女性管理職の数値目標が達成されない日本の現状


日本の生産年齢人口は今後減少の一途を辿り、近い将来、企業は人材不足に直面し、人材の奪い合いが起こることが予想できます。そのため日本の企業では、女性にいかに活躍してもらえるかが人材確保における1つのポイントになります。

しかしながら世界経済フォーラムの2021年「The Global Gender Gap Report 2021」によると、各国における男女格差を測るジェンダーギャップ指数では日本は156か国中120位でした。活躍しづらい社会で、働きたいという意思を持つことは難しく、働くことを諦めてしまう女性が多くなってしまっているのが現状です。女性が活躍できる環境を創っていくことが、企業における今後の人材確保のために必要になります。

女性活躍推法は女性管理職の数値目標の設定とその達成に向けた行動を求めています。最近は女性役員や女性リーダー育成プログラムも多く目にします。大手派遣会社は70万もする合宿を開催しています。研修の多くは「自己理解」、「コミュニケーション力」や「プレゼンス力」がメインです。もちろん自己認識やコミュニケーション力は大事です。でもそれは会社が行うべきではないですか?歴史的には日本企業は男性社員に対してはこのようなスキルを新入社員の時点から内製プログラムおよびOJT (現場でのトレーニング)によって上手に育てられてきました。

逆に日本企業が下手だったのが、具体的な内容の経営・管理手法についての知識をオフサイト研修によって育成することでした。これは男女を問わず言えることですが、特に育成されなかったのは女性でした。

女性の場合には多くの会社自身が長期的なキャリアを視野に育成をしてこなかったため、管理職・幹部・役員候補となる女性が不足しています。

ウェビナー『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』動画

2021年8月2日、『「協働的エンゲージメント」はイギリスでは活発なのに、 なぜ日本では殆どないのか?』と題したウェビナーを開催いたしました。

「車の両輪」と表されるCGCとSCとが実効的に回るよう、機関投資家は必要に応じてエンゲージメントを行うべきである、というのが、日本のガバナンス改革の大黒柱のひとつです。

日本では協働エンゲージメントは法的リスクを伴うと考える機関投資家が多く、活発化していません。 もともとイギリスのCGCとSCをモデルとしたはずの日本で、どうしてこれほど違う状況が生まれたでしょうか。両国のアプローチはどのように違うのでしょうか。どうすれば日本でも協働エンゲージメントできるのでしょうか。本ウェビナーではイギリス及び日本の法律専門家、並びに日本の名門機関投資家エンゲージメントグループ(IICEF)のリーダーを招いて、これらのトピックをご説明いただきました。

メトリカル:なぜスキャンダルが同じ会社で繰り返されるのか?

今年の株主総会では再び東芝が話題をさらいました。ご存知の貴兄も多いと思いますが、「昨年6月の定時株主総会で否決された筆頭株主エフィッシモ・キャピタル・マネージメントの人事提案を巡り、東芝と経済産業省が一体となって一部の株主に不当な圧力をかけた」との外部報告が明らかにされました。このことを発端に定時株主総会の取締役選任議案(会社提案)がその後差し替えられ、株主総会では取締役会議長を務める取締役などの再任が否決される事態になるなど、当社のコーポレートガバナンスおよび取締役会の運営など経営のあり方があらためて問われています。東芝は2015年に発覚した会計スキャンダルを受けて現在では、11名の取締役のうち10名が独立社外取締役とし、指名員会等設置会社に移行するなどガバナンス体制を一新したとみられていましたが、今回再びスキャンダルに見舞われています。また、今年1月には子会社の東芝ITサービスで架空取引の粉飾決算が発覚しています。東芝以外にも過去に日産自動車、三菱自動車などがリコール隠しや検査データ不正などでスキャンダルを繰り返しています。なぜ、スキャンダルが繰り返されるのでしょうか?

スキャンダルを引き起こした企業は多くの場合、独立または社内に調査委員会を設置してスキャンダルの調査をしたあと関係各所に調査結果を報告して今後の改善に生かすよう努めるという一連の行動をとります。なぜ今後の改善に活かされないで、スキャンダルが繰り返されるのでしょうか?この命題に関するリサーチはあまり多くはない(日本以外で何度もスキャンダルを引き起こす会社が少ないからなのか?)のですが、調べてみたところJanis, Irving, Groupthink: Psychological Studies of Policy Decisions and Fiascoes, 2nd edition (Boston: Houghton Mifflin Company, 1982)による「Groupthink」の考え方が参考になリました。「冷静で客観的な判断よりも、集団としてのまとまりや居心地のよさを維持するように行動してしまいがちで、その結果、解決の質が低下し、客観的に見ればおかしな判断や決定がなされてしまう傾向がある」という考え方で、次のような環境下では、Groupthinkに陥りやすいとされています:(1)集団のまとまりが強い、外部から孤立していて、(2)事案を検討する過程での意見のチェックや情報提供がない、(3)強いリーダーや有力者がいて、(4)行き過ぎた統制がなされている、時間がない、手がかりが少ないなど、強いストレス下にある。個の意見よりも集団のまとまりを優先することが多く、同調圧力が強い日本社会では上記の「Groupthink」に陥りがちで、結果として客観的に見ればおかしな判断や決定がなされてしまうことは少なくないと推測します。

メトリカル:7月もCG Top20株価はTopix、JPX400の両インデックスに対してアウトパフォーム。日銀のETF買いプログラム変更が影響か。

7月の株式相場は前月に引き続き手掛かり材料難から下値を切り下げる形で、月末にかけて安く引けた。7月1ヶ月間でのTopixとJPX400の両株価指数は-2.12%、-2.52%とそれぞれ下落した。CGレーティング・スコア上位のCGTop20株価は0.00%とフラットで終わったものの、両インデックスに対して4ヶ月連続アウトパフォーマンス。

下表は昨年のCOVID感染急拡大に伴う株式相場急落から回復に向かう2020年4月から日銀のETF買いプログラム変更がアナウンスされた2021年3月までの期間(a)とそれ以降の2021年4月から2021年7月までの期間(b)のCG Top20株価、TopixおよびJPX400のそれぞれの各リターンを示しています。CG Top20株価は期間(a)では両インデックスに対してアンダーパフォーマンスした一方で、期間(b)ではアウトパフォーマンスしています。COVID感染拡大を発端にした超金融緩和による資産インフレによる効果なのか、それとも日銀ETF買いプログラム変更による影響なのか明確にはわかりませんが、株式相場は一定のファンダメンタルズをより反映する方向に進み始めた所以ではないかと推測します。CG Top20株価のアウトパフォーマンスはよりクオリティの高い株式が評価される相場が始まったと見ることができます。