役員研修・ガバナンス関連のブログ - 54ページ目 (165ページ中) - 取締役、役員、投資家など、誰でも投稿できる!

GPIFのスチュワードシップ活動原則、議決権行使原則は「各国のコーポレートガバナンス・コード」について言及

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、6月1日に公表した「スチュワードシップ活動原則」「議決権行使原則」に下記のように各国のコーポレートガバナンス・コードに関する言及があることは注目に値します。

スチュワードシップ活動原則
○運用受託機関は、コーポレート・ガバナンスに関する報告書、統合報告書等に記載の非 財務情報も十分に活用しエンゲージメントを行うこと。
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コード又はそれに準ずるものの各原 則において、企業が「実施しない理由」を説明している項目について、企業の考えを十分 にヒアリングすること。

議決権行使原則
○運用受託機関は、各国のコーポレートガバナンス・コードが企業に対して求めている事 項を踏まえて適切に議決権行使すること。同様のコード又はそれに準ずるものが無い場合 には各運用受託機関が投資先企業に求める水準に従って適切に議決権行使すること。

パナソニックによるパナホーム完全子会社化の対価はなぜ上がったのか?

外国法事務弁護士・米NY州弁護士 スティーブン・ギブンズ(Stephen Givens)

パナソニック・パナホームの完全子会社化取引
従来の買値が言われた通り正しければ、なぜその後20%引き上げたのか?

パナソニックは昨年12月、東京証券取引所1部に株式を上場する住宅事業子会社パナホーム(大阪府豊中市)を株式交換で完全子会社にすると発表した。ところが、今年4月、この株式交換の契約を解約し、代わりに、市場で株式を公開買い付け(TOB)することで完全子会社にすると発表した。これら発表が実現した場合にパナホームの一般株主が受け取る代金はそれぞれ大きく食い違っているが、それに関するパナソニックの説明はおよそ信用できない。これは、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)の遅れを示している。

パナソニックは昨年12月の発表の後、「上場子会社」住宅メーカーのパナホームを完全子会社化するための株式交換提案の妥当性を繰り返し主張してきた。それらパナソニックの説明が本当に正しければ、4月になっての提案変更は必要なかったはずだ。しかし、パナソニックは提案を変更した。それまでパナホームが一般株主に説明した対価の計算と数値のどの部分がなぜ変わったのかを明確に説明することなく、パナソニックは対価を突然およそ20%(180億円相当)引き上げた。パナホームの株主にとっては、昨年暮れの提案より、ましな提案だと言えるが、パナソニックの株主にとってはどうだろうか。

パナソニックの株主は、当然のことながら「なぜ我々の財布から出る180億円分の値上げが本当に必要なのか?」についての説明を求めるだろうが、パナソニックの経営陣はその説明責任を十分果たしていない。パナソニック株主としては、パナホームをできるだけ安く100%子会社にしたい、と考えるのは当たり前だ。パナホームの一般株主は、原案より対価が20%も高くなり悪い気はしないだろうが、その反面、原案の説明が正しくなかったことが明白になり、その変更案を信頼するに足るか疑問を感じざるを得ない。その変更案の信頼性の担保がないからだ。

なぜこのような始末になったのか?

GPIF、「スチュワードシップ活動原則」と「議決権行使原則」を公表

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、6月1日、「スチュワードシップ活動原則」「議決権行使原則」を公表しました。国内株式及び外国株式を運用する運用受託機関に対して議決権行使を含むスチュワードシップ活動の遵守を求め、これを適切にモニタリングし、運用受託機関と積極的に対話(エンゲージメント)を実施するとしています。

GPIFがこうした方針を公表したことは、確かに大きな進展と言えます。ただし、以下に引用した内容などを見ると、他の国の公的年金と比較するとまだまだ曖昧でとても短い方針にとどまっています。どちらかと言えば、投資先企業がコンプライしていない時に「その企業の考えを十分にヒアリングすること」に重点を置いているという印象です。議決権行使方針に関しては、これまでと同様GPIFとしての方針はないため、結果的には運用機関任せとなっています。年金ガバナンスの問題にご興味のある皆様はどの様な印象を受けたでしょうか?

