日経ビジネス『企業は「相談役・顧問」を見直すべき』ISS石田氏インタビュー

日経ビジネス・オンラインは、2月8日、議決権行使助言会社ISSのエクゼクティブ・ディレクター石田猛行氏インタビュー記事を掲載しました。石田氏は、今年度の議決権行使アドバイスのポイントとして、「今年は新たに相談役・顧問制度を規定しようとする定款変更について、「反対」を推奨するというポリシーを入れました。」と解説しています。

「経済産業省のアンケート調査にもあるように、上場企業の約6割で相談役・顧問が存在しているという実態があります。その企業の経営に大きな影響を与える存在でありながら、多くの場合、取締役でないために株主総会で選任されるわけではありません。

株主に対する受託者責任を追うこともなく、訴訟の対象にもなりにくい。アカウンタビリティーなしにその会社の経営に少なからぬ影響力を行使することが、一番の問題だと考えています。」

ISSの日本向け議決権行使助言基準で「相談役」制度を「原則として反対」

議決権行使助言会社ISSは2017年の(新しい)日本向け議決権行使助言基準を発表しました。その一部は、

「相談役27制度の新設 下記に該当する場合を除き、原則として反対を推奨する。 › 取締役の役職として提案される場合」

27 「相談役」に限らず、活動の実態が見えにくい名誉職的なポストが本ポリシーの対象である。例えば、顧問、名誉会長、ファ ウンダーなど。}

https://www.issgovernance.com/file/policy/2017-japan-voting-guidelines-japanese.pdf

第1回「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」

1月31日、スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会が開催されました。

本検討会は、実効性のある企業と機関投資家の建設的な対話について議論した金融庁・東京証券取引所の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」において、昨年11 月30 日公表された「機関投資家による実効的なスチュワードシップ活動のあり方」と題する同会議の意見書にて、スチュワードシップ・コードの改訂が提言され、これを踏まえてスチュワードシップ・コードを改訂することを目的として開催されました。現行のスチュワードシップ・コードで、3年の改訂検討期間が示されており、この期日を2月26日に迎えるため、比較的短期間に具体的な改訂内容が議論されると見込まれています。

第1回検討会ではICGNのKerrie Waring氏が英国、欧州の現状を紹介するとともに、機関投資家の共同エンゲージメント(対話)体制の必要性、議決権行使結果の個別開示(一般公表)等についての賛否両論の意見交換がなされました。

ご参考までに:

機関投資家による実効的なスチュワードシップ活動のあり方
~企業の持続的な成長に向けた「建設的な対話」の充実のために~
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」 意見書(3)
(平成 28 年 11 月 30 日)

 

クラスアクション ドイツの場合

BDTIのアドバイザーであるハラルド・バウム教授から、ドイツのクラスアクション法とも言える法律の解りやすい解説が以下に投稿されました。過日、日米のクラスアクション制度をテーマにセミナーが開催されましたが、バウム教授の寄稿によって3カ国の制度を比較することを可能になりました。ドイツの制度は、フォルクスワーゲン株を購入した世界中の投資家が、窒素酸化物排出データ捏造により損失を被ったとして次々と訴訟を起こし、2016年一躍有名になりました。その訴訟の複雑な多層構造は日本の消費者裁判手続特例法をしのぎ、モデルとなる事件を設定して、共通する争点について高裁が判断を下すという、とてもユニークなものです。

 ドイツにおける証券詐欺モデル事件法

 -US版クラスアクションに替わる新制度?-

    ハラルド・バウム *

I.   モデル事件法の概要
II. モデル事件法の基本的な手続
III. 短所
IV.  欧州的視点

2001年、ドイツテレコム投資家約2500人が弁護士約700人を使って会社を提訴した。ファンド運営の失敗で暴落した株価により損害を被った個人投資家が、虚偽記載の責任者を相手取ったこの事件は、裁判所の処理能力を明らかに超えていた。

これを受けて2005年、立法府は「証券詐欺モデル事件法」と呼ばれる特別法を制定した。最初は2012年までの時限立法とされ、その後の延長で2020年までの期限がついている。

日本経済再生本部 第4回未来投資会議開催(1月27日)

1月27日、政府の日本経済再生本部の第4回未来投資会議が開催されました。日本企業の「稼ぐ力」の向上に向けた議論で、ガンバナンス関連では下記のようなポイントがアンケート結果とともに指摘がされています。

※ 経営システムの強化

□ 取締役会で本来議論すべき中⻑期の経営戦略や経営トップの選解任についての議論が不⾜。また、他社での経験の無い経営者がほとんど。
□経営者が過去にとらわれず、他社の経験も活かしながら将来ビジョンを考えていけるよう、社外取締役や社外者中⼼の指名委員会の活⽤など、取締役会の機能強化が必要。

