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今回の東証の検討案はあくまでも独立役員(ないし社外役員)に対する利益相反などの情報開示などを強化するにとどまり、本来会社法が求めている取締役の役割(執行部門に対する牽制と、株主などステークホルダーに対する責任、企業価値減損へのリスク回避の検討)には触れられていない。
2012年3月27日付朝日新聞(金融情報欄、経済気象台、猿氏のコラム)の記事にあるとおり、NYSEでは上場企業の社内、社外を問わず取締役に対する役員研修の方針、実績状況を開示させることで、通常の業務執行とは全く違った取締役としての役割に対する実務的な認識を高めている。これは現行の日本の会社法が期待しているところと全く同じである。
海外に比して社内からの登用が圧倒的に多い日本企業の取締役の役割を、それまで役員の経験も法的、実務的理解に一般的に乏しい人材に対しては、欧米以上に教育、研修が必要と思われる。唯一この種の研修を行っているのは日本監査役協会であるが、監査役取締役会において執行部門を牽制する役割があるとはいえ、代表取締役に対する取締役会のような日常的活動とは言い難いし、そもそも監査役そのものが取締役からの『あがり』の役割程度と広く認識されている現状においては、十分な機能を果たしているとはいえない。
監査役協会における教育、研修活動に互するような上場企業の取締役に対する継続的な機会を与え続けることにより、取締役の機能を果たせるものと考える。
(株) アドバンテスト 常勤監査役
森田 祐理
(当意見はあくまでも本人個人の意見であり、会社とは関係ありません。)