この1年間でコーポレートガバナンスが改善した会社はどんな会社だったのかを検証したいと思います。2022年12月末と2023年12月末で比較可能なMetricalユニバース1,755社のコーポレートガバナンスの総合スコアであるMetrical CGスコアが上昇した会社の特徴を分析しました。下表はMetrical CGスコアの変化値を5つのグループに分けてその平均値を示したものです。
1,755社全体ではMetrical CGスコアは過去1年間で平均値で1.62ポイント上昇しました。Metrical CGスコアの変化値の5つのグループのうち、Metrical CGスコアが2.5ポイント以上上昇したグループとそれ以下のグループでコーポレートガバナンス・プラクティスの改善に差があることがわかります。Metrical CGスコアが2.5ポイント以上上昇したグループはMetricalユニバース全体の37.4%ですから、3分の2程度の会社は過去1年間でコーポレートガバナンス・プラクティスの改善が乏しかったと言うことができます。Metrical CGスコアが2.5ポイント以上上昇したグループは各評価項目で概ね高い変化値になっています。
Metrical CGスコアが5ポイント以上上昇したグループでは% Independent Directors、% Woman Board Members、Policyshare Holding Score、Growth Policy Scoreにおいて目立って優れた値を示しています。コーポレートガバナンス・プラクティス改善の姿勢を測る上で試金石となる% Woman Board Membersで改善していることは今後の継続的な改善を期待させます。
一方で、Dividend Policy Scoreは各グループともに変化がないことから、大半の会社が配当性向の水準を切り上げる余地があることを示しています。一方で、Treasury Shares Retirement ScoreはMetrical CGスコアが低下した会社でも自己株式消却していること示されています。自己株式消却およびその前段階の自己株式買い戻しは上場会社に相当に浸透したことがわかります。Metrical CGスコアが2.5ポイント以下の上昇および低下のグループは、Metrical CGスコアが2.5ポイント以上上昇したグループに比べて、Cash Holding Scoreの改善が遅れています。これらの会社は自己株式買い戻し、配当政策と合わせてキャッシュの使い方に課題があることがわかります。そのことはGrowth Policy Scoreにも反映しています。
下表はMetrical CGスコアの変化値の5つのグループの価値創造指標の変化値(中央値)とプロファイルを示しています。Metrical CGスコアが上昇したグループでは、ROEとROAが上昇しています。これらの会社は元々のTobin’s Qが高いこともあってTobin’s Qの上昇は目立つほどではありませんが、ROEおよびROAの上昇を背景に外国人持ち株比率はわずかながら上昇しています。
下表は2023年にMetrical CGスコアを上昇させた主な会社です。
以上をまとめると、2023年の1年間でコーポレートガバナンス・プラクティスを改善したのはどんな会社なのかについて考えてみました。
2023年には、コーポレート・ガバナンス・コードが改訂されなかったこともあり、Metrical CGスコアは、メトリカル・ユニバースに属する1,755社全体で+1.62ポイント(平均)と小幅に上昇した。Metricalユニバース全体の約3分の2の企業は、過去1年間でコーポレート・ガバナンスの実践にほとんど改善がみられなかった。
Metrical CGスコアが5ポイント以上上昇したグループ(全体の19.8%)は% Independent Directors、% Woman Board Members、Policyshare Holding Score、Growth Policy Scoreにおいて目立って優れた値を示しています。コーポレートガバナンス・プラクティス改善の姿勢を測る上で試金石となる% Woman Board Membersで改善していることは今後の継続的な改善を期待させます。
Dividend Policy Scoreは各グループともに変化がないことから、大半の会社が配当性向の水準を切り上げる余地があることを示しています。とりわけ、Metrical CGスコアが2.5ポイント以下の上昇および低下したグループは、自己株式買い戻し、配当政策と合わせてキャッシュの使い方に課題があります
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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦
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