政治のリーダーシップが期待できない中、高等教育の男女格差の解決がカギ

世界経済フォーラム(WEF)が6月21日に「ジェンダーギャップリポート」を公表しました。ジェンダーギャップ指数における日本のランキングについて、考えてみたいと思います。

ジェンダーギャップ指数における日本のランキングは次のようになっています。
G7では、前年の10位から順位を4つ上げたドイツがトップの6位。以下英国(15位)、カナダ(30位)、フランス(40位)、米国(43位)、イタリア(79位)と続き、100位圏にすら入れなかったのは日本だけで、前年の116位から九つも順位を落とし、過去最低を記録しました。議員や閣僚級ポストに占める女性の比率が低く、政治分野は138位と最下位グループ。労働参加率や賃金の男女格差などを反映し、経済分野も123位だった。教育分野でも、女性の高等教育の就学率の低下で47位にランクダウンしました。

男女平等でなく「男女共同参画」を推進する内閣府男女共同参画局は例年ジェンダーギャップ指数に関する記載をウェブサイトに掲載していますが、ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位を125位/146か国 (2023.6.21発表)は掲載していますが、各分野の順位についてはまだアップデートされていません。

論点1:「ジェンダー・ギャップ指数の日本の順位は125位/146か国 で、昨年の116位から九つも順位を落とし、過去最低を記録しました。」
ジェンダー・ギャップ指数のランキングは相対的な順位なので、他の国々のジェンダーギャップが改善するスピードよりも劣る国の順位は低くなってしまうには自然なことです。分野別で見ると、「教育」(99.7%)と「医療へのアクセス」(97.3%)に対して、「政治」と「経済」の分野でランキングがとても低い位置から一向に改善していないことが主因です。

論点2:「政治分野は138位と最下位グループ。」
政治分野に関しては、国会議員(衆院議員)の男女比は 0.111(131位)、閣僚の男女比 は0.091(128位)でした。立法府である国会議員の男女比が多い変わらない限り、クオータ制の導入は期待できないと思われます。既得権益を有している現職の男性議員を女性の新人候補者に差し替えることは容易でないと思われます。また、選挙は約3年ごとに実施されるため、女性議員に入れ替える機会は多くありません。閣僚に関しても女性閣僚はお約束通りの2名であることが多く、取締役会の男女比そのものです。

論点3:「経済分野も123位だった。」
経済分野に関しても、管理的職業従事者の男女比は 0.148(133位)と一向に改善していません。本年度より上場会社に対して有価証券報告書に女性管理職比率や男女賃金格差を記載することになりました(昨年から300名以上の労働者を雇用する会社は厚生労働省に開示しています)が、女性管理職比率は約10%、男女賃金格差は70-80%程度の会社が多いように思われます。政府は2020年までに女性管理職を3割としていた従来の目標を達成できず、達成時期を2030年までの「可能な限り早期」に先送りした経緯があります。あと7年間で目標を達成できるのか心配ですが、このようなスローペースでは順位が上昇する速度も限定的と思われます。

論点4:「教育分野でも、女性の高等教育の就学率の低下で47位にランクダウンしました。」
前年は100%で1位だった教育は、高等教育(大学・大学院)就学率が加わったため、順位を47位に落としました。高等教育の男女格差はとても注目すべきポイントです。高等教育の男女格差が女性管理職や男女賃金格差を生む背景にあります。政治分野への女性の進出にも影響があると思われます。この根本にある課題の解決のためには、男性が女性の高等教育就学に対する理解を深めるとともに、教育の機会を等しく提供するために行政が奨学金制度を充実させることも必要です。

以上をまとめると、6月21日に世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数における日本のランキングについて考えてきました。

ジェンダー・ギャップ指数のランキングは相対的な順位を示すので、日本は依然として「政治」と「経済」の分野で回にとどまったままで、他の国々のジェンダーギャップの改善スピードが早ければ日本のランキングは低下します。

政治分野に関しては、国会議員の男女比は 0.111(131位)、閣僚の男女比 は0.091(128位)でした。立法府である国会議員の男女比が多い変わらない限り、クオータ制の導入は期待できないと思われます。既得権益を有している現職の男性議員を女性の新人候補者に差し替えることは容易でなく、選挙は約3年ごとに実施されるため女性議員に入れ替える機会は多くないことから、この分野でのジェンダーギャップの解消は簡単ではありません。

経済分野に関しても、管理的職業従事者の男女比は 0.148(133位)と依然として下位に沈んだままです。女性管理職比率や男女賃金格差の情報開示が始まりました。男女賃金格差は女性管理職が少ないことに依拠しますが、女性管理職比率30%の目標達成時期を2030年までとする政府目標に加速感はありません。

男女間で高等教育の就学率に差があります。高等教育の男女格差が女性管理職や男女賃金格差に影響を与えています。この根本問題を解決することが重要です。男性が女性の高等教育就学に対する理解を深めることはもちろんですが、政治分野で急速な変化を期待できない中で、行政が教育の機会を等しく提供するための奨学金制度を充実させることも1つの方法です。
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http://www.metrical.co.jp/jp-cg-ranking-top100

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株式会社メトリカル
エグゼクティブ・ディレクター
松本 昭彦

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