【メトリカル】個人の株式保有が増加傾向。個人の役割に注目が高まる

2023年7月6日付で東証が「2022年度株式分布状況調査の調査結果について」を公表しました。本資料の概要を下記にお示し、論点を考えてみたいと思います。

【特徴点】

1. 個人株主数は、前年度比521万人増加して6,982万人となった。

2022年度の全国4証券取引所上場会社(調査対象会社数:3,927社)の株主数合計(延べ人数)は、前年度比525万人増加して7,140万人となった。全体の97.8%を占める個人株主数は、前年度比521万人増の6,982万人となり、9年連続で増加することとなった。2022年度の個人株主数の増減要因を見てみると、上場廃止会社の影響で49万人減少する一方、新規上場会社で54万人増加、株式分割実施会社で75万人増加、その他の会社で441万人増加となっており、その結果、今年度の個人株主数は521万人の増加となった。

政治のリーダーシップが期待できない中、高等教育の男女格差の解決がカギ

世界経済フォーラム(WEF)が6月21日に「ジェンダーギャップリポート」を公表しました。ジェンダーギャップ指数における日本のランキングについて、考えてみたいと思います。

ジェンダーギャップ指数における日本のランキングは次のようになっています。
G7では、前年の10位から順位を4つ上げたドイツがトップの6位。以下英国(15位)、カナダ(30位)、フランス(40位)、米国(43位)、イタリア(79位)と続き、100位圏にすら入れなかったのは日本だけで、前年の116位から九つも順位を落とし、過去最低を記録しました。議員や閣僚級ポストに占める女性の比率が低く、政治分野は138位と最下位グループ。労働参加率や賃金の男女格差などを反映し、経済分野も123位だった。教育分野でも、女性の高等教育の就学率の低下で47位にランクダウンしました。

男女平等でなく「男女共同参画」を推進する内閣府男女共同参画局は例年ジェンダーギャップ指数に関する記載をウェブサイトに掲載していますが、ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位を125位/146か国 (2023.6.21発表)は掲載していますが、各分野の順位についてはまだアップデートされていません。

メトリカル:CG Top20株価パフォーマンス(2023年4月)

先月の金融システム不安から落ち着きを取り戻して堅調な米国株式相場を受けて、月末にかけて上値を追う展開。
CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して2ヶ月連続で大幅なアウトパフォーマンス。
米シリコンバレー銀行の経営破綻を発端とする金融システム不安から米国株式が徐々に落ち着きを取り戻したことから、米国株高を好感して株式相場は月末にかけて上昇した。月末最終日は日銀の金融政策決定会合で、金融緩和が維持されたことから株価は大幅上昇した。
4月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ2.71%および2.58%上昇した。CG Top20株価は3.06%の上昇と両インデックスに対して2ヶ月連続の大幅なアウトパフォーマンス。
2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスとマーケット・インデックスに比べても低いボラティリティを継続しています。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:CG Top20株価パフォーマンス(2023年2月)

2月の株式相場は米国金利の上昇を受けた円安を好感した買いと企業業績の息切れの間で一進一退の動きが続いた。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対してアンダーパフォーマンス。

米国インフレ長期化の懸念から米金利が上昇したことから円安ドル高が進行し、米ドルベースでみた日本株の割安感から買われる場面が見られた。一方で、1月末から始まった決算発表が力強さを欠いた内容だったことから、2月の株式相場は上値が重く、狭いレンジでの推移が続いた。
2月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ0.93%および0.96%上昇した。CG Top20株価は0.75%の上昇と両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか? 2022年(1)〜 ボードプラクティス編

Metricalは東証一部上場会社を中心に時価総額が約100億円を超える約1,700社を対象にコーポレートガバナンスの評価を毎月アップデートしています。今年も昨年に続きこの1年間でどれくらい上場会社のコーポレートガバナンスの取り組みが進展したか見ていきたいと思います。

これから下記に示すチャートは2020年12月、2021年12月および2022年12月の過去3か年におけるMetricalユニバース約1,700社の各評価項目の推移を示しています。Metricalは評価項目をボードプラクティスとキー・アクションに分けて分析しています。今回はボードプラクティス編です。それでは順に見ていきましょう。

最初のチャートはMetrical CGスコアの分布図です。Metrical CGスコアは多数のコーポレートガバナンスの評価項目を網羅した上場会社の総合的なコーポレートガバナンスの評価を示すものです。2022年12月のスコア分布は紫色の棒で示されています。の分布は2020年12月、2021年12月、2022年12月と年を追うごとに棒の分布が右方向(スコアの高い方)に移動していることがわかります。2021年のコーポレートガバナンス・コードの改訂と2022年の東証の市場再編を受けて、上場会社がそれらに対応するために、コーポレートガバナンスの取り組みを進めたと推測することができます。下記でその中身について評価項目ごとに見てみましょう。

メトリカル:CG 株価パフォーマンス CG Top20 vs. Topix, JPX400(2022年12月末)

