独立取締比率が上昇しています。9月末Metricalユニバース1,781社のうち独立取締役が過半数を占める(独立取締役比率50%超)会社は280社まで増加してきました。独立取締役が過半数を占める会社の特徴を中心に検証してみたいと思います。
下チャートはMetricalユニバースにおける独立取締役が過半数を占める(独立取締役比率50%超)会社数の推移を示しています。Metricalユニバースは1,800社弱なので、独立取締役が過半数を占める(独立取締役比率50%超)会社はユニバースに占める割合は2023年9月末現在でようやく15.7%に上昇したところですから、過半の会社の取締役会で独立取締役が過半数を占めるにはまだ相当の時間がかかりそうです。しかし、少しずつその会社数は増加しています。
下表はMetricalユニバース(2023年9月末現在)の独立取締役比率ごとの特徴を示したものです。独立取締役比率50%超の会社のグループは時価総額、外国人株主比率、女性役員比率、ROE、ROA、Tobin’s Q、Metrical Score(コ―ポレートガバナンス総合評価)において極めて特徴的です。それと対極の特徴を示すのが独立取締役比率20%以下の会社のグループです。独立取締役比率50%超の会社のグループは時価総額、外国人株主比率、女性役員比率、ROE、ROA、Tobin’s Q、Metrical Scoreのいずれにおいても優れた数値を示しています。このグループはROE、ROA、Tobin’s Qが高いことがわかります。これらの会社の独立取締役比率を引き上げるドライバとなっているのは外国人株主比率であるとの仮説を立てることができます。なぜならば、これらの会社、海外投資家が投資対象とする時価総額が大きいことがそれを証明しているからです。また、これらの会社はROE、ROAおよびTobin’s Qが示す通り、他のグループに比べて高い収益性と高い株価評価を示しています。また、女性役員比率が高く、Metrical Scoreが高いことから、高い外国人持株比率を背景に海外投資家からのコ―ポレートガバナンス・プラクティスの改善要求に対して、徐々に改善の取り組みを進めてきたと考えることができます。
独立取締役比率で4つのグループに分けると、独立取締役比率が高いグループほど時価総額、外国人株主比率、女性役員比率の各項目において概ね優れた数値を示しています。海外投資家の改善要求が背景にあるにしても、会社が収益性および独立取締役を過半数にするなどのコ―ポレートガバナンス・プラクティスにおいて改善の取り組みを示すのであれば良いことです。Tobin’s Qにおいても、独立取締役比率50%超のグループだけは他のグループと比べて明らかに高い値を示しています。このグループは外国人持株比率が高いことが高い株価評価につながっているとは推察されますが、P/B1倍割れの低い株価評価に悩んでいる会社にとっては一つの道筋を示しているのかもしれません。
まだ独立取締役比率50%超の会社はMetricalユニバースの中で15.7%の会社しか存在しません。独立取締役比率が高くなって、収益性、株価評価、コーポレートガバナンス・プラクティスにおいて少なくとも負の影響があるとは思われません。よって、独立取締役比率が50%超の会社がさらに多くなることが、収益性、株価評価、コーポレートガバナンス・プラクティスにおいてポジティブな影響をもたらすと期待されます。
以上をまとめると、9月末Metricalユニバース1,781社の独立取締役比率を軸にして考えてみました。
独立取締役が過半数を占める(独立取締役比率50%超)会社数は徐々に増加しています。2023年9月末現在でMetricalユニバースの中でその比率はようやく15.7%に上昇したところですから、まだ大半の会社の取締役会で独立取締役が過半数を占めるにはまだ相当の時間がかかりそうです。
独立取締役比率ごとに、時価総額、外国人株主比率、女性役員比率、ROE、ROA、Tobin’s Q、Metrical Score(コ―ポレートガバナンス総合評価)特徴を検証すると、独立取締役比率50%超の会社のグループはいずれの項目においても極めて優れた値を示しています。これらの会社の独立取締役比率を引き上げるドライバとなっているのは外国人株主比率で考えることができます。これらの会社は海外投資家からのコ―ポレートガバナンス・プラクティスの改善要求に対して、徐々に改善の取り組みを進めてきたと考えることができます。Tobin’s Qにおいても、独立取締役比率50%超のグループだけは他のグループと比べて明らかに高い値を示していますから、P/B1倍割れの低い株価評価に悩んでいる会社にとっては一つの道筋を示しているのかもしれません。
海外投資家の存在感は今でも高い状況に変化ないことから、今後も収益性、株価評価および独立取締役比率などコーポレートガバナンス・プラクティスの改善が継続することが期待されます。
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松本 昭彦
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