経産省『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)』を策定

経済産業省は、3月31日『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)』を策定・公表しました。下記の3つのガイドラインで構成されています。

「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)

「経営人材育成ガイドライン」

「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」

以下、一部抜粋:

1.2. CGSガイドラインの方向性

  • 中長期的な企業価値向上に向け、中心的役割を果たすのは社長・CEOら経営陣である点は、どのようなガバナンス形態の会社でも同様である(例えば社外取締役が経営するわけではない)。そのため、社長・CEOら経営陣がこの役割を果たすことができるよう、どのような仕組みを作るのかが、問われることとなる。
  • 第一に、社長・CEOら経営陣が中長期的な企業価値向上を目指して経営を行うためには、経営判断の軸となる戦略が必要である。戦略の立案に当たっては、社外の視点や知見を取り込むべく、取締役会で検討することが有益である。
  • 第二に、優れた社長・CEOら経営陣を選び、適切なインセンティブを与えることで適切なリスクテイクを促し、その成果をチェックしていく仕組みを作ることは全ての企業において必須である。そして、この仕組みの中心は取締役会である。
  • これらの観点から、経営や監督に関する取締役会の機能の強化や、監督機能の中心の一つとなるべき社外取締役の活用、経営陣の指名・報酬の在り方、経営陣のリーダーシップ強化の在り方(相談役・顧問の在り方等)について、本ガイドラインで取り上げることとした。
  • この中には、例えば、企業ごとに閉じた経営人材の選抜の仕組みや、業界他社との横並びを意識した報酬体系のように、我が国企業の伝統的な経営システムと結びついており、一社だけでは変えにくい項目も含まれている。問題を改善するためには、多くの企業で同時に、社外役員の活用や、経営経験者の他社の社外取締役への就任、経営陣の報酬体系の見直しといった取組を進めていくことが必要である。

1.3. CGSガイドラインの意義・対象

  • 平成27年にコーポレートガバナンス・コードが策定され、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則が示された。本ガイドラインは、企業がこうした原則を実践するに当たって考えるべき内容をコーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考えられる具体的な行動を取りまとめたものである。
  • 本ガイドラインでは企業に取組の検討を求める事項を提言しているが、コーポレートガバナンスに関する課題解決のために何をすべきかは企業によって異なり、当該取組の実施を一律に要請するものではない。各社の規模やフェーズ(創設期、成長期、成熟期等)によって、コーポレート・ガバナンス・システムをどのように構築するか、どの程度のスピードで改革するかという点は異なるものと考えられる。本ガイドラインの内容やコーポレートガバナンス・コードで示されている各種原則を踏まえて、各社に適したコーポレート・ガバナンス・システムの在り方を主体的に検討する際に、本ガイドラインで提示した検討事項も考慮して議論されることが望まれる。
  • 本ガイドラインは、上場企業に対するアンケート調査、ヒアリングの結果や、本研究会における上場企業の経営経験者あるいは社外取締役の委員の知見を得て取りまとめたものであるため、本ガイドラインの内容は、基本的には上場企業にとって参考となる事項が多い。もっとも、上場企業の中でも、コーポレートガバナンスの取組の深度や関心に応じて、状況は異なるものと考えられ、また、非上場の大企業であっても、稼ぐ力を高めるために、本ガイドラインの内容は参考になる部分が多いと考えられる。
  • 例えば、コーポレートガバナンスに取り組み始めた企業群の中には、真剣にコーポレートガバナンスに取り組みたいものの、企業内での議論の蓄積がなく、実際に何をすれば有益なのか悩んでいる企業も多い。本ガイドラインは、先進的な上場企業や投資家などの声も反映させながら、有益と考えられる検討事項や取組を紹介しているものであるため、まさにそのような悩みを持つ企業には、本ガイドラインを読んでいただき、これを参考にしながら、自社に最適なコーポレートガバナンスが何か検討を深めることが望まれる。
  • 次に、コーポレートガバナンスにこれまで積極的に取り組んできた先進的な企業群では、本ガイドラインの提言がなくとも既に実践してきた部分やさらに先行して実践している部分が多い。こうした企業群にとっては、本ガイドラインの内容が物足りないと感じる部分もあるかもしれないが、その場合には、各社のこれまでの取組の検証やその独自性を確認したり、これまで取り組んでこなかった事項を再検討したりする際に、本ガイドラインを参照することが望まれる。
  • 最後に、コーポレートガバナンスにこれまであまり関心を持っていない企業群やコーポレートガバナンス改革に着手できていない企業群においては、我が国企業の多くが過去20年間以上にわたり企業価値を伸ばすことができなかった事実と、この間の様々な議論や試行錯誤を経た上で、中長期的な企業価値向上を図るためにはコーポレートガバナンスの改革が必要であるという議論に至っている点について、改めて経営陣が認識した上で、本ガイドラインの内容やコーポレートガバナンス・コードで示されている各種原則を参考にしつつ、実質的な改革に踏み出すことが望まれる。本ガイドラインの提言を形式的に導入したとしても、かえってコストを増加させるだけにとどまる可能性もあるので、改革に踏み出す際には、まず本ガイドラインで記載した検討事項を中心に、取締役会で議論を深め、小さくとも取り組むことのできる事項があれば、そこから順次着手していくことが考えられる。
  • 前述のとおり、社外役員の活用や、経営経験者の他社の社外取締役への就任などは、多くの企業が同時に進めなければ解決できない側面があり、これらについては、これまでコーポレートガバナンスに積極的でなかった企業も含め、多くの企業が検討に着手する必要があると考えられる。
  • 以上のように、各社の置かれた状況に応じ、本ガイドラインの活用の仕方は異なるものと考えられる。決して本ガイドラインの内容を押しつけるものではないが、本ガイドラインが各企業のコーポレートガバナンス改革を後押しするために活用されれば幸いである。
  • また、各企業が自主的に取り組んでいる先進的な事例があれば、他社の参考にもなるよう、それを積極的に外部に情報発信していただければ幸いである。

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