神戸製鋼事件を考える(続き)

神戸製鋼は2017年11月10日、経産省にある文書を提出し、公表も行っています。タイトルは「当社グループにおける不適切行為に係る原因究明と再発防止策に関する報告書」。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197967_15541.html

第三者委員会の調査は現在進行中で、本書は中間報告書のような位置付けです。報道によれば、この中間報告書は不十分であると批判が寄せられているとのことです。ここでは内容を整理し、気になるポイントをピックアップしてみたいと思います。

まず起きた事をもう一度確認しておくと、「改ざん」と「ねつ造」です。改ざんは「過去の経験等を踏まえ影響がないと判断する等して」検査結果を書き換えること、ねつ造は「例えば、製品の2箇所を測定すべきところ、1箇所のみ測定し、もう1箇所については、測定せずに想定される規格範囲内の数値を記載」することです。

神戸製鋼事件を考える

神戸製鋼の事件は、日本企業が誇りにしてきた品質管理、社外役員の役割、内部統制の不備、過去の不祥事から得た教訓の活かし方、来るべき訴訟など検討すべきポイントが満載です。しかし、現場で何が起きていたのか、誰がどこまで知っていたのか等は、第三者委員会による調査結果を待つ必要があります。今のうちに、分かっていることを整理しておきたいと思います。

2017年10月8日、神戸製鋼による最初のリリースでは、データ改ざんはアルミ・銅製品にとどまっていました。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197805_15541.html

ところが、その後進んだ社内調査は、驚きの展開を見せました。まず、社内調査の過程で妨害行為があったとのことです。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1197904_15541.html

データ改ざんが確認された製品は鉄粉や鋼線にも広がり、販売先は525社に登っています。
http://www.kobelco.co.jp/releases/1198006_15541.html

ある特定の製品や工場に限った改ざんではないですし、期間も長期間にわたるようです。10月8日の記者会見で副社長が10年以上前から改ざんがあったと認めています。ある新聞報道によれば、40年以上前からだとする従業員もいるようです。このため「組織ぐるみ」を指摘する人も出はじめています。「組織ぐるみ」には明確な定義はなく、トップ経営陣が知っていたかどうかで「組織ぐるみ」を判断する見方があるようです。しかし、不正行為が企業の業務プロセスの中に定着していたなら、経営陣の期待や思込みとは別に、「組織ぐるみ」は成立するような気もします。

10年間改ざんをしなければならないような企業が置かれた状況とは、どのようなものだったのでしょうか。神戸製鋼のROEの推移は、次の通りです。

企業年金連合会、複数の機関投資家との協働エンゲージメント活動開始

企業年金連合会は、11月1日、『スチュワードシップ責任を果たすための方針 』を改訂し、今後の議決権行使結果個別開示と集団的エンゲージメントに関する言及が追記されました。

集団的エンゲージメントに関しては、
「(原則4) 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企 業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
連合会は「アセットオーナー」として、運用受託機関が投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて投資先企業と認識の共有を図るとともに問題の改善 に努めることを求める。連合会は「運用機関」として、上記の低コスト運用のメリットを阻害しない範囲で、外部の専門機関を利用するなどしてコストの低減を図りながら当原則を実施する。また、連合会は、他の機関投資家と協働して投資先企業との建設的な「目的を 持った対話」に取り組む。
として、HPで「一般社団法人機関投資家協働対話フォーラムが主宰する「機関投資家協働対話プログラム」に機関投資家メンバーの一員として参加し、協働エンゲージメント活動を行っています。」としています。

経産省『伊藤レポート2.0』公表

経産省は、10月26日、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)」(通称『伊藤レポート2.0』)を公表しました。2014年に発表した「伊藤レポート」後に生じた動きを総括しつつ、無形資産投資やESG等を巡る論点を深掘りして議論し、今後の政策対応等を検討した成果と位置付け、その内容を以下のように要約しています。

「証券アナリストによるディスクロージャー優良企業選定」(日本証券アナリスト協会)

日本証券アナリスト協会は、2017年度の「ディスクロージャー優良企業選定結果」を公表しました。

「業種別評価基準は、各業種共通項目として
(a) 経営陣のIR姿勢、IR部門の機能、IRの基本スタンス
(b) 説明会、インタビュー、説明資料等における開示
(c) フェア・ディスクロージャー
(d) コーポレート・ガバナンスに関連する情報の開示
(e) 各業種の状況に即した自主的な情報開示
の5つの分野からなっている。各分野の配点(計100点満点)については、ディスクロージャー研究会本会が一定の配点枠を定めているが、本年度、上記(b)(d)(e)の分野について配点枠を変更し、本会の下に設置された業種別の各専門部会がその配転枠内で評価項目と配点を設定した。」

配点枠の変更では、(b)説明会等と(e)自主的情報開示の配点枠が縮小される一方、(d)コーポレート・ガバナンス関連の枠が変更前と比較して拡大しました。