メトリカル:コーポレートガバナンスはどのくらい改善したか2021年(3)

前の記事「How far has corporate governance progressed in 2021 (1)」および「How far has corporate governance progressed in 2021 (2)」に続いて、上場会社のコーポレートガバナンスを改善する取り組みが2021年にどのくらい進んだかを数値を持って見ていきたいと思います。

前の2つの記事を簡単に要約しておくと、ボードプラクティスに関して、改訂コーポレートガバナンス・コードの中で具体的に改善すべき事項として言及がなかった評価項目、例えば取締役会の議長、女性取締役、買収防衛策に関してはほとんど改善していないか限定的な改善にとどまったことをご報告しました。上場会社が実際にとったキー・アクションに関しては、キャッシュと政策保有株式の効果的な使い方と成長戦略の明確な打ち出し方は今年も課題と思われることをご報告しました。株価およびバリュエーションが上昇する中で、外国人株主比率がやや低下していることを考慮すると、ROEおよびROAが伸び悩んでいることとも関係があると考えることもできることから、成長が期待できるキャッシュや資産の効果的な活用がやはり課題なのかもしれないことを結論としました。

今回の記事では、各会社の時価総額がどのくらい成長したのかという観点で分析します。下表は2020年12月および2021年12月で比較可能なMetricalユニバース1,704社の時価総額の変化を示したものです。2020年12月時点のMetricalユニバース1,704社の時価総額の中央値は385,547百万円で、2020年12月時点のMetricalユニバース1,704社の時価総額の中央値は421,138百万円に増加しました。1年間の増加率は9.23%でした。

下表はMetricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点のROEおよびROAを中央値で示しています。ROEおよびROAはそれぞれ過去3年間の平均値なので、COVID-19パンデミックの影響を大きく受けたFY2020の業績が反映された2020年12月時点のROEおよびROAは前年に比べてやや低下しています。一方で、Tobin’s qは株価の上昇を受けて上昇しています。

下表はMetricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点のMetricalスコアを中央値で示しています。Metricalスコアはコーポレートガバナンスをボードプラクティスとキー・アクションの両面から総合的に評価したスコアです。2020年12月時点のMetricalユニバース1,704社のMetricalスコアの中央値は55.18%で、2020年12月時点のMetricalユニバース1,704社のMetricalスコアの中央値は57.20に改善しました。1年間の改善率は2.02%でした。

上記でMetricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点の時価総額、パフォーマンスとコーポレートガバナンス評価の変化をみてきましたが、次に時価総額の変化がパフォーマンスとコーポレートガバナンス評価の変化とどのような関係性があるかを分析します。下表は時価総額の変化率とTobin’s q、ROE、ROAおよびMetricalスコアのそれぞれの変化率との相関を示しています。また、tdist関数を使ってP値を示して各相関係数の統計的有意性を確認しています。これによると、Metricalユニバース1,704社の2020年12月および2021年12月時点の時価総額の変化率は、Tobin’s q、ROAおよびMetricalスコアのそれぞれの変化率と有意性のある正の相関が確認されました。時価総額の変化率がTobin’s qと相関があることは当然のことと理解できますが、ROEよりもROAと有意性のある正の相関が確認されたことは興味深いです。さらに、時価総額の変化率とMetricalスコアとの間に有意性のある正の相関が確認されたことは今回の分析の労が報われた気持ちがします。

2020年12月および2021年12月期間でコーポレートガバナンス・プラクティスの改善が進んだ会社の時価総額が増加したという相関分析結果から、さらに分析を進めてみます。Metricalスコアの改善度合いに分けて時価総額の増加率を示したものが下表です。下表の興味深い結果が示すとおり、Metricalスコアが10 ppt以上改善した会社が最も時価総額を増加させ、次いで5 ppt以上10 ppt未満、0 ppt以上5 ppt未満の順に時価総額を増加させています。Metricalスコアが改善しなかった会社の時価総額は当該期間で中央値として増加しなかったことがわかります。コーポレートガバナンス・プラクティス(実際の会社のアクションを含む)が改善すると時価総額が上昇するという相関関係が成り立つのであれば、さらにコーポレートガバナンス・プラクティスの改善の弾みにつながることが期待されます。Metricalスコアの有効性の一面が確認されたことにもなり、今後も分析を継続していきたいと思います。

株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
akimatsumoto@metrical.co.jp
http://www.metrical.co.jp/jp-home/

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