経産省『価値協創ガイダンス』公表

経済産業省は、5月29日、『価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス -ESG・非財務情報と無形資産投資-』(価値協創ガイダンス)を公表しました。企業価値向上に向けて、企業経営者と投資家が対話を行い、経営戦略や非財務情報等の開示やそれらを評価する際の手引となるガイダンス(指針)と位置付けています。(説明資料)

ガイダンスの概要:(以下引用)

2017.07.07 会社役員育成機構(BDTI)の『国際ガバナンス塾』(一日役員研修プログラム)

本研修ではコーポレートガバナンス・コードの提唱者であるニコラス・ベネシュを初め各分野の専門家が、取締役や監査役としての基本的な知識を身につけるためのBDTIの役員研修、「国際ガバナンス塾」を定期的に開催しています。執行役 […]

2017.07.03 会社役員育成機構(BDTI)セミナー:『第三者委員会の設置から企業の信頼回復まで』

不祥事が起き第三者委員会が調査報告書を提出すると、そこで提案される再発防止策には、決まったように取締役会による監督強化と企業風土の改善が挙げられています。これは何も日本企業に限ったことではありません。

これら再発防止策は不祥事の防止・発見に本当に役立つのでしょうか。また、再発防止策は具体的にどのように展開され、取締役会のあり方はどう変わるのでしょうか。さらには、これらを他山の石として、不祥事を未然に防ぐ内部統制の構築することはできないでしょうか。

本セミナーでは、第三者委員会報告書格付け委員会で委員を務める久保利英明氏をお迎えし、数多くの再発防止策を調査したからこそ見えてくる、実効的な内部統制のポイントをお話頂きます。

また、米国で数多くの不祥事調査を担当した Shearman & Sterling 法律事務所のパートナーであるケネス・レブラン氏を迎えし、両国の経験を基に調査・再発防止策の日米における相違・類似点などについてご解説頂きます。

パネルディスカッションでは、同志社大学法科大学院教授のコリン・ジョーンズ氏や、当機構代表理事ニコラス・ベネシュを交え、当機構理事市川佐知子をモデレータとして、再発防止策の重要ポイント、取締役会の役割について議論します。

NHK:「相談役や顧問の業務内容は 東証で情報開示へ」

「企業の「相談役」や「顧問」について、政府は日本企業に特有の制度で経営への関与が不透明だという指摘を踏まえ、来年にも上場企業を対象に相談役らの業務内容などを開示させる、新たな制度を導入する方針を固めました。東京証券取引所が上場企業に提出を義務づけている企業統治に関する報告書の中に、相談役や顧問の業務内容や報酬、それに常勤・非常勤などの情報を記入する項目を新たに設けます。情報の開示は義務づけはしないものの、企業が「非開示」としたことがわかるような仕組みを検討します。…」

http://bit.ly/2rNzVGF

コーポレートガバナンス・コードを提唱した時から、開示を提案しているので、方向的に大賛成です。しかし、上記の記事に書かれているように「情報の開示は義務づけはしないものの、企業が「非開示」としたことがわかるような仕組みを検討します」にすれば、「開示」のインパクトは空洞化されてしまるおそれがあります。一番知りたい企業(つまり、相談役制度を廃止したくない企業)こそがどうなっているかわからないことになります。そもそも、事実上の役員報酬の続きですので、なぜ有価証券報告書で開示が義務づけられていないか、分かりづらいです。

スチュワードシップ・コードと日本企業年金基金

セコム企業年金基金は、2011年3月30日に『国連責任投資原則(国連PRI)』に署名したのに続き、2014年2月28日には金融庁が策定した「責任ある機関投資家の諸原則(日本版スチュワードシップ・コード)」の受け入れを表明しました。現在に至るまでスチュワードシップ・コードを受け入れている唯一の(非金融系)事業法人系年金基金です。

同基金は、株式運用を委託している運用機関に対して、投資先企業に対するエンゲージメント活動への積極的な取り組みを推奨するとともに、活動の一環として行う議決権行使結果を公表しています。

議決権行使結果 (2016-2017年)
https://www.secom.co.jp/corporate/csr/pdf/201705_voting_rights.pdf

(2015-2016年)https://www.secom.co.jp/corporate/csr/pdf/201606_voting_rights.pdf

(出所:https://www.secom.co.jp/corporate/csr/stewardshipcode.html  )

翻って、他の700ぐらいの大企業の確定給付型の企業年金基金は、「わが社は従業員をとても大事にしている」といいながら、なぜスチュワートシップ・コードを受け入れないのでしょうか?

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