板垣 隆夫氏:「財務報告に係る内部統制監査基準等の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブコメ)に対する個人意見の提出

こちらの投稿は2023.1.20 板垣 隆夫氏によるものです。

別紙の通り、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(公開草案)」に関する意見募集(パブリック・コメント)に対する個人意見を金融庁に提出しました。
個人のかつかなり過激な意見ですので、意見集約でも全く無視されるかもしれませんが、率直な感想を述べたものです。
岡田譲治元日本監査役協会会長をはじめ内部統制部会のメンバーの半数以上はよく知っている友人・知人なので、あまり厳しい批判はやりたくなかったのですが、ここで何も言わないのはまずいと思い、かなり辛辣なコメントになってしまいました。
なお今回、監査懇話会としてはパブコメ意見の提出は見送りました。

メトリカル:CG 株価パフォーマンス CG Top20 vs. Topix, JPX400(2022年12月末)

12月の株式相場は日銀が金融政策決定会合で金利操作の運用修正を発表したことをきっかけに大幅下落して終了。CG Top20株価は1ヶ月間ではTOPIXおよびJPX400の両株価指数に対して2ヶ月続けてのアンダーパフォーマンス。

12月の株式相場は米国FOMCの金融政策を見守る動きから、月半ばまで方向感を掴めない相場展開。12月20日の日銀が金融政策決定会合で長期金利の変動幅を従来の0.25%から0.5%に拡大したことが伝わると、その日の後場から株式相場は大幅安。その後も反発気配がないまま取引を終えた。金利上昇を好感した銀行株が急上昇する一方で、成長株を中心に下落する株式が目立った。
12月のパフォーマンスは、TOPIXおよびJPX400の両株価指数がそれぞれ-4.79%および-4.87%下落した。CG Top20株価は-5.59%の下落と両インデックスに対してアンダーパフォーマンス。2014年以来の長期間で見ると、CG Top20株価は両インデックスに対し年率2%程度のアウトパフォーマンスを継続。なおCG Top20は7月1日より構成銘柄が見直されました。新たな構成銘柄は下記の表の通り。

メトリカル:海外投資家が必要な書類と会社が英訳する書類にミスマッチがある

東証が2022年8月3日に月末に2022年7月末現在で英文開示実施状況調査を開示しましたので、ご報告したいと思います。

開示資料の冒頭で、東証は次のように述べています。「この度、2022年4月の新市場区分への移行後の状況を明らかにするため、2022年7月時点の調査を行い、調査結果をとりまとめましたので、お知らせいたします。グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場であるプライム市場上場会社においては、英文開示実施率が92.1%(2021年12月末時点85.8%)に達し、新市場区分への移行を機に上場会社における英文開示の取組に一定の進展が見られました。他方で、昨年実施した海外投資家アンケートにおいて7割超が英文開示を必要とした適時開示資料(決算短信除く)や有価証券報告書であっても、プライム市場上場会社の英文開示実施率が半数未満に留まる状況も見られます。新市場区分への移行以後に適用されているコーポレートガバナンス・コードでは、「特に、プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべきである」(補充原則3-1②後段)としており、英文開示の範囲の拡大・内容の充実、開示タイミングの差異の解消に向けて、更なる進展が期待されます。」

上記の東証の調査結果まとめのステートメントに述べられている通り、プライム市場の上場会社の多くは何某かの資料を英訳しています。英文開示をする会社が増えたことは一定の評価ができます。しかし、まだ緒についたばかりというのが事実で、東証も後段で述べている通り、有価証券報告書のような重要な開示資料の英文開示をする会社はとても少ない状況です。有価証券報告書は来年度からは従来の四半期の提出から年次の提出に変更される代わりに、サステナビリティ項目が記載事項に含まれる計画であることから、その重要性が一層増しています。以下にて、東証の調査結果を見てみましょう。

英文開示を実施状況の概要
英文開示を実施している上場会社の割合は全市場では56.0%(前年末比+3.2ポイント)、プライム市場では92.1%(同+6.3ポイント)です。プライム市場以外の上場会社で英文開示を実施している会社は多くありません。昨年改定されたコーポレートガバナンス・コードは補充原則3-1②において、「プライム市場上場会社は、開示書類のうち必要とされる情報について、英語での開示・提供を行うべき」と規定しています。しかし、必要とされる情報として具体的にどの書類を英文で開示するのか示していません。コーポレートガバナンス・コードの補充原則1-2④で「招集通知の英訳を進めるべき」と唯一言及されたのが、招集通知でした。プライム市場の上場会社で招集通知の英訳を実施した会社の割合は76.1%(前年末比+11.9ポイント)と高まりました。英訳の実施率が高かったのが、決算短信の77.1%(同+9.3ポイント)、IR説明会資料の61.1%(同+3.5ポイント)でした。一方で、英訳を実施した会社が少なかった資料は、適時開示(決算短信除く)、コーポレートガバナンス報告書、株主総会招集通知(事業報告)、有価証券報告書で、実施率はそれぞれ38.7%(前年末比+2.3ポイント)、24.5%、(同+2.3ポイント)、22.7%(同+2.1ポイント)、13.3%(同+0.8ポイント)でした。有価証券報告書やコーポレートガバナンス報告書などの重要な資料は大部分の会社で英訳されていないことがわかります。