日産最終報告書

日産の最終報告書についても、気になる点をまとめてみました。
https://www.nissan-global.com/PDF/20171117_report01.pdf

今回の問題を、取締役会が防ぐことができたのか、との視点でみると、客観的な経営数字の作り方、情報の流れがポイントであろうと思い、関係箇所を拾い出してつなげてみました。部署や工場が異なる記載部分をツギハギしていますから、あくまでイメージであり、実態はそこまで酷くないということもあることには注意したいと思います。

P96の記載によれば、日産本社では生産管理部が販売計画、生産台数計画を取りまとめます。とりまとめ過程では、工場の生産課長や人事課長から所要人員と稼働人員情報のインプットを得て、工場の生産能力として考慮する方法を取っていました。しかし、人員情報では検査員資格は意識されず、準直員として一括りにされ、経験の有無や資格の有無は捨象されていました。工場が、台数計画実現が困難であると言えば、生産管理部が能力増強策を考えるとありますが、できないとは言えなかったのでしょう。しかし、ここでできないと言えないと、工場は台数計画をやります、できますとコミットしたことになります。計画確定後は自分で何とかするしかありません。

所要人員についてP54の記載では、標準作業時間*予定生産台数を元に策定されることになっています。そして、直接労務費も、準直労務費も、間接費も、原価低減推進室から所要人員の低減率目標が渡され、原則毎年の低減を求められていました。検査員数は、実際と乖離した標準作業時間で理論的に計算され、しかも毎年効率化による低減が求められていたようです。そして、P67の記載によれば、標準作業時間は実際に必要な時間と乖離していました。

P97の記載によれば、年間販売台数計画は経営会議で議論され、毎年4月に確定します。この議論は台数ベースで行われるため、人員数やさらに細かな検査員の話にはなりません。

他方で、コミットしてしまった工場側はどうするのでしょうか。P30の記載によれば、2016年5月頃、各車両工場の品質保証係長が集まって「将来的」な検査員不足を議論し、期間工で対処することには反対という結論が出ました。しかし工場と「本社管理職」の間では期間工で対処することに方針が決まりました。しかし、期間工を検査員にするまでに必要な訓練時間や訓練士について記載がありません。また、「将来的」問題といっても、工場が1シフトを2シフトに、2シフトを3シフトに変更したことは2015年や2016年にもあります。

「本社管理職」が何を指すのか分かりませんが、品質保証係長と課長との間に、壁があるというのが報告書全体の基調です。P45の記載によれば、品質保証課長と係長は毎朝MTGし、人繰りの厳しさは共有していたが、係長は「何とか回っている」と報告していました。厳しいというより無理であることを共有していなかった模様です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください