ニッセイ基礎研究所:「日本企業はESGをどう認識しているか?-海外事業展開を背景に、ESGの促進要因を探る」

「■要約
(1)エポックメイキングとなったGPIFの国連責任投資原則への署名

先進国のなかで日本が最も遅れていたESG投資が、大きく変わろうとしている。世界最大の運用資金140兆円をもつGPIFが、今年9月に『国連責任投資原則』に署名したからである。
 これは、資金運用においてESGの視点を反映させることを表明したもので、GPIFから年金運用を受託する機関も、その趣旨に賛同するかどうかが問われることになる。

(2)日本企業は海外事業展開におけるESG課題をどのように考えているのか?

QUICK ESG:  「東証「改正規程」に基づき報告書を開示した上場会社」

QUICK ESG によると、今まで東京証券取引所にコーポレートガバナンス報告書を提出した98社の企業の中、何と61社は「full comply」らしいです。これは、「エクスプレーン」をする必要がある項目がない」と各社が自己判断をして、従って「当社は、コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施しております」という各社の自己発言の基づく数字のようだ。

公的年金GPIFは「ESG」を重視して国連の投資原則に署名したが、日本のコーポレートガバナンス・コードを無視している、、、(?)

これはとてもいいことで、応援しますが!、、しかし、GPIFの投資原則又はその「ご説明」その他の発表された方針には、日本のコーポレートガバナンス・コードの実践を求めるとか、推奨するなどどこにも書いてありません。「コーポレートガバナンス・コード」の言葉自体もありません。コーポレートガバナンスについては、これしか書いてありません:

「また、株主議決権の行使については、株式運用は運用受託機関で行っていることなどから運用受託機関の判断に委ねますが、その委託に際し、コーポレートガバナンスの重要性を認識し、議決権行使の目的が長期的な株主利益の最大化を目指すものであることを示すとともに、運用受託機関における議決権行使の方針や行使状況等について報告を求めます。」

山口利昭弁護士ブログ: 経産省の企業統治解釈指針は攻めるため?守るため?

東芝の不適切会計問題を受けてコーポレート・ガバナンス向上に対して期待する「攻め」と「守り」のバランスに対する世論の論調が微妙に変化している事への懸念を山口弁護士がコメントしています。

「経団連の夏季セミナーでは、メーカーの社長さんから(東芝事件を受けて)「これでは社内の数値目標を強調することがむずかしくなってしまう」との声が出たと報じられており(こちらのニュース)、企業の攻めの姿勢に東芝ショックがどれほどの影響を及ぼすのか、その波及が懸念されます。」

About Money: 航空業界の未来 by キャリー・クロジンスキー (黒田一賢 抄訳)

航空機数は今後20年でアジアを中心に倍増するとみられている。

この事実は持続可能性とどのように関係があるだろうか。例えば国連グローバル・コンパクト向けに行なったボーイングのケーススタディを取り上げてみよう。過去5年でS&P500が108%上昇した一方で、ボーイングは134%上昇した。背景には業務効率化による財務面の改善がある。

10年前には航空機購入の決め手はスピードだった。しかし現在は燃費効率であり、燃料から発生する温室効果ガスと費用の最小化である。航空業界の燃料コストは2013年に2,140億ドルと推定され、10年前の500億ドル以下から大幅に増大した。

About Money: 電力業界の未来 by キャリー・クロジンスキー (黒田一賢 抄訳)

業界分析第2弾は同じく急激な変化を求められている電力業界である。

(黒田一賢が自動車業界のコメントを日本語訳し、LinkedInその他に掲載してくれたことに感謝する。)

電力業界と自動車業界は深く結びついている。電気自動車が環境にやさしいと呼ばれるには燃料たる電力もそうでなければならないためだ。

テスラが電気自動車を設計・製造し、意識の高い消費者は好んで購入する。しかし石炭発電の電力により走っているのであれば、電気自動車は通常のガソリン車より環境に悪影響を及ぼすだろう。

カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によると、車の製造から廃棄までのライフサイクル分析で電気自動車はエネルギー消費でガソリン車の約60%で済むと結論付けている。すなわち再生可能エネルギー利用でさらに節約が可能になる。