役員研修・ガバナンス関連のブログ - 50ページ目 (165ページ中) - 取締役、役員、投資家など、誰でも投稿できる!

神戸製鋼事件を考える(続き2)

神戸製鋼がこれからどのような訴訟を経験することになるのか、未だ分かりません。なので少し脇道にそれますが、ここでは一般的に、不祥事と訴訟の関係について、ある点を考えてみたいと思います。

訴訟はコーポレートガバナンスの重要なツールです、とシンガポール大学の教授から聞きました。最初驚いたのですが、改めて考えるとそれも当然だと納得しました。責任を問われない環境、自律だけが頼みの環境ではガバナンスにも限界があるという意味だと思います。証券訴訟提起を積極的に進めているGPIFは、この考え方を実践しているようです。
http://www.gpif.go.jp/public/activity/shouken_soshou_ichiran.html

GPIFの証券訴訟リストの中に、フォルクスワーゲン (VW) があります。窒素酸化物の排出量を誤魔化すようなソフトウェアを搭載していたというのが、VWの行った不正です。多くのカーオーナーがVWを相手取って提訴していますが、カーオーナーでもないGPIFがなぜ?と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。

神戸製鋼事件を考える(続き)

神戸製鋼は2017年11月10日、経産省にある文書を提出し、公表も行っています。タイトルは「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197967_15541.html

第三者委員会の調査は現在進行中で、本書は中間報告書のような位置付けです。報道によれば、この中間報告書は不十分であると批判が寄せられているとのことです。ここでは内容を整理し、気になるポイントをピックアップしてみたいと思います。

まず起きた事をもう一度確認しておくと、「改ざん」と「ねつ造」です。改ざんは「過去の経験等を踏まえ影響がないと判断する等して」検査結果を書き換えること、ねつ造は「例えば、製品の2箇所を測定すべきところ、1箇所のみ測定し、もう1箇所については、測定せずに想定される規格範囲内の数値を記載」することです。

神戸製鋼事件を考える

神戸製鋼の事件は、日本企業が誇りにしてきた品質管理、社外役員の役割、内部統制の不備、過去の不祥事から得た教訓の活かし方、来るべき訴訟など検討すべきポイントが満載です。しかし、現場で何が起きていたのか、誰がどこまで知っていたのか等は、第三者委員会による調査結果を待つ必要があります。今のうちに、分かっていることを整理しておきたいと思います。

2017年10月8日、神戸製鋼による最初のリリースでは、データ改ざんはアルミ・銅製品にとどまっていました。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197805_15541.html

ところが、その後進んだ社内調査は、驚きの展開を見せました。まず、社内調査の過程で妨害行為があったとのことです。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197904_15541.html

データ改ざんが確認された製品は鉄粉や鋼線にも広がり、販売先は525社に登っています。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1198006_15541.html

ある特定の製品や工場に限った改ざんではないですし、期間も長期間にわたるようです。10月8日の記者会見で副社長が10年以上前から改ざんがあったと認めています。ある新聞報道によれば、40年以上前からだとする従業員もいるようです。このため「組織ぐるみ」を指摘する人も出はじめています。「組織ぐるみ」には明確な定義はなく、トップ経営陣が知っていたかどうかで「組織ぐるみ」を判断する見方があるようです。しかし、不正行為が企業の業務プロセスの中に定着していたなら、経営陣の期待や思込みとは別に、「組織ぐるみ」は成立するような気もします。

10年間改ざんをしなければならないような企業が置かれた状況とは、どのようなものだったのでしょうか。神戸製鋼のROEの推移は、次の通りです。

企業年金連合会、複数の機関投資家との協働エンゲージメント活動開始

企業年金連合会は、11月1日、『スチュワードシップ責任を果たすための方針 』を改訂し、今後の議決権行使結果個別開示と集団的エンゲージメントに関する言及が追記されました。

集団的エンゲージメントに関しては、
「(原則4) 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企 業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
連合会は「アセットオーナー」として、運用受託機関が投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて投資先企業と認識の共有を図るとともに問題の改善 に努めることを求める。連合会は「運用機関」として、上記の低コスト運用のメリットを阻害しない範囲で、外部の専門機関を利用するなどしてコストの低減を図りながら当原則を実施する。また、連合会は、他の機関投資家と協働して投資先企業との建設的な「目的を 持った対話」に取り組む。
として、HPで「一般社団法人機関投資家協働対話フォーラムが主宰する「機関投資家協働対話プログラム」に機関投資家メンバーの一員として参加し、協働エンゲージメント活動を行っています。」としています。

2018.02.15 会社役員育成機構(BDTI)の『国際ガバナンス塾』(一日役員研修プログラム)


本研修ではコーポレートガバナンス・コードの提唱者であるニコラス・ベネシュを初め各分野の専門家が、取締役や監査役としての基本的な知識を身につけるための研修「国際ガバナンス塾」を定期的に開催しています。執行役・部長など役員を支える立場の方々にとっても、この知識は不可欠なものです。実例を参考にしたディスカッション形式を取り入れた活気ある研修を行い、ベストプラクティスを導くためのヒントを豊富にお伝えします!

