『改正会社法及びコーポレートガバナンス・コードへの対応状況と監査役・監査役スタッフの役割における今後の課題』

公益社団法人 日本監査役協会関西支部 監査役スタッフ研究会が、監査役会のあり方、監査役監査、会計監査人の選解任、企業集団の内部統制等に関して監査 役等及び監査役スタッフに求められる役割についてまとめた『改正会社法及びコーポレートガバナンス・コードへの対応状況と監査役・監査役スタッフの役割における今後の課題』を8月8日に発表しました。

本年2月に実施した企業アンケートによる企業の具体的な現状をもとに今後の課題についての考察もされています。

パナソニックによるパナホーム完全子会社化の対価はなぜ上がったのか?

外国法事務弁護士・米NY州弁護士 スティーブン・ギブンズ(Stephen Givens)

パナソニック・パナホームの完全子会社化取引
従来の買値が言われた通り正しければ、なぜその後20%引き上げたのか?

パナソニックは昨年12月、東京証券取引所1部に株式を上場する住宅事業子会社パナホーム(大阪府豊中市)を株式交換で完全子会社にすると発表した。ところが、今年4月、この株式交換の契約を解約し、代わりに、市場で株式を公開買い付け(TOB)することで完全子会社にすると発表した。これら発表が実現した場合にパナホームの一般株主が受け取る代金はそれぞれ大きく食い違っているが、それに関するパナソニックの説明はおよそ信用できない。これは、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の遅れを示している。

パナソニックは昨年12月の発表の後、「上場子会社」住宅メーカーのパナホームを完全子会社化するための株式交換提案の妥当性を繰り返し主張してきた。それらパナソニックの説明が本当に正しければ、4月になっての提案変更は必要なかったはずだ。しかし、パナソニックは提案を変更した。それまでパナホームが一般株主に説明した対価の計算と数値のどの部分がなぜ変わったのかを明確に説明することなく、パナソニックは対価を突然およそ20%(180億円相当)引き上げた。パナホームの株主にとっては、昨年暮れの提案より、ましな提案だと言えるが、パナソニックの株主にとってはどうだろうか。

パナソニックの株主は、当然のことながら「なぜ我々の財布から出る180億円分の値上げが本当に必要なのか?」についての説明を求めるだろうが、パナソニックの経営陣はその説明責任を十分果たしていない。パナソニック株主としては、パナホームをできるだけ安く100%子会社にしたい、と考えるのは当たり前だ。パナホームの一般株主は、原案より対価が20%も高くなり悪い気はしないだろうが、その反面、原案の説明が正しくなかったことが明白になり、その変更案を信頼するに足るか疑問を感じざるを得ない。その変更案の信頼性の担保がないからだ。

なぜこのような始末になったのか?

BDTIクラスアクション・リスク管理勉強会のお誘い

日本版クラスアクションの導入。きちんと事業していれば恐れる必要はない、とも言われますが、企業のリスクマップは多少なりと変わります。また、米国で起こされるクラスアクションにも新たな傾向が認められます。

企業の情報(文書・データ)管理について方針を見直す企業が最近多いようですが、提訴後まで見据えた証拠の取り扱いとして適切な方針になるよう、注意が必要です。米国での訴訟に巻き込まれ、証拠保全で痛い目にあう日本企業が増えているのです。

上記のような課題についてholisticに考えるため、1月23日開催のBDTIセミナー『クラスアクション元年-企業の備え』にパネリストとしてご参加いただきました島岡聖也氏を座長とするBDTI勉強会に参加しませんか?

『選任等・報酬等に対する 監査等委員会の意見陳述権行使』

日本監査役協会は、11月24日、『選任等・報酬等に対する監査等委員会の意見陳述権行使の実務と論点―中間報告としての実態整理―』と題するレポートを公表しました。監査役及び監査委員会にはない新たな権限の行使のあり方を検討するための論点を議論するに際して海外の実態、実際に監査等委員会設置会社に移行した企業へのアンケート等を中間報告という形でまとめたものです。(詳細、報告書のダウンロードは。。。。)

国際的腐敗行為防止事件の展開2016年9月の10大ニュース

モリソン・フォースター外国法事務弁護士事務所は、11月22日、リーガルニュース” 国際的腐敗行為防止事件の展開2016年9月の10大ニュース” (日本語・英語版)を公表しました。
同誌では、「9月の国際的腐敗行為に関する事件の進展について最も重要なものについて、要約と、情報源のリンクを提供する。米国司法省(DOJ)の「ディスゴージメント(利益吐き出し)を伴う不起訴処分」とは何か。証券取引委員会(SEC)がその会計年度最終月に解決できたFCPA事件がいくつあったか。韓国の新腐敗行為防止法の抵触を避ける方法はどのようなものか。これらの答えをこの2016年9月の10大ニュースで紹介」しています。(…以下詳細)

