東証は、8月2日、経済産業省の『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)』、政府の『未来投資戦略2017』 における、社長・CEO経験者で相談役・顧問に就任している者の人数、役割、処遇等について外部に情報発信についての提言を受け、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」記載要領の一部を改訂したことを発表しました。下記項目が追加されました。
(8)代表取締役社長等を退任 した者の状況
・ 代表取締役社長等を退任した者の会社との関係について説明する場合は、作成画 面において「記載する」を選択し、その内容を記載してください。
(例)代表取締役社長等であった者が、取締役など会社法上の役員の地位を退いた 後、引き続き、相談役や顧問など何らかの役職に就任している、又は何らか会社 と関係する地位にある場合には、それぞれの者ごとに氏名や役職・地位、業務内 容、勤務形態・条件(常勤・非常勤、報酬有無等)及び代表取締役社長等の退任 日、相談役・顧問等としての任期を記載するとともに、その合計人数を記載する ことが考えられます。また、「その他の事項」の欄には、
・ 相談役・顧問などの存廃に係る状況(「すでに廃止済み」、「制度はあるが現 在は対象者がいない」など)
・ 相談役・顧問等に関する社内規程の制定改廃や任命に際しての、取締役会 や指名・報酬委員会の関与の有無
・ 相談役・顧問等の報酬総額 などについて記載することが考えられます。
※ 元代表取締役社長等には、元代表取締役社長の他、元CEO(最高経営責任者) や元代表執行役社長を含みます。
※ 業務内容については、社内で経営に関わっている場合には、その内容についても 記載することが考えられます。また、社内における業務内容を記載する他、社外の 活動(公職等)に会社を代表して参加している場合には、その内容も記載すること が考えられます。具体的な業務内容や会社を代表しての活動が無く、単に役職名の 肩書きの使用を許諾しているのみの者については、氏名、役職・地位、社長等退任日、任期の欄のみ記載した上で、「業務内容」や「勤務形態・条件」の欄に、業務 内容や勤務実態が無い旨の説明を記載することが考えられます。
※ 報酬については、給与、顧問料など費目の名称を問いません。
※ 任期については、任期の定めが無い場合には、その旨、記載することが考えられ ます。
進歩ではあるが、開示としては骨抜き。
項目が多いが、「いずれの項目も開示は企業の判断に任されている」し、「開示の対象も社長や最高経営責任者(CEO)など経営トップの経験者に限定」など。 「開示」は任される?
2014年にガバナンスコードを提唱した時、そしてFSAにその内容について詳しくアドバイスを提供した時に、「相談役・顧問についての開示」を求めた。https://bdti.or.jp/2016/04/02/cgcbirthnext/ 事実上の役員報酬の延長だから、開示は当たり前です。役割を果たしている相談役などなら、堂々とその内容を開示すればいいと思う。
今後、「任せられて、どれほど詳しく開示しているか?」は企業のCG風土評価に一つの重要な基準になるでしょう。
ご参照:
東証が新制度 上場企業、相談役・顧問の役割開示:(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGD02H7P_S7A800C1MM8000/
記事から:
「具体的には、全上場企業が提出を義務付けられている「コーポレート・ガバナンス(企業統治)に関する報告書」に記載欄を新設。東証や企業のホームページで公開する。項目は相談役・顧問の氏名や業務内容に加え、常勤・非常勤といった勤務形態、報酬など幅広い。報酬は有無を明らかにしたうえで、さらに総額や個人別の支給額を記述できるようにする。
いずれの項目も開示は企業の判断に任されている。開示の対象も社長や最高経営責任者(CEO)など経営トップの経験者に限定した。副社長や子会社トップらは対象から外れる。非開示でも罰則などはないが、企業は投資家などから改めて開示しない理由の説明を求められそうだ。」
ニコラス ベネシュ