公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は日本の大手機関投資家に対して意見交換と協力を依頼します

7月27日に公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)は、日本の大手機関投資家の役員にこちらの手紙を送りました。役員・ガバナンス研修、エンゲージメント手法のレベルアップ、データを通じて日本の取締役会を活性化するための意見交換と協力を依頼しています。BDTIへの寄付者やデータの購入元である多くの海外機関投資家との対話は充実していますが、日本の大手機関投資家との対話は非常に少ないのが現状です。私たちは、過去11年間で2,500人に役員研修を提供しました。また、当法人の理事会メンバーが長年にわたって社外取締役として学んだことの多くを日本の機関投資家に伝えることができます。何しろほとんどのファンドマネージャーは取締役会に参加したことがないので…. ちなみに昨年もこのような手紙を出しましたが、全く反応がありませんでした。今年はどのような結果になったのか、どのような企業が回答してくれたのか(もしあったとしたら)、今後お知らせします。=============================

2022年7月吉日

〇〇株式会社
代表取締役社長
〇〇 ×× 様

拝啓 貴社におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)代表理事、ニコラス・ベネシュでございます。BDTIは2009年設立以来、日本のコーポレートガバナンス向上を目指し、役員研修や上場企業のコーポレートガバナンスの実態に関するデータの提供・分析を行っております。

本日は、取締役会の質を向上させるためにお力添えをお願いしたく、またそれは貴社の利益源泉である日本の株式市場を良くすることに繋がり、私たちが目指しているものは共通しているのではないかと考え、ご連絡申し上げました。

三ツ星事件後もポイズン・ピル法理は解明されていない

スティーブン・ギブンズ

三ツ星事件の判決後も、ポイズン・ピル法理は解明されていない多数の点

7月下旬、最高裁は、株式会社三ツ星(東証1部5820)が、中国とつながりのある投資家グループから20%以上の株式を市場でひそかに取得されたため、急遽設定した有事導入型ポイズン・ピルを無効とした大阪地裁と大阪高裁の判決を維持し、日本の不安定で移り気なポイズン・ピル法理を、ある程度解明した重要判例となっている。

昨年の東京機械製作所事件に関する一考察

三ツ星事件は、2021年11月の東京機械製作所(TKS)(東証6335)事件と多くの点で事実関係が似ている。両事件とも、中国と関係のある投資家が、事前警告型ポイズン・ピルを整えていない無名の小さな対象企業の株式を静かに大量取得した。

TKS事件では、それまでの裁判例がポイズン・ピルの有効性の必要条件としていた、株主による「意思確認」が都合悪く邪魔になった。中国系企業であるアジア開発キャピタル株式会社(ADC)は、TKS株の40%をすでに取得していたため、自らの議決権行使によって、有事導入型ポイズン・ピルを阻止できる立場にあった。

日本の裁判所は、TKSの救済に乗り出した。ADCがポイズン・ピル導入に関しての「利害関係」者であるとして、「意思確認」のための株主総会から除外することを認め、新しい「majority of the minority」(少数株主の多数決)の法理を認めた。TKS判決は、新法理の法的根拠や適用要件について詳述することなく、その射程距離や影響の度合いは不分明なままであった。

Video of “The General Counsel as Board Member – Discussion with Larry Bates, Panasonic’s first General Counsel”

This webinar explores how in Japan there was no traditional role of “General Counsel” (GC), in Japanese companies. However, as Japanese companies have expanded and globalized, more of them are realizing that it is essential to have an actual licensed attorney serve as the “Chief Legal Officer” (CLO), serving a broader, more senior, and influential role.

BDTI’s own Nicholas Benes interviews the well-known Larry Bates, who recently stepped down from his role as Panasonic’s first General Counsel. During the past 30 years, Larry has served as General Counsel at three different companies, all of which operated in a global legal context. To provide actionable advice and perspectives to Japanese companies, the interview focuses on key issues such as: “What should be the GC’s role and mission, and how does the concept of “GC” differ from the traditional Japanese model?” and “What are the pros and cons of having the GC sit on the board and what is his or her relationship with the board and other executives?” – among other questions.

