指名委員会等設置会社である日東紡は、2月24日、同社の相談役および特別顧問制度を廃止を発表しました。
月: 2017年2月
第2回「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」
磯山友幸氏「安倍内閣が最も日本的な「あの人事慣行」にメス ー社長は退任したらさっさと去るべしー」
経済ジャーナリストの磯山友幸氏が現代ビジネスに寄稿した記事です。
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社長よりも強い人がいるのはなぜ?
政府の成長戦略を作る「未来投資会議」が、コーポレートガバナンスの強化策として、社長OBが相談役や顧問として企業に残る慣行の見直しに乗り出した。
1月27日に首相官邸で開いた第4回未来投資会議での議論を受けて、安倍晋三首相自身が「本日の問題提起を踏まえて、不透明な、退任した経営トップの影響を払拭し、取締役会の監督機能を強化することにより、果断な経営判断が行われるようにしていきます」と述べ、今後、具体的に対応していくことを明言した。
最も日本的とされる人事慣行のひとつにメスが入ることになる。
第2次安倍内閣が取り組んできたコーポレートガバナンス改革では、取締役会の権限強化や独立性強化に力点が置かれてきた。
ところが、日本企業にはガバナンス上、大きな問題があるケースが少なくなかった。社長よりも絶対的な権限を握っている人物がしばしば社内にいることだ。
社長や会長を退任して肩書上は「顧問」や「相談役」になっていても、実質的に権力を握り続けている例が多くあり、日本的な人事慣行といっても良いほどになっている。
いくら独立した取締役会で議論しても、実力「顧問」の鶴の一声ですべてが変わってしまうのであれば、コーポレートガバナンスの強化は絵に描いた餅になる。
パナソニックによるパナホームの買収 「会社非公開化」取引において少数株主は脆弱である
パナソニックによるパナホームの買収
「会社非公開化」取引において少数株主は脆弱である
Seth Fischer / セス・フィッシャー
Oasis Management Company Ltd. /
オアシス・マネージメント・カンパニー リミテッド
当社は日本の上場企業の幅広いポートフォリオに投資するファンドを勧めている。私は、日本のコーポレート・ガバナンスをグローバルスタンダード並みに向上させるという安倍政権の取り組みに励まされた。しかし、私も投資をしている係争中の住宅販売会社パナホームの支配株主である電子工業大手パナソニッックによる買収を見ると、日本にはまだ非公開化取引の不均整なリスクに対応する安全装置が確立されていないことがわかる。
米国および欧州のコーポレート・ガバナンス原則では、「会社非公開化」取引(すなわち、支配株主または現経営陣が上場企業の株式をすべて買い取ること)は特に慎重に扱われている。会社非公開化は当該会社の株主にとって異常に高いリスクを課すため、特別な配慮を要するものとされている。取得側には、大きな相反があるだけでなく、非継続株主に不利となるように会社の価値や価格を操作するのに絶好の立場にあるからだ。
パナホームの株主が米国であれば受けられる保護と、パナホームの株主が実際に受けている待遇を比較してみたい。
大企業「相談役」「顧問」は老害か 年収は2000~3000万。専用車、個室、秘書の「三点セット」も – 「文藝春秋」編集部
文藝春秋3月号で『64社徹底調査――その役割と待遇は? 大企業「相談役・顧問」リスト 大西康之&本誌取材班』と題する記事が掲載され、文春オンラインで紹介されています。
2017.05.18 会社役員育成機構(BDTI)の『国際ガバナンス塾』(一日役員研修プログラム)
本研修ではコーポレートガバナンス・コードの提唱者であるニコラス・ベネシュを初め各分野の専門家が、取締役や監査役としての基本的な知識を身につけるための研修「国際ガバナンス塾」を定期的に開催しています。執行役・部長など役員を支える立場の方々にとっても、この知識は不可欠なものです。実例を参考にしたディスカッション形式を取り入れた活気ある研修を行い、ベストプラクティスを導くためのヒントを豊富にお伝えします!
