パナマ文書と文書化義務

パナマ文書により、国際税務に関する関心が再度高まっています。

OECDでは、BEPS*対策として、行動計画を取りまとめています。そのうちの行動13は「多国籍企業情報の文書化」です。

*BEPS: Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転:多国籍企業が国際的な税制の隙間を利用して租税回避する問題

これを受けて、日本の平成28年度税制改正は、租税特別措置法の一部を改正し、移転価格税制に係る文書化を一定の多国籍企業グループに義務付けました。

https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf

該当する企業は、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書などの文書が、適切に作成・提出・保管される体制を構築する必要があります。会社法もまた、企業集団の業務の適正が確保される体制を求めており、海外子会社も含めて整合的に移転価格を取り扱うことがさらに重要になるでしょう。また、税務当局による移転価格調査も容易・広範になり、課税額に関する争訟が将来増えることも考えられるところです。

以下では、田辺総合法律事務所が過去に取り扱った、移転価格税制に関する事例をご紹介します。

山口利昭弁護士ブログ:ロート製薬社の企業統治と執行役員制度の廃止

business houmu

山口利昭弁護士がロート製薬がこの度発表した執行役員制度の廃止について、日本企業のコーポレート・ガバナンス改革の一環としてモニタリングモデルを標榜する取締役会における「執行と監督の分離」の流れの一例としてブログで紹介しています。同ブログでも触れられている通り、執行役員制度というのは、基本的には従業員で、社内的には役員待遇、すべての業務を網羅しているわけでもないきわめて「あいまいな」役職であり、会社法上にも執行役員なる概念は存在していないにもかかわらず、一般社会では役員と誤解される場合も少なくありません。

アメリカ連邦量刑ガイドラインから学ぶ内部統制

us sentencing

アメリカに連邦量刑ガイドラインというものがあります。犯罪の量刑基準を定めたガイドラインですが、8章は企業に対する罰金の考え方を定めています。その中で犯罪を防止・探知するための有効な措置を講じていた企業は、情状酌量されて、罰金が下がるという考え方が示されています。有効な措置とは何か、条件も定められており、内部統制システムを考えるときの参考になります。ここでは、その条件が記載された部分とそのコメンタリー(解説)をご紹介します。

日経: 「海外投資家も総会出やすく 政府、成長戦略の柱に 」

「政府は海外の投資家も日本企業の株主総会に出席しやすい環境を整える。海外投資家が株を預けている信託銀行が名義上の株主でも、株主総会に出席できるようルールを作る。招集手続きの電子化を進め、決算短信や有価証券報告書など投資家に開示する情報の重複も減らす。日本企業の情報を把握しやすくなるようにして投資を促す。

今月末にまとめる成長戦略の柱として環境整備の方向性を示す。、、、」 (続く)

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO88336090R20C15A6NN1000/ 

これは全部、私を含めて多くの方が前々からお願いしていることで、とてもいいことです。一つだけ残念なのは、記事の最後に「総会の日程を後ろにずらすことも企業に要請する」と書いてありますが、実はコーポレートガバナンス・コードの内容ではそのように要請す機会でした。しかし、そこで実行しなかったのが残念です。(私はこの問題に対応するコード項目を金融庁などに提案しておりましたが、なぜか金融庁とTSEはそのチャンスを使わなかったことになりました。)

MoFo: 「米司法省官僚、実効性のあるコーポレート・コンプライアンス・プログラムの構成に関し、新たな指針を示す」

(執筆者:アダム・ホフィンガー/ユージーン・イロフスキー) 
「会社のコンプライアンス・プログラムによって訴追の危機を逃れられるのはいつの時点か。或いは、少なくとも、事件の解決にあたり、司法省(DOJ)から軽減措置を確実に得られるのはいつの時点か。DOJ は、クライアント企業が抱えるこの問題について、新たな指針を示し、会社のコンプライアンスを評価するにあたり、新たに重点事項となるものを示唆している。この指針は、2014 年 10 月 7 日の刑事局首席副次官補(PDAAG)、マーシャル・L・ミラー(Marshall L. Miller)氏の発言によるものである。[1]

会社法では、取締役会の監督役割についてどうなっている?

有識者会議で意見が分かれているらしいです。ちなみに会社法の条文には取締役会社の監督義務についてこうなっている(監査役会設置会社の場合):

(取締役会の権限等)
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

カナダ、女性取締役の指名を促す強い情報開示制度を導入

カナダな最近(来年から施行)日本のJPXと同じような女性取締役についての開示制度を導入したが、より詳しい情報が求められているので事実上の「comply-or-explain」ルールです。例えば、「女性を指名する方針があるかどうか(あれば、その方針に実行に当たっての実績)、又は「どうして女性役員がいないのか、理由を説明せよ」なども開示項目になっている。

記事 『 「すき家のビジネスモデルは限界」 第三者委員会が「調査報告書」を公表 』

(弁護士ドットコムの記事) 『 「すき家」を展開するゼンショー・興津龍太郎社長(左から2人目)に調査報告書を手渡す第三者委員会の久保利英明委員長(左から3人目)※写真はゼンショーホールディングス提供

「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会(委員長・久保利英明弁護士)は7月31日、調査報告書を、すき家を経営するゼンショー側に手渡した。

報告書は、社員へのヒアリング・現場スタッフへのアンケートなどに基づいて、「すき家の運営は、法令違反であることはもとより、社員の生命、身体、精神に危険を及ぼす重大な状況に陥っていた」と認定。「過重労働問題等に対する“麻痺”が社内で蔓延し、『業界・社内の常識』が『社会の非常識』であることについての認識が全社的に欠如していた」と、経営側の認識不足を厳しく指摘した。