12月の株式相場は日銀が金融政策決定会合で金利操作の運用修正を発表したことをきっかけに大幅下落して終了。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して2ヶ月続けてのアンダーパフォーマンス。

12月の株式相場は米国FOMCの金融政策を見守る動きから、月半ばまで方向感を掴めない相場展開。12月20日の日銀が金融政策決定会合で長期金利の変動幅を従来の0.25%から0.5%に拡大したことが伝わると、その日の後場から株式相場は大幅安。その後も反発気配がないまま取引を終えた。金利上昇を好感した銀行株が急上昇する一方で、成長株を中心に下落する株式が目立った。
12月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ-4.79%および-4.87%下落した。CG Top20株価は-5.59%の下落と両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:海外投資家が必要な書類と会社が英訳する書類にミスマッチがある

東証が2022年8月3日に月末に2022年7月末現在で英文開示実施状況調査を開示しましたので、ご報告したいと思います。

開示資料の冒頭で、東証は次のように述べています。「この度、2022年4月の新市場区分への移行後の状況を明らかにするため、2022年7月時点の調査を行い、調査結果をとりまとめましたので、お知らせいたします。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場であるプライム市場上場会社においては、英文開示実施率が92.1%(2021年12月末時点85.8%)に達し、新市場区分への移行を機に上場会社における英文開示の取組に一定の進展が見られました。他方で、昨年実施した海外投資家アンケートにおいて7割超が英文開示を必要とした適時開示資料(決算短信除く)や有価証券報告書であっても、プライム市場上場会社の英文開示実施率が半数未満に留まる状況も見られます。新市場区分への移行以後に適用されているコーポレートガバナンス・コードでは、「特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである」(補充原則3-1②後段)としており、英文開示の範囲の拡大・内容の充実、開示タイミングの差異の解消に向けて、更なる進展が期待されます。」

上記の東証の調査結果まとめのステートメントに述べられている通り、プライム市場の上場会社の多くは何某かの資料を英訳しています。英文開示をする会社が増えたことは一定の評価ができます。しかし、まだ緒についたばかりというのが事実で、東証も後段で述べている通り、有価証券報告書のような重要な開示資料の英文開示をする会社はとても少ない状況です。有価証券報告書は来年度からは従来の四半期の提出から年次の提出に変更される代わりに、サステナビリティ項目が記載事項に含まれる計画であることから、その重要性が一層増しています。以下にて、東証の調査結果を見てみましょう。

英文開示を実施状況の概要
英文開示を実施している上場会社の割合は全市場では56.0%(前年末比+3.2ポイント)、プライム市場では92.1%(同+6.3ポイント)です。プライム市場以外の上場会社で英文開示を実施している会社は多くありません。昨年改定されたコーポレートガバナンス・コードは補充原則3-1②において、「プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべき」と規定しています。しかし、必要とされる情報として具体的にどの書類を英文で開示するのか示していません。コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-2④で「招集通知の英訳を進めるべき」と唯一言及されたのが、招集通知でした。プライム市場の上場会社で招集通知の英訳を実施した会社の割合は76.1%(前年末比+11.9ポイント)と高まりました。英訳の実施率が高かったのが、決算短信の77.1%(同+9.3ポイント)、IR説明会資料の61.1%(同+3.5ポイント)でした。一方で、英訳を実施した会社が少なかった資料は、適時開示(決算短信除く)、コーポレートガバナンス報告書、株主総会招集通知(事業報告)、有価証券報告書で、実施率はそれぞれ38.7%(前年末比+2.3ポイント)、24.5%、(同+2.3ポイント)、22.7%(同+2.1ポイント)、13.3%(同+0.8ポイント)でした。有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書などの重要な資料は大部分の会社で英訳されていないことがわかります。

メトリカル:CG Top20株価パフォーマンス(2022年11月)

11月の株式相場は米国長期金利低下を背景に大幅上昇した米国株式相場を好感して上昇した。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して3ヶ月ぶりのアンダーパフォーマンス。

11月の株式相場は買い戻しから上昇して始まった後、23日に公表されたFOMC議事要旨が利上げペース減速の方向性を示唆する内容だったため、投資家のリスク志向が強まり米国長期金利の低下を背景に大幅上昇した米国株式相場を好感して大幅上昇した。Topixは1月12日以来およそ10カ月ぶりに終値ベースで2,000ポイント台を回復した。その後月末にかけてはパウエル議長講演や雇用統計を警戒して慎重な取引が続いた。
11月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ2.94%および3.36上昇した。CG Top20株価は1.47%の上昇と今月は両インデックスをアンダーパフォーマンスした。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな個性銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:創業者ファミリー企業と他の会社との経営戦略の違いの背景にあるのは持株

10月14日の日経新聞に「「逆張り創業者ファミリー企業株」の磁力:危機下も攻め、コーポレートガバナンスが課題」との記事が掲載されていました。当該記事の論点について、考えてみたいと思います。