※ 退任した経営トップが果たすべき役割

□ 経営トップには、時として、過去にとらわれない経営判断が求められる。こうした企業⽂化を醸成していく必要があり、とりわけ社⻑OBが相談役や顧問として経営陣に指⽰・指導しているような慣⾏の⾒直しを検討する必要がある。社⻑OBは、他の会社の独⽴社外取締役としてその⾼い知⾒が活かされていくことを検討すべきではないか。

BDTIクラスアクション・リスク管理勉強会のお誘い

日本版クラスアクションの導入。きちんと事業していれば恐れる必要はない、とも言われますが、企業のリスクマップは多少なりと変わります。また、米国で起こされるクラスアクションにも新たな傾向が認められます。

企業の情報(文書・データ)管理について方針を見直す企業が最近多いようですが、提訴後まで見据えた証拠の取り扱いとして適切な方針になるよう、注意が必要です。米国での訴訟に巻き込まれ、証拠保全で痛い目にあう日本企業が増えているのです。

上記のような課題についてholisticに考えるため、1月23日開催のBDTIセミナー『クラスアクション元年-企業の備え』にパネリストとしてご参加いただきました島岡聖也氏を座長とするBDTI勉強会に参加しませんか?

セミナー「クラスアクション元年-企業の備え」レポート

2017年1月23日、クラスアクションに関するセミナーが開催されました。日本版クラスアクション法とも言うべき新しい訴訟手続法と、元祖クラスアクション、アメリカの制度とを比較し、両方のリスクにさらされる企業がとるべき備えを考えるという意欲的なテーマでした。消費者庁で立法に携わった弁護士、アメリカでカルテル後長年続く私訴に関わったローヤー、アメリカで巨額クラスアクションを経験した日系企業の法務部長という経験豊富な面々が集まり、仮想事例をもとに、具体的・実務的なディスカッションがなされました。また、証券訴訟に詳しいBDTIの代表理事からは、誰もが眉をひそめるクラスアクションの「良い面」も紹介され、参加者の驚きを誘っていました。日本の制度はアメリカのそれとはかなり異なります。しかし、企業がグローバル展開するとき、各国内のことだけを考えて事件処理はできません。この国でとった戦略があの国にどのようなインパクトをもたらすか、多角的に検討する必要があります。各企業でどのような備えを講じるべきか、示唆に富むセミナーでありました。

2017.04.10 会社役員育成機構(BDTI)セミナー『なぜ日本のファミリー企業はパフォーマンスが高いか? ~2016年ノーベル賞受賞理論からのヒント~』

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日本のファミリー企業のROAは、他国と異なり、創業者が亡くなった後でも非ファミリー企業より高いという結果がでています。このような研究の土台となっているのが、本年のノーベル経済学賞を受賞したオリバー・ハート米ハーバード大教授とベント・ホルムストローム米マサチューセッツ工科大教授の研究、「契約理論」です。同理論は、雇用契約や株主と経営者の間の契約など、さまざまな依頼人と代理人との関係において、おのおのの利害をいかに調整するか、そのメカニズムを提示するものです。ここでいう「契約」はかなり広い意味で使われており、明示的な契約を結ばないケースにも応用可能で、コーポレート・ガバナンスについても重要な含意をもっています。

ハート教授、ホルムストローム教授の理論をファミリー企業研究に応用し、日本のファミリー企業においては、利害関係者のインセンティブを上手く引出すことで実効性のあるコーポレート・ガバナンスが機能し、これがパフォーマンスの好調に繋がっているという研究成果を発表した日本の4名の研究者からお二人にご紹介いただくセミナーを開催します。

日本監査役協会『監査役等と内部監査部門との連携について』を公表

日本監査役協会は、13日、監査役等と内部監査部門との連携について、同協会のアンケート結果や英米の調査結果を踏まえた『監査役等と内部監査部門との連携について』と題するレポートを公表しました。背景には、監査役等と内部監査部門の連携が、必ずしも、法的に担保されたものではなく、また、監査制度内にビルトインされたものではない現状の中で、監査役会等がその責務を実効的に果たし、企業価値の向上に資するという視点では、監査役等と内部監査部門の連携は益々重要になっており、コーポレートガバナンス・コード補充原則4-13③が監査役と内部監査部門の連携を求めているという点が挙げられます。

レポートはこちらからダウンロードできます。

日本取締役協会「日本版スチュワードシップ・コードの改定に関する提言」を公表

日本取締役協会は、≪日本版スチュワードシップ・コード≫を受け入れる機関投資家が解決すべき課題を踏まえ、企業経営者・国内機関投資家の意見を参考に、来春に予定されているコード改定に対して、提言を取りまとめ公表しました。