メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか2021年(5)- 独立取締役比率の変化

前の記事「How far has corporate governance progressed in 2021 (4)」で、Metricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点のROAおよびROEのそれぞれの変化率でコーポレートガバナンス・プラクティスの各評価項目について相関を分析について述べました。その分析結果では、コーポレートガバナンス・プラクティスをボードプラクティスと会社の実際の行動を表すキー・アクションで分けた場合、ROAおよびROEはともにキー・アクションとは有意性のある相関が確認されましたが、ボードプラクティスとは有意性のある相関は見られませんでした(下表参照)。このことから、2021年の分析期間では、会社の利益が増加して好業績が自信につながったことがボードプラクティスを改善するインセンティブにならなかったという推論ができます。会社はボードプラクティスを改善する何か別の動機があったのではないかとお伝えしました。

メトリカル:5月の株式相場はインフレ指標の上昇鈍化を好感した米国株式相場の上昇を受けて月前半の値下がりを取り戻して取引を終えた。CG Top20株価は弱気相場の中でTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対してアンダーパフォーマンス。

月前半は米国金利上昇懸念から弱含んだ米国市場を受けて株式相場は低迷した。月末は米国インフレ指標のピークアウト期待から大きく上昇した米国株式を受けて、月前半の値下がり分を取り戻して取引を終えた。5月1ヶ月間のTopixとJPX400の両株価指数は0.78%および0.82%とそれぞれ反発。一方、CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は-0.19%と、両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。

ウェビナー:失われた30年を40年にしない為の日本企業とコーポレートガバナンスのあるべき姿とは? ~経営とガバナンスの視点は噛み合うのか〜

 

失われた30年を経て、稼ぐ力を取り戻すために導入された、コーポレートガバナンス・コードが導入されてから7年、コーポレートガバナンスは日本企業の価値を高めることができたのでしょうか。地政学リスクの高まり、パンデミック、戦争が次々と起きるVUCAの時代に、日本企業の舵取りに必要なガバナンス、戦略、経営はどのようなものでしょうか。

本ウェビナーでは、多くの企業、組織でボードメンバーとして活躍されている橋本孝之氏と、投資家サイドの経験を活かしコーポレートガバナンス推進に努めるニコラス・ベネシュ氏が、日本企業の現状と必要施策を本音で語り合います。日本型vs.米国型のような単純比較を超えて、今の外部環境に照らして求められる、リーダー、機関設計、人材育成、海外子会社管理について真剣に議論します。その後のパネルディスカッションでは、視聴者からの質問も取り混ぜて、社外取締役経験を持つ弁護士である市川佐知子が、両氏からさらに詳しくお話を伺います。 橋本氏は山城経営研究所の社長として、ベネシュ氏はBDTIの代表理事として、それぞれ経営層とガバナンス人材の育成に長年取り組んできた実績を有しています。二人の議論は噛み合うのでしょうか、すれ違うのでしょうか。企業価値を高めるための取締役会の役割を考える経営者、社外取締役に是非とも聞いていただきたいウェビナーです。

【開催日時】  2022年7月25日(月)15:30 ~18:00

【参加方法】  ZOOMビデオ会議形式(実名を伏せたい方は表示名を匿名などへ変更して下さい。オーディオはオフにして下さい。)

【参加費】   無料

【定員】     100名

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか2021年(4)- ROAとROEの変化率とコーポレートガバナンス・プラクティス

前の記事「How far has corporate governance progressed in 2021 (3)」で、Metricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点の時価総額の変化率とTobin’s q、ROAおよびMetricalスコアのそれぞれの変化率で相関を分析の結果について述べました。その分析結果は、下表の通り、時価総額の変化率とTobin’s qおよびROAおよびMetricalスコアのそれぞれの変化率において有意性のある正の相関が確認されたました。