日経ビジネス『企業は「相談役・顧問」を見直すべき』ISS石田氏インタビュー
日経ビジネス・オンラインは、2月8日、議決権行使助言会社ISSのエクゼクティブ・ディレクター石田猛行氏インタビュー記事を掲載しました。石田氏は、今年度の議決権行使アドバイスのポイントとして、「今年は新たに相談役・顧問制度を規定しようとする定款変更について、「反対」を推奨するというポリシーを入れました。」と解説しています。
「経済産業省のアンケート調査にもあるように、上場企業の約6割で相談役・顧問が存在しているという実態があります。その企業の経営に大きな影響を与える存在でありながら、多くの場合、取締役でないために株主総会で選任されるわけではありません。
株主に対する受託者責任を追うこともなく、訴訟の対象にもなりにくい。アカウンタビリティーなしにその会社の経営に少なからぬ影響力を行使することが、一番の問題だと考えています。」
ISSの日本向け議決権行使助言基準で「相談役」制度を「原則として反対」
議決権行使助言会社ISSは2017年の(新しい)日本向け議決権行使助言基準を発表しました。その一部は、
「相談役27制度の新設 下記に該当する場合を除き、原則として反対を推奨する。 › 取締役の役職として提案される場合」
27 「相談役」に限らず、活動の実態が見えにくい名誉職的なポストが本ポリシーの対象である。例えば、顧問、名誉会長、ファ ウンダーなど。}
https://www.issgovernance.com/file/policy/2017-japan-voting-guidelines-japanese.pdf
第1回「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」
1月31日、スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会が開催されました。
本検討会は、実効性のある企業と機関投資家の建設的な対話について議論した金融庁・東京証券取引所の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」において、昨年11 月30 日公表された「機関投資家による実効的なスチュワードシップ活動のあり方」と題する同会議の意見書にて、スチュワードシップ・コードの改訂が提言され、これを踏まえてスチュワードシップ・コードを改訂することを目的として開催されました。現行のスチュワードシップ・コードで、3年の改訂検討期間が示されており、この期日を2月26日に迎えるため、比較的短期間に具体的な改訂内容が議論されると見込まれています。
第1回検討会ではICGNのKerrie Waring氏が英国、欧州の現状を紹介するとともに、機関投資家の共同エンゲージメント(対話)体制の必要性、議決権行使結果の個別開示(一般公表)等についての賛否両論の意見交換がなされました。
ご参考までに:
機関投資家による実効的なスチュワードシップ活動のあり方
~企業の持続的な成長に向けた「建設的な対話」の充実のために~
「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」 意見書(3)
(平成 28 年 11 月 30 日)
クラスアクション ドイツの場合
BDTIのアドバイザーであるハラルド・バウム教授から、ドイツのクラスアクション法とも言える法律の解りやすい解説が以下に投稿されました。過日、日米のクラスアクション制度をテーマにセミナーが開催されましたが、バウム教授の寄稿によって3カ国の制度を比較することを可能になりました。ドイツの制度は、フォルクスワーゲン株を購入した世界中の投資家が、窒素酸化物排出データ捏造により損失を被ったとして次々と訴訟を起こし、2016年一躍有名になりました。その訴訟の複雑な多層構造は日本の消費者裁判手続特例法をしのぎ、モデルとなる事件を設定して、共通する争点について高裁が判断を下すという、とてもユニークなものです。
ドイツにおける証券詐欺モデル事件法
-US版クラスアクションに替わる新制度?-
ハラルド・バウム *
I. モデル事件法の概要
II. モデル事件法の基本的な手続
III. 短所
IV. 欧州的視点
2001年、ドイツテレコム投資家約2500人が弁護士約700人を使って会社を提訴した。ファンド運営の失敗で暴落した株価により損害を被った個人投資家が、虚偽記載の責任者を相手取ったこの事件は、裁判所の処理能力を明らかに超えていた。
これを受けて2005年、立法府は「証券詐欺モデル事件法」と呼ばれる特別法を制定した。最初は2012年までの時限立法とされ、その後の延長で2020年までの期限がついている。