メトリカル:CG 株価パフォーマンス CG Top20 vs. Topix, JPX400(2022年7月末)

7月の株式相場は米国株式相場の堅調に支えられ、月後半からは戻りを試す展開となった。今月から年1回の構成銘柄が変更されたCG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して、若干のアンダーパフォーマンスながらも長期間ではアウトパフォーマンス継続。

7月中旬には米国経済のリセッションを予想した長期金利の低下を背景に米国相場が上昇したことから、月後半から株式相場は堅調な展開になった。TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ3.74%および3.90%に対して、CG Top20株価は3.19%の上昇にとどまり、若干のアウトパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな個性銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:自己株式消却に関する考察

プライム市場の上場基準によって自己株式を消却に動く会社が少しずつ増えていることは皆様ご案内のことと思います。また、以前の記事で、自己株式を3度以上消却した会社はコーポレートガバナンスの取り組みにも前向きであることもMetricalの分析でわかってきました。

自己株式消却がコーポレートガバナンスの取り組みとパフォーマンスの改善が車の両輪のようにお互いに好作用を及ぼしている兆候であるとすれば、とても歓迎すべきことです。自己株式消却という実際に会社がとった行動がコーポレートガバナンスとどのように関連しているのか、さらに考えてみたいと思います。

下表はMetricalユニバース(1/2022現在)の自己株消却の頻度とROE、ROA、トービンのqとの相関を示しています。前回の記事でもお示ししました通り、自己株式消却の頻度とROEおよびROAと有意性の高い正の相関関係が確認されていることから、自己株式消却の頻度が多い会社ほどROEおよびROAが高いことがわかります。自己株式を消却するには自己株式を買い戻しているので、ROEおよびROAにとってはポジティブに作用することから、この結果は合理的に思われます。一方で、トービンのqと自己株式消却の頻度は有意性のある相関は示されていません。自己株式消却の頻度が多い会社ほど株価の評価が高いわけではないということですから、自己株式を消却する会社は株価の評価と関係があまりないということを意味しています。自己株式を消却する前に自己株式を買い戻しているわけですが、自己株式の買い戻しを実行する時にトービンのq(P/B)を会社が考慮して判断するわけでないことから、この結果も妥当であるということができます。逆に時価総額の変化率(12/2021-1/2022)と自己株式消却の頻度は有意性の高い正の相関関係が確認されていることは興味深い結果です。株価の割高・割安に関しては自己株式消却の頻度は相関がなくとも、12/2021-1/2022の期間で時価総額の変化率と関係があるということです。この13ヶ月間の期間では、自己株式消却の頻度が多い会社ほど時価総額が増加したことを示しています。この期間で自己株式消却は時価総額の増加と関係があったことが示されました。

7/25ウェビナー:失われた30年を40年にしない為の日本企業とコーポレートガバナンスのあるべき姿とは?動画公開

2022年7月25日、ウェビナー:失われた30年を40年にしない為の日本企業とコーポレートガバナンスのあるべき姿とは? ~経営とガバナンスの視点は噛み合うのか〜と題したウェビナーを開催いたしました。
多くの企業、組織でボードメンバーとして活躍されている橋本孝之氏と、投資家サイドの経験を活かしコーポレートガバナンス推進に努めるニコラス・ベネシュ氏が、日本企業の現状と必要施策を本音で語り合います。日本型vs.米国型のような単純比較を超えて、今の外部環境に照らして求められる、リーダー、機関設計、人材育成、海外子会社管理について真剣に議論します。橋本氏は山城経営研究所の社長として、ベネシュ氏はBDTIの代表理事として、それぞれ経営層とガバナンス人材の育成に長年取り組んできた実績を有しています。二人の議論は噛み合うのでしょうか、すれ違うのでしょうか。企業価値を高めるための取締役会の役割を考える経営者、社外取締役に是非とも聞いていただきたいウェビナーです。
お問い合わせ等ありましたら下記までお願いいたします。