10月2日に開催されたBDTIセミナーにて、 “コーポレートガバナンスの分析と展望”と題して講演いたしました。
2017年3月にBDTI、4月にゴールドマン・サックス証券のセミナーで「コーポレートガバナンスの現状と分析」と題して分析の途中経過を発表いたしました。その後6月には多数の3月決算の会社の定時株主総会が開催されましたので、分析のアップデートを今回10月2日に開催されたBDTIセミナーにて改めてご報告いたしました。
セミナーでは、3月末の分析のおさらいと株主総会を挟んで8月末にどのようにコーポレートガバナンスが変化したのか比較分析し、今回も取締役会のプラクティスに加えて実際の企業の行動が価値創造のパフォーマンスとどのようにリンクしているかについて統計的分析を通して探っています。
3月の結果は取締役会の運営や基本方針を表す「ボードプラクティス」はROA・ROEなどの収益性や株価評価を示すトービンのQとの有意性のある正の相関は見出せませんでした。一方で、政策保有株が少ない、株式発行が少ない、株式消却が多い、成長戦略がしっかりしているなどのアクションのクライテリアと有意性のある正の相関が確認できました。また、独立取締役の取締役総数に占める比率は有意性のある正の相関は確認できませんでしたが、当比率を5%刻みでパフォーマンスを分析すると、当比率が50%を超える会社のパフォーマンスが顕著に高いことがわかりました。8月の結果においてもこれらの統計的な結果は同様でした。3月と8月のCGクライテリアごとに比較したところ、心強いことに当比率が50%を超える会社はCGプラクティスはさらに改善を続けていルことがわかりました。3月の分析結果では収益性の優れた会社はその自信からコーポレートガバナンスに取り組んだだけなのか、との見方がありましたが、その様な会社はCGプラクティスも改善を継続して優れたパフォーマンスを維持していたのです。我が国のコーポレートガバナンスの問題の一つは、この様な会社が極めて限られていることです。8月でもユニバース(Topix+JPX400)の506社中26社だけが過半数の独立取締役よって取締役会が運営されています。3月から26社と増えていないのです。
最後にわが国のコーポレートガバナンスの課題と今後の展望についてお示ししています。上述の結果から、パフォーマンスと統計的正の相関がある政策株式保有の削減などの”アクション”をなぜすぐに手を打つことができないのか?独立取締役が過半数超へともっと増えていくと、コーポレートガバナンスにポジティブな効果があると推論できる分析の結果も得られています。しかし、現状を見る限りその道のりはまだまだ遠いと言わざるを得ません。今後の課題は、当比率が50%超に上昇を加速することと、50%未満であっても取締役会が有効に機能していくために、その機能をもっと強化していく必要があると思われます。
講演資料はこちらよりダウンロードしていただけます。
http://www.metrical.co.jp/mwbhpwp/wp-content/uploads/BDTI-Seminar-2017-10-02_Final.pdf
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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
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