10月14日の日経新聞の記事の概略は次のように報じています。
危機下でもひるまず「逆張り戦略」に動いた創業者ファミリー企業が投資家を引き付けている。経営の意思決定が速く、COVID-19パンデミックで出店拡大などを進めた企業は業績回復の爆発力も大きく、株式市場で異彩を放っている。長年の課題だったガバナンスの弱さにもメスが入り、先手を打つ企業にマネーが集まる。

10月14日の東京市場で日経平均株価は大幅反発し、前日比853円高で終えた。昨年末比でみれば6%安。米利上げ継続や景気後退への懸念は強く、神経質な相場環境が続く。そんななかで株価が右肩上がりで推移し、上昇率が2倍以上の株価上昇を達成した銘柄が貸会議室大手のティーケーピーだ。コロナ禍で対面イベントの減った2021年2月期は上場以来初の最終赤字に転落。人件費や地代家賃など固定費を減らしつつ、裏では攻めの手を緩めなかった。割安になった優良物件などの仕入れを積極化した。こうした「逆張り経営戦略」がいま結実している。行動制限の解除で需要が戻り、2022年3~8月期は同期間として3年ぶりに営業黒字を回復。同社の河野貴輝社長は10月13日の決算説明会で「スペースを貸すだけでなく(配信サービスなど)コンテンツも提供して付加価値を高める」と意気込む。

中古車販売のネクステージも果敢にリスクを取った企業の一つだ。コロナ初期には在庫増に苦しんだものの出店はやめなかった。買い取りや整備、車検サービスを一括で提供する大型の「総合店」は2022年8月末で51店舗と、2019年11月末から2.4倍に拡大。優良顧客の取り込みで利益率が向上した。

両社に共通するのは、主要株主が経営者やその一族で構成される創業者ファミリー企業である点だ。危機下でも攻める企業を発掘する投資家が注目している。日興アセットマネジメントの「ジパング・オーナー企業株式ファンド」を運用する北原淳平シニアファンドマネージャーは「創業者ファミリー企業は意思決定の速さと大胆な経営戦略が強み」と指摘。「経営者と株主の視点が一体で、危機下でも利害関係者を納得させやすい」と分析する。

論点1:「創業者ファミリー企業は意思決定の速さと大胆な経営戦略が強みで、経営者と株主の視点が一体で、危機下でも利害関係者を納得させやすい」

創業者は元々リスクをとって事業を拡大させて上場会社になった経緯があります。創業者であればリスクテイクが事業拡大のチャンスであることをよく知っています。常識にとらわれない発想と戦略もとても必要な要素であると考えていても不思議はありません。また、創業者およびその家族は自社の株式を相当割合で保有しているため、自身が大株主であることから他の株主と同じ目線で経営しているということができ、他の株主とsame boatで企業価値の最大化という同じ目標を共有しやすい立場にあります。キーは持株にあると思っています。

メトリカル:バリュエーションを上げた会社はどのような取り組みをしている?

前回の記事「プライム市場の経過措置適用会社:バリュエーションを高めるために」で時価総額を2020年12月-2022年2月の期間で増加した会社を検証したところ、バリュエーションの上昇に起因していることがわかったことから、Tobin’s qが当該期間に上昇した会社の取り組みを検証しました。検証の結果、Tobin’s qの変化には外国人持株比率の上昇と密接な関係があり、Tobin’s qを大きく上昇させた会社は現金同等物と総資産において減少傾向が見られたことから、会社は資産を効果的利用することに動いたことが推測されます。資産を効果的利用にも関連するのですが、これらの会社は成長投資と株主還元のバランスをキャピタル・アロケーションのポリシーの中で明確にし、株主・投資家とのコミュニケーションに取り組みを進めたことが確認されました。ボードプラクティスに関しては、Tobin’s qを大きく上昇させた会社はプライム市場の上場基準が求める独立取締役比率および報酬委員会の独立性確保において顕著な改善を行いました。また、買収防衛策の撤廃をした会社が含まれていたこともTobin’s qを押し上げることに寄与したことも推測されました。これらの結果を踏まえて、そもそもバリュエーションが高い会社にはどのような傾向があるのかに興味が出てきましたので、どのような取り組みをしてきたのかを検証してみたいと思います。

下表は、MetricalTobin’s qの変化とプロファイルおよびKey Performance Indicatorsの変化の間の相関分析を示しています。当該期間において、Tobin’s qの変化は時価総額の変化および外国人持株比率の変化と有意性のある正の相関が示されています。このことから、Tobin’s q(バリュエーション)の変化は時価総額の変化と外国人持株比率と関係が深いことが確認されます。また、Tobin’s qの変化は現金同等物の変化および総資産の変化と有意性のある負の相関が示されています。当該期間において、Tobin’s qを上昇させた会社は現金同等物と総資産を減少させた傾向があったことがわかります。