今回のテーマは時価総額の変化率にはROEよりもROAと有意性のある正の相関が確認されたのはなぜか?に焦点を当てたいと思います。ご案内の通り、ROAは会社の収益力の言わば地力を示すものであるのに対し、ROEはその収益力に資本構成を変更することによって引き上げることができるから、ROAは業績改善によって直接的にインパクトがあるのに対し、ROEは業績向上に直接拠らずとも引き上げることができるということができます。本記事ではROAが改善した(然るに時価総額が増加する傾向がある)会社にコーポレートガバナンス・プラクティスの観点で何か変化があったのかを検証してみたいと思います。

Metricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点のROAの変化率をコーポレートガバナンス・プラクティスの各評価項目において相関分析をしてみます。下表ではボードプラクティスとキー・アクションで分けて示しています。2021年の1年間のROAの変化率には、会社が実際に行動するキー・アクションの中の現金保有スコアと配当方針スコアが有意性のある正の相関、成長方針スコアとは有意性のある負の相関がみられました。会社はROAが1年間で変化したことによってボードプラクティスを変更する動機にはならないということができるかもしれません。一方で、キー・アクションに関してはROAが1年間で変化した場合に会社は配当を増やすことによって現金を減らした傾向があることが確認できました。ROAの変化率と成長方針との間に有意性のある負の相関があることに関してはさらに分析していく必要がありますが、利益の増加によってバランスシートに積み上がった現金を増配による株主還元に利用したものの、成長投資に現金を利用する面では説得力がまだ不足していると推測することができるのかもしれません。

ウェビナー:ESG2.0-ISSB統一基準で企業経営と統合報告書はどう変わる?動画公開

2022年4月14日、ウェビナー:ESG2.0-ISSB統一基準で企業経営と統合報告書はどう変わる?と題したウェビナーを開催いたしました。

上場会社の担当者の方には先の見通せない中で今年の統合報告書等をどうすべきか、悩みが多いと聞きます。また経営層、取締役会の皆様におかれても、ESG経営の意味合いが腹落ちしない、Net Zeroを宣言するべきか姿勢を決めかねるという声も聞きます。本ウェビナーでは、現在VRFの理事を務められている北川哲雄氏、カタリスト投資顧問株式会社 取締役副社長COO小野塚 惠美氏を講師としてお迎えし、また優れた情報開示を行っている、味の素株式会社の矢崎久美子氏、株式会社アドバンテストの????本康志氏にパネリストとして加わっていただき、新時代に必要となるESG経営の真髄、効果的な開示の方向性をお示しいただきます。

お問い合わせ等ありましたら下記までお願いいたします。
Email: info@bdti.or.jp

GPIF の国内株式運用機関が選ぶ「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」

2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂を受け、上場企業が同年12月末までに改訂版コードを踏まえたコーポレート・ガバナンス報告書を提出しています。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、国内株式の運用を委託している運用機関に対して、改訂版コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえ記載内容が充実していると思われる「優れたコーポレート・ガバナンス報告書」の選定を依頼しました。今回は最大5社の選定を依頼し、下記のリストの通り、延べ44社が選ばれました。

Managing Human Resources in the Age of VUCA and Diversity — Advice from Levent Arabaci, Former CTRO at Hitachi

Japan has created a council to consider a “new form of capitalism”, stating that it aims to lead in the areas of “sustainability and human capital”. At the same time, the corporate governance code states that “in light of the importance of human resource strategies …companies should present their policies for human resource development and the internal environment development to ensure diversity.” Abroad, foreign companies continue to compete globally based on constantly refining their systems for managing HR, attracting and developing talent, and drawing on diversity as a source of competitive advantage.

Here in Japan, Hitachi has been a leader in this area under the leadership of the late CEO Hiroaki Nakanishi and Levent Arabaci, who until recently served as Chief Transformation Officer (CTRO) for Global Operations, and previously was the EVP of Human Resources starting in 2012.

