です。女性取締役比率も2020年12月に比べると2021年は12月のそれはわずかながら改善が進みました。しかし、本比率30%を超える会社は極めて少数です。改訂コーポレートガバナンス・コードでダイバーシティの重要性への言及はありましたが、数値目標などが示されていないことから改善の度合いは限定的であるという言わざるを得ません。本比率はこれまでの分析でも上場会社のパフォーマンスにもポジティブな影響が確認されています。日本政府は女性管理職比率(女性取締役比率よりも対象が広い)を30%にするという目標を10年後に先送りしたことからもわかるように、本比率の改善が遅れをとっていることが確認できます。

次のチャートは代表取締役(CEO)を退いた後も顧問・相談役として何人が会社にとどまっているかを示すものです。この日本独特の慣習はもちろんコーポレートガバナンス・プラクティスとしてネガティブなプラクティスです。すべての上場会社が本データをコーポレートガバナンス報告書に開示しているかは不明ですが、顧問・相談役の人数は2020年12月に比べると2021年は12月のそれはわずかながら改善が進みました。

次のチャートは指名委員会スコアです。指名委員会が設置されているか、同委員会のメンバーの過半数が独立取締役で占められているか、同委員会の議長を独立取締役が務めているかを評価の対象にしています。改訂コーポレートガバナンス・コードはプライム市場に上場する会社には任意の委員会であっても指名委員会を設置して、同委員会のメンバーを独立取締役が過半数を占めることを求めていますので、2021年は同スコアが上昇することが期待されました。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることことから、任意の指名委員会が設置されたことがわかります。同委員会のメンバーの過半数が独立取締役で占めるケースも増加しました。一方で、改訂コーポレートガバナンス・コードが同委員会の議長のプロファイルに関してプライム市場に上場する会社に求めていないことから、同委員会の議長を社内執行取締役が務めているケースも少なくありません。取締役に占める独立取締役が過半数に満たない中で、実質的に指名委員会が機能しているか注目する必要があります。

次のチャートは報酬委員会スコアです。報酬委員会が設置されているか、同委員会のメンバーの過半数が独立取締役で占められているか、同委員会の議長を独立取締役が務めているかを評価の対象にしています。改訂コーポレートガバナンス・コードはプライム市場に上場する会社には任意の委員会であっても報酬委員会を設置して、同委員会のメンバーを独立取締役が過半数を占めることを求めていますので、2021年は同スコアが上昇することが期待されました。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが高い右方に移っていることことから、任意の指名委員期が設置されたことがわかります。同委員会のメンバーの過半数が独立取締役で占めるケースも増加しました。指名委員会と比べると報酬委員会の設置と運営には社内執行取締役と独立取締役の間でそれほど大きな問題がないと考えられることから、報酬委員会のプラクティスは指名委員会よりも取り組みは進んでいます。

次のチャートは買収防衛策です。多くの上場会社はすでに事前警告型の買収防衛策条項を採用しないと開示していることから、この1年間で大きな変化は見られません。現在でも本買収防衛策条項を採用している会社が本条項を廃止することは何かのきっかけがない限りは難しいのかもしれません。

次の記事では他の評価項目について述べたいと思います。

CG スコア Top100:
コーポレート・ガバナンス・ランキング Top 100 をもっと見たい。
http://www.metrical.co.jp/jp-cg-ranking-top100

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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
akimatsumoto@metrical.co.jp
http://www.metrical.co.jp/jp-home/

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