金融庁:平成29年金融商品取引法改正~フェア・ディスクロージャー・ルールに関して

フェア・ディスクロージャー・ルールに関して以下のとおり公表されました。 「〇 政令の改正の概要 2 フェア・ディスクロージャー・ルール(上場会社による公平な情報開示) ルールの対象となる上場会社等の範囲を、金融商品取引所 […]

経産省『伊藤レポート2.0』公表

経産省は、10月26日、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)」(通称『伊藤レポート2.0』)を公表しました。2014年に発表した「伊藤レポート」後に生じた動きを総括しつつ、無形資産投資やESG等を巡る論点を深掘りして議論し、今後の政策対応等を検討した成果と位置付け、その内容を以下のように要約しています。

企業風土の鍛え方(続き)

先日ご紹介した NACD Blue Ribbon Commission Report “Culture as Corporate a Asset”について、続編です。次のようなレコメンデーションがあります。

Recommendation #3
Because of its significant interdependencies with strategy and risk, active monitoring of the organization’s culture is a full-board responsibility, with specific oversight activities housed in committees as appropriate. The nominating and governance committee should ensure that board policy documents and committee charters clearly delineate the allocation of such responsibilities and explain how culture oversight is embedded into the ongoing work of the board.

戦略とリスクは表裏一体、だから戦略を考える取締役会がリスクにも注意すべきであり、したがって企業風土の監視は取締役会の仕事である。シンプルで説得力ある帰結ですが、取締役会には社外取締役もいることを考えると、かなり大胆です。企業風土は、外からは観察しづらく中に入って体験するものであるように思えるからです。実際、このレコメンデーションのすぐ後で紹介されるベストプラクティスでは、取締役が直接、様々な事業所、レベルの従業員と定期的に会話することが挙げられ、取締役会に出席するだけが取締役の仕事ではないという考え方が紹介されています。

日本で社外監査役をしながら、かつて経営者であったときと同じように、「現場主義」を掲げる友人を思い出しました。彼は会社の様々な席に出て自分の顔を売り、従業員から情報が集まるように努力しています。そして、会社もそれを歓迎しており、NACDのベストプラクティスを地で行っていると言えます。

企業風土の鍛え方

企業不祥事が取りざたされる度、再発防止策に上げられるのが「企業風土の改善」です。しかし、具体的にどうするのか、多くの人が頭を悩ませていると思います。私もその一人であったところ、民間企業で法務部長経験の長い友人から、NACD Blue Ribbon Commission Report “Culture as a Corporate Asset”を紹介されました。特に、次のリコメンデーションです。

Recommendation #5
Directors should assess whether the chief legal officer / general counsel and other officers in key risk-management, compliance, and internal-control roles are well positioned within management and in relationship to the board to support an appropriate culture.
https://www.nacdonline.org/Store/ProductDetail.cfm?ItemNumber=48252

一部の会社のことですが、ビジネス事業部よりも法務部門は少し格下、コストセンターだし余り大きな顔はできない、ということもあるようです。しかし、このレポートでは、取締役会が、法務部の予算、スタッフ、情報アクセスについて関心を持つべきだとしています。

企業風土の改善で、「法務部」。当然のようにも思え、意外な気もします。いずれにしろ、法務部の予算、スタッフなど、とても具体的で直接的な答えに、思わず嬉しくなりました。しかし、いくら位かけると良いのでしょうか?

ISS議決権行使助言方針(ポリシー)改定に関する 日本語でのオープンコメントの募集

「Institutional Shareholder Services Inc. (ISS) は、2018年2月から施行する2018年版の各国の議決権行使助言方針(ポリシー)の改定案を発表しました。

ISSは、国や地域の法令、上場規則、コーポレートガバナンス、文化、習慣など市場毎の特性を勘案して作成したポリシーに基づき、議決権行使の助言を行っています。ISSはポリシー改定にあたり、多様な意見を反映する機会を設けることによって、透明性を確保することが重要だと考えます。そのため、各国の機関投資家、上場企業、規制当局など幅広い市場関係者の意見を反映するため、ヒアリング、サーベイ、ラウンドテーブルおよびオープンコメントの募集を毎年実施しています。ISSのポリシー改定プロセスの詳細はhttp://www.issgovernance.com/policy-gateway/policy-outreach/をご参照ください。

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