金融庁、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表

有価証券報告書の記載内容に「経営方針」を加えるための改正案です。

http://www.fsa.go.jp/news/28/sonota/20161108-2.html

今回の改正案は、4月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告で、企業と投資家との建設的な対話を促進していく観点から、現在、決算短信の記載内容とされている「経営方針」について、決算短信ではなく有価証券報告書において開示すべきことが提言されたことを受けたものです。

【改正による追加項目】
経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
a 最近日現在において連結会社(連結財務諸表を作成していない場合には提出会社。)が経営方針・経営戦略等を定めている場合には、当該経営方針・経営戦略等の内容を記載すること。また、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載すること。

株主利益を無視?―取締役は買付価格にして1.6倍 明らかに好条件の対抗提案を無視できるか

日本のM&Aに一石を投じる案件である。投資ファンドのアスパラントグループが和装のさが美の株式を、さが美の親会社であるユニー・ファミリーマートHDから56円で買い取るTOBを公表したのは8月17日。続く9月27日、こちらも投資ファンドのニューホライズンが、ユニー・ファミリーマートとに対して70円でさが美株式を買い取るという対抗提案を申し入れ、さらに30日には90円に引き上げている。買付価格にして1.6倍、この経済的には明らかに好条件の提案に対して、しかしながら、ユニーはいまだ沈黙を続けたままだ。

日本企業においては、企業価値の最大化が経営陣の第一義的な責務とは、必ずしも考えられてこなかった。ある意味、個人株主の経済的利益をおざなりにしてきたこの企業風土にメスを入れるのが、昨今のコンプライアンス改革である。

日本企業のコンプライアンス意識は果たして変わったのか。ニューホライズンの提案に対するユニー・ファミリーマートの対応は、その試金石となるだろう。事案を詳ししく見ていこう。

Jones Day:「少数株主のキャッシュ・アウトにおける株式取得価格に関する最高裁決定」

「最高裁判所(第一小法廷)は、平成28 年7 月1 日、公開買付け後に少数株主のキャッシュ・アウトのために行われた全部取得条項付種類株式の取得の価格決定につき、実務上大きな影響を与える決定(以下「本決定」といいます。)を下しました。

本件は、公開買付けに応じず、その後、全部取得条項付種類株式の取得によって強制的に株式を取得された少数株主が、公開買付価格と同額とされた当該株式の取得価格につき不満を示し、裁判所に対し、公正な取得価格の決定を申し立てた事案です(平成27 年5 月の改正会社法施行前において、普通株式を全部取得条項付種類株式に転換した上でこれを強制的に取得するという手法が、少数株主のキャッシュ・アウトのための手段として頻繁に使用されていました)。

コーポレートガバナンス国際比較法

8月上旬、東京大学法科大学院のサマースクールに参加した。今年のテーマはコーポレートガバナンス。様々な法域から訪日した7名の教授陣による国際比較法講座となり、さらには経済学からの視点も合わさって、大変興味深い内容であった。比較法で重要な軸となるのが「機能」。プリンシパル・エージェンシーコストのうち、株主・経営陣間にあるそれを軽減するという機能から見ると、独立取締役、敵対的TOB、proxy-fight、株主代表訴訟が同列に論じられるというのが、今更ながらに新鮮であった。

ドイツから来たハラルド・バウム教授は、BDTIのアドバイザーでもある。ドイツは、1861年から2層式のスーパーバイザリーボードという機関設計をとり、経営と監督の分離が確立している。しかし、監督者の多くは、経営陣や大株主と関係を持っており、さらには1976年からは従業員代表取締役も加わることとなって、さらに内部者色が強まった。経営陣や大株主から隔絶した「独立取締役」というアイデアは、創業家の影響力の前に、未だ浸透が進まないようである。詳しくは、バウム教授のレポート”The Rise of the Independent Director: A Historical and Comparative Perspective”を参考にされたい。

創業家の影響力については、日本の上場企業でも経営陣との対立を巡ってしばしば話題を呼ぶ。イギリスのメイ首相はコーポレートガバナンス規制の改革を表明し、ドイツ式の従業員代表取締役に感心を寄せている。今後、ドイツのコーポレートガバナンスが注目される機会が増えそうである。