経営デザインシートの活用方法を考える


内閣府に設置された「知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」が、2018年5月「経営デザインシート」を公表した。この1枚紙のシートの使用目的を私なりに咀嚼すると、こうだ。企業が現在の力を把握し、外部環境を踏まえて将来のあるべき姿を描き、到達に必要な戦略を構築するプロセスのきっかけとなる。このシートは、「経営をデザインする」と題された報告書の付随資料であり、参考資料とともに注目を集めている、と言われている。

報告書

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/torimatome/houkokusho.pdf

参考資料

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/torimatome/sanko.pdf

このシートは、従来経産省が進めてきた知的資産経営の系譜に連なるようで、「知財」との関わりが強い。タスクフォースには弁理士がいるし、シートには知財を書く欄もある。シートの説明会・講演会は既に20回を超えており、巡回特許庁による開催もある。特許庁はベンチャー企業向けの特許早期審査制度を設け、経営デザインシートを作成済みである場合は、これを添付することができるとしている。このシートを添付することの利点は明示されていないが、話が早くなるのであろう。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shinsa/soki/patent-venture-shien.html

しかしこのシートを、特許や著作権など知的財産権業務担当の人だけのもの、と見る必要もないようだ。企業の(知的財産も含めた)強みを把握し、将来も維持するための成長戦略を議論するための下敷きと捉えれば、多くの部門・担当者が共有すべきものとなる。実際に報告書ではそう推奨されている。また、参考資料中にもある通り、このシートは、統合報告書の精神と通じている。統合報告書には、財務情報だけでなく非財務情報が合わせて記載されるが、インタンジブルな「知財」を見える化することもまた、投資家の理解を得る上で重要であるとされている。そして、統合報告書を発行する日本の企業数は2013年では95社にとどまっていたが、2018年10月末時点で410社と報じられている。統合報告書作成準備を進める企業は、さらに多くなると予想される。

https://special.nikkeibp.co.jp/atclh/NBO/18/esg1207/

投資家は簡潔かつ特徴的な統合報告書を求めている。特に、現在の強みと、将来もそれが維持できる仕組みについての情報が重要とされる。

http://www.meti.go.jp/press/2018/01/20190110004/20190110004-1.pdf

簡潔と言えば、1枚紙にまとまる、このシートを上回るものはないだろう。そして、統合報告書の作成過程で最も難しいところは、企業の強み、ビジネスモデルの説明であるとよく言われる。このシートは、それらの自覚・説明に役立つだろう。統合報告書作成準備の一環として、利用する方法もあるかもしれない。

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