In this webinar, Mr. Arabaci will describe the range of modern HR practices that Hitachi has put in place during the past 10 years, spanning areas such as talent mapping, career planning and development, performance evaluations, practices for promotions, and increases in diversity. BDTI Representative Director Nicholas Benes will interview Mr. Arabaci to identify the biggest challenges Hitachi has faced, and to reveal his concrete advice as to how other Japanese companies can overcome similar challenges.

Next, we will be joined by Takeo Yamaguchi (ex-Hitachi) and Christiane Iwanoff of Olympus, two persons with extensive experience at HR management. The panel participants will share their experiences and perspectives, will consider additional issues that have arisen in recent years, such as the impact of WFH, addressing work-life balance, and building more diverse, innovative organizations.

Date:         June 1, 2022(Wed.)  12:00-14:30

Location:          Zoom Web Conference

Charge:       Free

メトリカル:3月の株式相場は世界株式相場の反発に支えられて3ヶ月ぶりの上昇。CG Top20株価は前月の好パフォーマンスの反動からアンダーパフォーマンス。

株式相場は3月上旬は米国金融引き締めを懸念した金利上昇を背景に弱含んだものの、その後はロシアとウクライナの停戦期待から3月末にかけて世界株式の上昇に支えられて堅調に推移した。3月1ヶ月間のTopixとJPX400の両株価指数は3.40%、3.68%とそれぞれ上昇。一方、CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は0.31%と前月の好パフォーマンスの反動から両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか2021年(2)

上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みが2021年にどのくらい進んだかを数値を持って見ていきたいと思います。2022年4月の東証の市場区分の再編に伴い、2021年はコーポレートガバナンス・コードの改訂が行われました。その結果、改訂コーポレートガバナンス・コードの中で具体的に改善すべき事項として言及があった独立取締役比率と指名委員会および報酬委員会において、改善したことをあらためて確認しました。一方で、上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みも前に進むことが期待されます。その取り組みの成果によって、どのくらいコーポレートガバナンスが改善されたのかを数値を持って見ていきたいと思います。前の記事では、改訂コーポレートガバナンス・コードの中で具体的に改善すべき事項として言及がなかった評価項目、例えば取締役会の議長、女性取締役、買収防衛策に関してはほとんど改善していないか限定的な改善にとどまったことをご報告しました。

これから下記に示すチャートは、上場会社が実際にとったキー・アクションに関して、この1年間の上場会社の取り組みがどれくらい改善しているかをMetricalユニバース約1,700社で見ていきたいと思います。中でも、企業価値の成長に影響を左右するキャッシュの配分や資産の活用に注目して評価項目の変化を見ていきましょう。ボードプラクティスの改善は実際にとる会社の効果的なアクションにつながることが期待され、それがパフォーマンスの向上につながると期待しています。これまでの分析から、ボードプラクティス、キー・アクションの評価項目の中でパフォーマンスとポジティブな相関があることが確認されています。

最初のチャートは現金保有の評価を示すものです。売上高に対する現金同等物の比率が低いほどスコアが高くなるように設計されています。2021年12月の緑色の棒の分布は2020年12月のオレンジ色の棒の分布と比べるとスコアが低い左方に移っていることがわかります。売上高に対して現金保有の割合が上昇しています。成長投資のためにキャッシュが効果的に使われていないことが考えられます。他の評価項目について下記でもう少し詳しく見ていきましょう。

2月の株式相場は不透明感から2ヶ月連続の下落。CG メトリカル:Top20株価はプラス収益を確保してインデックスに対して大きくアウトパフォーマンス。

2月前半の株式相場は前月の大幅下落からの反発したが、米国金融政策の転換に伴う警戒感に加えて、月半ばからはロシアのウクライナ侵攻による不透明感から大幅に下落し、月末に戻して終えた。2月1ヶ月間のTopixとJPX400の両株価指数は-0.38%、-0.57%とそれぞれ下落。一方、CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は0.33%とプラスのリターンを確保して、両インデックスに対して大きくアウトパフォーマンス。