ライブドア社で社外取締役に就任してすぐに、M&Aやファイナンスなど粒度の細かなことを統括する「(諮問)委員会」を取締役会に設置することを提案しました。取締役全員が細部まで監督する必要はないと考えたからです。 しかし、新任の社外取締役間で信頼関係が希薄だったこともあり、誰もがすべての委員会のメンバーになりたがり、それを拒むことはできませんでした。その結果、(皆が参加する)「委員会」は正式な「取締役会」ではないがために、委員会の重要な議論が正式な取締役会議事録に必ずしも反映されなくなってしまったのでした。提案したときにはそんなつもりはなかったのに。
2007年当時の私はまだまだ社外取締役として未熟でした。 取締役会の役割と義務を定めた「規則」を定め、記録保存のルールや手続きについて前もって合意しておかなければ、記録保存はほとんど行われないかもしれないと、そのとき気づいたのです。 あるいは、記録が残されていても、作成者が恣意的に選択した議題や内容が記録されるだけ、ということもありえます。問題を把握した時点では、過去の議論をちゃんと残すようにお願いするには遅すぎました。英語で言うところの”the cat was out of the bag”(取り返しがつかないことがもう起きてしまった )という表現がまさしく当てはまる状況です。私はこのことで、全員が同意する(つまり納得する)議事録を作る必要のない「任意」の委員会を作ることの弊害を学びました。